【32話】妖精と連合
大幅に遅れてしまって申し訳ございませんでした。
「なんなんだ……ここ?」
周囲を飛び回っている小さな生き物。おそらく、妖精だろう。
問題は、こいつらが友好的なモンスターなのか、それとも敵対的なモンスターなのかということだ。
「えーと……こんにちは?」
俺は意を決して、妖精に話しかけてみる。
「ーーーーー」
何かを話しているようだが、まったく理解できない。
すると、一匹の妖精が羽をパタパタと動かしながら、俺の目の前を飛び始めた。
「……ついてこいってことか?」
「ーー!」
妖精は勢いよく羽ばたいた。
(これは肯定しているんだよな……?)
俺は半信半疑ながらも、妖精の後を追うことにした。
それにしても、ここは一体何なんだ?
隠しエリアというやつだろうか。
だが、最初にこの土地を訪れたときは、隅々まで探索したはずだ。こんな場所があるなんて聞いたこともない。
(何か特別な条件でもあるのか……?)
そんなことを考えながら、妖精についていくこと約五分。
突如、目の前に巨大な泉が姿を現した。
「すげぇ……」
思わず感嘆の声が漏れる。
透き通った水が静かに揺れている。底まで見えるほど透明で、まるで別世界に迷い込んだようだった。
俺は泉の中を覗き込もうと、ゆっくりと近づく。
その瞬間――。
ドンッ!
「うわっ!?」
突然、背中を強く押された。
体勢を立て直す間もなく、俺の身体は泉の中へと落ちていく。
「頼んだぞ……」
(今の声……妖精か? いや、明らかに男の声だったぞ……)
誰が押したのか確認する間もなく、俺は水中へと沈んでいった。
すぐに水面へ戻ろうとする。
しかし、いくら上を目指しても水面が見当たらない。
(なんだ……どうなっている!?)
まずい。このままでは溺れてしまう。
周囲を見渡すと、魚が悠々と泳いでいた。
(まさか……ここは海なのか?)
俺は必死に体勢を変え、下へ向かって身体を向ける。
そして――。
「リミットブレイク!」
その瞬間、強烈な衝撃波が放たれた。
反動によって、俺の身体は一気に上昇していく。
そして――。
「はぁ……はぁ……」
なんとか水面へと顔を出すことができた。
俺は荒い息を整えながら、周囲を見渡す。
そこに広がっていたのは、先ほどの泉とはまったく違う光景だった。
どこまでも続く青い海。
白い砂浜。
そして、心地よい潮風。
目の前には、美しいビーチが広がっていた。
「どこなんだ……ここ?」
(もしかして、ワープでもしたのか……?)
俺は警戒しながら、周囲を散策することにした。
何か手がかりがあるかもしれない。
そうして歩き始めて約二十分。
「あれは……」
遠くに見覚えのある城が見えた。
「あれって……トータム王国!?」
間違いない。以前訪れたことのある城だ。
どうやら、あの妖精のおかげで、本来なら五日ほどかかる道のりを大幅に短縮できたらしい。
(妖精に感謝すればいいのか……それとも、いきなり泉に突き落とされたことを怒ればいいのか……)
俺は複雑な気持ちを抱えながら、トータム王国へ向かって歩き始めた。
◇
【サラシアラ王国】
「何!? 暗殺に失敗しただと!?」
大勢の人間が集まる部屋に、男の怒声が響き渡った。
「は、はい。会長に言われた通り、洞窟の入り口で待ち伏せしていたのですが……一向に出てこなくて」
報告を受けた男は、険しい表情を浮かべる。
「バカな……あそこは山に囲まれている。洞窟以外に出口はないはずだぞ……」
男はしばらく考え込んだ後、勢いよく立ち上がった。
「私が直接行こう……!」
すると、部屋の隅にいた別の男が口を開いた。
「やめといた方がええんちゃいますか? リーダーがいないチームは、破滅へと導かれまっせ?」
「……もとはといえば、お前のせいだぞ。こんなことになっているのは!」
男は鋭い視線を向ける。
「俺はお前に暗殺を命じたはずだ。それなのに、帰ってきたと思えばボロボロの姿で暗殺失敗……。俺を舐めているのか! 澁谷!」
名指しされた澁谷は、悪びれる様子もなく口を開いた。
「正弘は早めに殺した方がええで? もしかしたら、坂口暗殺を先越されるかもしれんしな……」
「……」
男の表情が険しくなる。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「ああ。決戦は一週間後だ! 俺たちはそこで坂口を殺し、最強へと至るのだ!!」
「うォォォォ!!」
周囲の人間たちから、一斉に歓声が上がる。
男は満足そうに彼らを見渡し、声を張り上げた。
「我ら、クラスメイト十九人で結成した連合――オルタナティブ! 俺たちこそが最強だ!!」
その声が、部屋全体に響き渡った。




