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異世界に召喚された俺たちですが、どうやら仲間を殺さないと帰れないようです   作者: 高野
【第1章】生き残るために

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【6話】想定外の出来事

俺と林は、トータム王国を目指して歩き続けた。


森を抜けてから、さらに約二時間。


「やっと着いた……」


林は息を切らしながら、目の前にそびえ立つ城壁を見上げた。


長かった……。


この世界に転移してから、いったいどれほど歩き回っただろうか。魔物と戦い、森を抜け、ようやく俺たちは目的地にたどり着いたのだ。


だが、喜んでばかりもいられない。


問題は――この王国に、坂口憲二がいるかどうかだ。


「林、悪いけど、ここで一度別行動にしないか?」


「ああ、いいぜ。じゃあ、また後でな」


林と別れた俺は、さっそく街の中へと足を踏み入れた。


そして、真っ先に向かったのは武器屋だった。


以前訪れたとき、俺はとんでもない武器を見つけていた。


値段は一千万ゴールド。


その名も――【九命の剣】。


九回斬りつけることで、相手を即死させるという、とんでもない性能を持った剣だ。


坂口の金さえ手に入れば、あの剣を買うことができる。


そう考えていたのだが……。


「……ッ!」


店に入った瞬間、俺は言葉を失った。


あったはずの場所に、あの剣がない。


「九命の剣が……なくなってる……」


嘘だろ……。


いや、待て。


俺はそこで、ようやく自分の愚かさに気づいた。


俺たちはずっと、誰が先に坂口から金を奪い、あの剣を手に入れるか。そればかり考えていた。


だが、そもそも坂口にとって、一千万ゴールドなんて大した金額ではないのかもしれない。


何しろ、あいつは有名企業の社長の息子だ。


俺たちが必死に金を集めている間に、坂口はとっくに剣を買っていた。


……いや、買わない理由がない。


「つまり……」


俺は頭を抱えた。


この殺し合いを制するためには、まず坂口を倒さなければならない。そして、あいつが持っているであろう【九命の剣】を奪う。


それしかない。


正直、武器が普通の剣同士なら、勝負は知恵とスキルの使い方次第だ。俺にだって、勝ち目はあったかもしれない。


だが、相手があの剣を持っているとなると話は別だ。


九回斬られれば即死。


たった九回。


いや、九回も斬られるまで生きていられる保証すらない。まともに戦ったところで、勝てる可能性は限りなく低いだろう。


「となると……」


俺は小さく呟いた。


「バレないように……一撃で仕留めるしかないか」


そもそも、坂口がどんなスキルを持っているのかすらわからない。


剣の性能だけでも厄介なのに、他にも強力なスキルを持っていたら、ますます手に負えなくなる。


まずは情報収集だ。


坂口がこの王国にいるのか。そして、どこにいるのか。


それを突き止めなければ、何も始まらない。


俺は武器屋を後にし、街の人々を眺めながら歩き始めた。


◇


「……やっと別れることができたか」


正弘と別れた林は、街の中をぶらぶらと歩いていた。


もちろん、ただ観光しているわけではない。


頭の中では、ずっと一人の男のことを考えていた。


清正弘。


あいつは、絶対に何かを隠している。


俺が森に入るとき、あいつを殺すつもりで後頭部を殴った。


不意打ちだったし、狙った場所も完璧だった。普通なら、ただでは済まないはずだ。


それなのに――。


あいつは、血すら流さなかった。


「……あんなスキル、あるのか?」


俺は森での出来事を思い返す。


正弘は、俺たちが苦戦していたグリムマンティスの弱点を一瞬で見抜いた。しかも、俺が攻撃しやすいように、的確に指示まで出してきた。


あいつは、勉強が特別できるタイプというわけではない。


だが、ゲームのこととなれば話は別だ。クラスの中で、あいつほどゲームをやり込んでいるやつはいない。ゲームの知識で正弘に勝てるやつなんて、まずいないだろう。


この世界の仕組みを理解するのも、戦い方を考えるのも、あいつは得意なはずだ。


……敵に回せば、間違いなく厄介な相手になる。


だが、幸いなことに、俺と正弘は仲がいい。


だったら、その関係を利用させてもらうまでだ。


正弘には悪いが、これは殺し合い。


生き残るためなら、使えるものは何でも使う。


「……まあ、今はそんなことより坂口だ」


俺は思考を切り替えた。


俺は転移した後、森を抜けて二つ目の街へと向かった。そこで武器屋に入ったとき、すでに【九命の剣】は売り切れていた。


つまり、坂口があの剣を購入したのは、少なくとも二日前ということになる。


そして、ついさっき。


正弘は気づいていなかったようだが、俺たちが森を抜けた頃、クラスメイトが二人も殺されていた。


箱崎遥馬と小松原通。


転移する直前、あの二人は恐怖のあまり、お互いに抱きついていた。


俺と正弘が近い場所に転移したように、あいつらも同じような場所に転移した可能性は高い。


そして、二人で協力して坂口を倒そうとした。


だが――。


結果は、返り討ち。


そう考えれば、あの死亡通知にも説明がつく。


「……やっぱり、坂口はこの国にいる」


俺は確信に近いものを感じていた。


坂口は昔から目立つことが好きなやつだった。自分の金持ち自慢をするのも、周囲から注目されるのも大好きだった。


そんなあいつが、この世界で強力な武器を手に入れたのだ。


わざわざ人目につかない場所に隠れるとは思えない。


どこに転移したとしても、あの巨大な王国は目に入ったはずだ。


ならば、あいつがこの国にいる可能性は高い。


問題は――今の坂口が、どれほど強いのかということだ。


【九命の剣】を持っているのなら、正面から戦うのは危険すぎる。


俺のスキルで、あいつに対抗できるのか。


正直、自信はない。


だが、ここで逃げていたら、いつまでたっても状況は変わらない。


「……これでも俺は、一人殺してんだぁ!」


俺はナイフを強く握りしめた。


「やってやるよ」


坂口憲二。


お前を倒して、俺が生き残ってやる。


そう決意した俺は、人混みの中へと足を踏み出した。


坂口を探すために。

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