【4話】クラスメイトとの出会い
坂口強奪戦――。
坂口憲二を殺し、金を奪う。
そうすれば、この殺し合いで負けることはなくなるはずだ。
だが――。
一つ、問題があった。
そう、俺はまだ一度もクラスメイトと出会っていないのである。
せめて居場所さえわかれば……。
もしかすると、すでに誰かに先を越されている可能性だってある。
「……今日はもう寝るか」
夜もすっかり暗くなってしまった。
いくら考えたところで、今すぐ状況が変わるわけでもない。
俺はひとまず休むことにした。
◇
そして翌朝。
俺は街にある地図を眺めながら、これから向かう場所を考えていた。
「クラスメイトが集まるとしたら……どこだ?」
人が集まりやすい場所といえば、やはり大きな街だろう。
地図のほぼ中央には、ひときわ大きな国と城が描かれていた。
その名も、トータム王国。
「ここから北東に三十キロってところか……」
距離はあるが、迷っている場合ではない。
俺は地図を頭に叩き込み、トータム王国を目指して街を出た。
もちろん、そこに坂口がいる保証はない。
自分が狙われていることに気づき、どこかに身を隠している可能性だってある。
だが――。
「行ってみるしかないか」
俺はわずかな望みをかけ、トータム王国へと足を進めた。
しばらく歩くと、目の前に広大な森が現れた。
「この先は……森か」
どうやら、ここを抜けなければならないらしい。
俺が森へ足を踏み入れようとした、その瞬間だった。
「先手必勝!!」
ゴツンッ!
「うぐっ!?」
突然、後頭部に衝撃が走った。
何者かに殴られたのだ。
俺は痛みに顔をしかめながら、慌てて後ろを振り返った。
そこに立っていたのは――。
「林!?」
「まさか……正弘か?」
林も俺の顔を見て、驚いたように声を上げた。
……よかった。
最初に出会ったのが林で、本当によかった。
林は俺の数少ない友人の一人だ。
少なくとも、いきなり命を狙ってくるような相手ではない……と思いたい。
「ああ、俺だよ」
俺が答えると、林はほっとしたように息を吐いた。
「なんだ、正弘か……。びっくりさせんなよ」
「いや、殴ってきたのはお前だろ!」
思わずツッコミを入れてしまった。
……まあ、今はそんなことよりも重要なことがある。
「それで、他に誰か見かけなかったか? 特に坂口とか」
「坂口……?」
まさか、こいつも坂口を狙っているのか?
だとしたら、ここで対立するのはまずい。
ひとまず、知らないふりをしておこう。
「珍しいな。林が坂口に会いたがるなんて。まあ、俺はずっと一人だったけどな」
すると、林はあからさまに残念そうな顔をした。
「なんだ……一人か。坂口は……その、ほら。やるときはやるやつだから、早めに会っておきたいと思ってさ」
「へ、へえ……」
なんだ、その歯切れの悪さは。
どうにも引っかかるが、今ここで問い詰めても仕方がない。
俺は話題を変えることにした。
「ところで、林はどこかに向かっている途中なのか?」
「ああ、まあ……そんな感じだ」
林は少し焦ったように答えた。
……やっぱり、何か隠しているな。
とはいえ、俺だって人のことは言えない。
坂口を狙っているなんて、こいつには絶対に知られたくないからな。
「そうか。実は俺も一人で寂しかったんだ。よかったら、一緒に行動しないか?」
「……ああ、いいぜ」
林は少し間を置いてから頷いた。
ふぅ……。
俺は心の中で安堵した。
これで、林に殺されてゲームオーバーという最悪の展開は回避できたはずだ。
こうして俺たちは、二人で森の中を進むことになった。
歩きながら話を聞いてみると、林が転移した場所も、なんと俺と同じ森だったらしい。
ただし、俺とは違い、林は森を抜けてすぐに二つ目の街へたどり着いたそうだ。
そして、もう一つ驚くべきことがあった。
「なあ、林。お前、今いくつスキルを持ってるんだ?」
「四つだな」
「四つ!?」
思わず声が裏返った。
俺が苦労して手に入れたスキルは、まだほんのわずかだ。
それなのに、林はすでに四つも所持しているらしい。
「どんなスキルなんだ?」
「えっと……【身体能力上昇】【毒噴射】【水噴射】【毒突進】の四つだ」
「身体能力上昇……」
シンプルだが、かなり使い勝手がよさそうなスキルだ。
攻撃にも防御にも役立つだろうし、移動だって楽になるかもしれない。
正直、俺も欲しい。
「それにしても、よくそんなにスキルを手に入れたな。合成までしてるんだろ?」
「ああ。魔物を倒していたら、いつの間にかな」
「そんな簡単に手に入るものなのか?」
「いや、そうでもないぞ。かなりの数を倒したからな」
なるほど……。
やはり、スキルを獲得できる確率は相当低いらしい。
俺もそれなりの数の魔物を倒してきたが、手に入ったスキルはごくわずかだった。
「ちなみに、その【毒突進】ってのはどんなスキルなんだ?」
「毒をまとった状態で突進するスキルだ。威力もそれなりにあるぞ」
「へえ……」
毒と突進の組み合わせか。
なるほど、スキル同士の組み合わせ次第で、いろいろな能力が生まれるわけだ。
単純な組み合わせでも、使い方によってはかなり強力になるかもしれない。
そんな話をしながら森の奥へ進んでいくと、やがて視界が開けた。
「……おお」
そこには、一面に花が咲き誇る美しい花畑が広がっていた。
薄暗い森の中に、そこだけ別世界のような景色が広がっている。
色とりどりの花が風に揺れ、思わず足を止めて見入ってしまうほどだった。
「まさか……」
隣で林が呟いた。
「ん? 何か知ってるのか?」
俺が尋ねると、林は花畑を見渡しながら答えた。
「ああ。街で聞いた話なんだけど、この森のどこかに綺麗な花畑があって、そこにボスがいるらしいんだ」
「ボスだと……?」
俺は周囲を見回した。
しかし、花畑には俺たち以外の姿は見当たらない。
「どこにいるんだよ……?」
そのときだった。
「上だ!!」
林の叫び声が響いた。
「――っ!」
俺は反射的に顔を上げた。
そして、息を呑んだ。
そこにいたのは、巨大なカマキリのような魔物だった。
木々の上から、俺たちを見下ろしている。
「デカすぎんだろ……!」
見上げるだけでも首が痛くなりそうな巨体。
その大きさは、五メートルを優に超えているように見えた。
こんな化け物が、この森に潜んでいたのか……!
「林……どうする?」
俺は剣を握りしめながら尋ねた。
逃げるべきか。それとも、戦うべきか。
相手の強さはまったくわからない。
だが、林は迷わなかった。
「やるしかねぇだろ!」
林はそう叫ぶと、すぐさま戦闘態勢を取った。
「……ああ! そうだよな!」
俺も剣を構え、目の前の巨大な魔物と向き合う。
こんなところで死ぬわけにはいかない。
必ず生きて、元の世界に帰るんだ!
その強い決意を胸に、俺は巨大なカマキリを鋭く睨みつけた。
そして――。
「くらえ! 毒噴射!」
「キギャァァァァァッ!」
俺たちの攻撃を合図にしたかのように、巨大なカマキリが動き出した。
大きな体を揺らしながら、鋭い鎌を振り上げる。
次の瞬間、カマキリは俺たち目がけて襲いかかってきた。
こうして――。
俺たちと森のボスとの戦いが、幕を開けた。
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