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異世界に召喚された俺たちですが、どうやら仲間を殺さないと帰れないようです   作者: 高野
【2章】坂口討伐への道

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【29話】死線の果てに


俺は、目の前に立つ澁谷を睨み続けていた。


「う……」


澁谷はボロボロになった身体を無理やり動かし、一歩ずつ俺に近づいてくる。


「あ……う……」


もはや、まともに言葉を発することすらできないようだ。身体のあちこちが限界を迎えているのだろう。


それでも、澁谷は刀を手放さなかった。


せっかく、あいつの最強の技を耐えたというのに……。


このまま俺が死ぬなんて、冗談じゃない。


澁谷は俺の目の前まで来ると、ゆっくりと刀を振り上げた。そして、その刃を俺の首へと振り下ろす。


(ごめん……中西)


約束を果たせなかった。


俺はユニークスキルを三つも持っている。それなのに、どれ一つとして上手く使いこなせていなかった。


あのときから、何も成長していないじゃないか……。


中西が命を落とした日。


俺は今でも、あの出来事を何度も思い出してしまう。


俺がもっと別の行動をしていれば。安易に偵察なんかに行かなければ。彼女を救う方法は、ほかにもあったんじゃないか。


そんな後悔ばかりが頭をよぎる。


だが、もう遅い。


俺はここで死ぬ。澁谷の刀によって。


確かに、澁谷は強かった。だが、冷静に考えれば、戦略次第で俺が圧倒できる相手だったはずだ。


勝機を失ったのは、俺が油断して剣を失ったときだ。もっとやりようがあったはずなのに。


新しく獲得した【絶壊】だって、結局一度も使えなかった。


俺はいつもそうだった。


学校でも、何をやっても中途半端。最後までやり遂げられず、いつも後悔ばかりしていた。


そんな俺を、いつも慰めてくれたのは両親と姉だった。


姉……。


そうだ。


俺には姉がいた。


二年前に失踪し、死亡したことになっている姉だ。


だが、俺はそんな話を一度も信じたことがない。


姉は絶対にどこかで生きている。そして、今も幸せに暮らしている。


なぜか、そう確信していた。


懐かしいな……。


現世での記憶が、次々と蘇ってくる。


テストで赤点を取って、親に怒られたこと。姉が大量のハンバーグを焼いてくれたこと。


何気ない日常の一つ一つが、今になって鮮明に思い出される。


まるで走馬灯のようだった。


俺はゆっくりと目を閉じる。


もう、いいだろう。


せめて最後くらいは、静かに終わりたい。


パキッ。


……あれ?


いつまで経っても、痛みが来ない。


不思議に思って目を開けようとした、そのときだった。


パキパキ……。


澁谷の刀が、俺の首に触れる寸前で止まっていた。


いや、違う。


刀身に細かな亀裂が走っている。


俺の身体はすでに限界だ。【不動】だって発動していないはず。


それなのに、どうして……。


「な……んで……」


次の瞬間。


パリンッ!!


俺の首まで、あと一ミリというところで、澁谷の刀は粉々に砕け散った。


「あぁ……」


澁谷は小さくうめき声を上げると、そのまま後ろへ倒れ込んだ。


どうやら、気絶したらしい。


助かった……のか?


そう考えた瞬間、俺の意識も急速に遠のいていく。


(意識が戻ったとき……生きていたらいいな……)


そして俺も、澁谷と同じように意識を失った。


◇


「あぁ……うぅ……」


まぶたの隙間から、柔らかな光が差し込んでくる。


……ここはどこだ?


天国だろうか。


いや、人を殺してきた俺が天国に行けるはずもない。


なら、地獄か?


そんなことを考えながら、ゆっくりと目を開ける。


そこは、澁谷と戦った場所だった。


周囲を見渡してみるが、澁谷の姿はどこにもない。


(殺されずに済んだのか……)


どうやら、俺は生きているらしい。


身体はまだ重いが、なんとか歩くことくらいはできそうだ。


俺はその場を離れ、ワテラキ王国を目指すことにした。


そして、歩き続けること約六時間。


ようやく、王国の入口へとたどり着いた。


「おお! あなたは!」


入国してすぐ、一人の男性が駆け寄ってきた。


「宝石を取り返してきてくれたんですか!?」


宝石……。


そうだ。


俺は宝石を取り返すために、火山にいる竜のもとへ向かったんだった。


どうにか宝石は回収できたはずだ。


だが、今はそれどころではない。


身体は限界を迎えている。


「……明日でもいいか?」


俺が申し訳なさそうに尋ねると、男性は笑顔で頷いた。


「全然大丈夫ですよ! まずはゆっくり休んでください!」


よかった……。


俺は男性に礼を言い、そのまま宿へと向かった。


そして、部屋に入るなりベッドに倒れ込む。


もう何も考えたくない。


今はただ、眠りたい。


俺はそのまま、深い眠りへと落ちていった。


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