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異世界に召喚された俺たちですが、どうやら仲間を殺さないと帰れないようです   作者: 高野
【第1章】生き残るために

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【5話】ユニークスキル

俺は巨大なカマキリに向かって、手を突き出した。


「水噴射!」


勢いよく放たれた水が、カマキリの体に直撃する。


だが――。


パシャッ。


「……は?」


なんとも情けない音を立てて、水が弾け飛んだ。カマキリは、まるで何事もなかったかのように、俺たちを見下ろしている。


「嘘だろ!? まったく効いてねぇ!」


くそっ……! 水噴射程度じゃ、こいつの硬い体には傷一つつけられないらしい。


一方、林は【身体能力上昇】を使い、カマキリの攻撃を引きつけていた。素早い身のこなしで鋭い鎌をかわし、隙を見つけては素早く距離を取っている。


さすがに、あの巨体を相手にするのは大変そうだ。


俺が使える攻撃系のスキルは、残すところ【毒牙】だけ。


……マジで頼むぞ、毒牙。


俺は剣を握り直し、カマキリの背中へと斬りかかった。


カンッ!


「なっ……!」


剣が弾かれた。


角度を変えて何度か斬りつけてみたが、結果は同じ。硬い金属にでもぶつけたかのような音が響くだけだった。


「でかいだけじゃなくて、硬いのかよ……!」


これでは、まともにダメージを与えられない。身体能力上昇を持ち、複数のスキルを使いこなせる林に任せるしかないのか……。


いや、そんなことを考えている場合じゃない。


「林! 交代だ!」


「よし、正弘! 頼むぞ!」


林はそう言うと、手にしたナイフを構えた。


俺は地面に落ちていた石を拾い、カマキリに向かって投げつける。


「おい、こっちだ! デカブツ! 俺と戦うのがそんなに怖いか!」


「キギャァァァァァッ!」


カマキリが怒ったような叫び声を上げ、こちらへと向き直った。次の瞬間、巨大な鎌が勢いよく振り下ろされる。


「うおっと、危ねぇ!」


俺は横に飛び退き、間一髪で攻撃をかわした。


ズドンッ!


鎌が地面に叩きつけられ、花畑の土が勢いよく跳ね上がる。


……やっぱり、とんでもない威力だ。まともに食らえば、ただでは済まない。


だが、こいつにも弱点はあるはずだ。


巨体である分、攻撃の動きは大きい。しっかりと相手の動きを見ていれば、攻撃をかわすこと自体はそれほど難しくない。


俺はカマキリの動きを観察しながら、必死に攻撃をかわし続けた。


しかし、林の方も苦戦しているようだった。ナイフで攻撃を仕掛けても、硬い外殻に阻まれてしまう。なかなか有効な一撃を入れられずにいる。


「くそっ……! 何か弱点はないのか!?」


こいつの強みは、あの硬すぎる体。


なら、逆に考えればいい。


体全体が硬いとしても、すべての部分が同じ硬さとは限らない。


俺はカマキリの体を注意深く観察した。


頭部、胴体、脚……。


そして、ふと気づいた。


「……そうか!」


硬い外殻に覆われていない場所がある。


関節部分だ!


あそこなら、攻撃が通るかもしれない。


「林! 関節だ! 関節部分を狙うんだ!」


俺の声に、林がハッとしたように顔を上げた。そして、カマキリの体を見て、すぐに俺の意図を理解したらしい。


「なるほどな……! よっしゃ、任せろ!」


林はナイフを逆手に持ち、カマキリへと突撃した。


「【身体能力上昇】! くらえ! これが今の俺の全力だ!」


身体能力を強化した林が、一気に距離を詰める。


狙うのは、カマキリの鎌を支える関節部分。


カマキリが迎撃しようと鎌を動かす。


だが、もう遅い。


スパンッ!


鋭い音が響いた。


次の瞬間、カマキリの二本の鎌が宙を舞った。


「よくやった! 林!」


「へっ、これくらい当然だろ!」


鎌さえなければ、こっちのものだ!


少なくとも、あの厄介な攻撃を警戒する必要はなくなった。


俺は剣を握りしめ、カマキリへと駆け寄る。そして――。


「これで終わりだ!」


全力で剣を振り上げ、首元へと斬りつけた。


「キギャァァッ!」


ゴトンッ!


大きな音とともに、カマキリの首が地面へと落ちた。巨体がぐらりと傾き、そのまま地面に倒れ込む。


そして、目の前にウィンドウが表示された。


【グリムマンティスを倒しました】


「……倒した、のか?」


しばらくの間、俺はその表示を見つめていた。


あの巨大なボスを、俺たち二人で倒したのだ。


「やったな、正弘!」


林が俺の肩に手を置いた。


「ああ……」


ようやく実感が湧いてきた。


生き残った。


少なくとも、今はまだ。


そのときだった。


【ユニークスキル『二連撃』を吸収しました】


「……っ!?」


思わず目を見開いた。


ユニークスキル……!


まさか、ボスを倒したことで、こんなスキルを吸収できるとは。


「二連撃……」


名前からして、連続で二回攻撃できるスキルだろうか。詳しい性能はまだわからないが、持っていて損はないはずだ。


むしろ、これから生き残るためには欠かせない能力になるかもしれない。


俺は表示されたウィンドウを閉じ、隣にいる林へと視線を向けた。


「なあ、林。お前も何かスキルを吸収したか?」


すると林は、なぜか慌てた様子でウィンドウを隠した。


「お、俺か? 俺は……何も吸収してなかったな」


「……そうか」


妙に歯切れが悪い。


何かを隠しているようにも見えるが……。


まあ、俺だって人のことは言えない。


「正弘はどうなんだ?」


「俺?」


さて、どうするべきか。


正直に話してもいい気はする。だが、ここは殺し合いの世界だ。今は協力できていても、いつか林と敵対する可能性は十分にある。


それに、ユニークスキルは貴重な切り札だ。わざわざ自分から手の内を明かす必要はないだろう。


「俺も何も吸収できなかったわ」


「そっか」


今は、これでいい。


俺たちは再び歩き始め、ムーン王国を目指した。


その後も何度か魔物と遭遇したが、グリムマンティスとの戦いを経験した俺たちにとっては、それほど苦戦する相手ではなかった。


そして、ようやく森を抜けた。


「……おお」


視界が一気に開ける。


その先に広がっていたのは、巨大な城と、それを取り囲むようにそびえ立つ高い城壁だった。


「あれが……俺たちの目指していた王国か」


「綺麗だな……」


思わず、そんな言葉が漏れた。


遠くからでもわかるほど立派な城。その周囲には街並みが広がり、まるで絵画のような光景が目の前に広がっている。


ただ、まだ距離はかなりある。あそこまでたどり着くには、もう少し歩かなければならないだろう。


俺たちはその美しい景色に見とれ、しばらくの間、立ち尽くしていた。


――そのせいで。


目の前に表示されたウィンドウに、気づくことはなかった。


【箱崎遥馬 死亡】

死因:殺害


【小松原通 死亡】

死因:殺害


残り39人

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