【27話】初見殺しの技
「おい……何をしたんだ?」
俺は腹部を押さえながら、澁谷を睨みつけた。
今の攻撃は何だった?
確かに、澁谷は刀を振った。しかし、俺との距離は六メートル以上も離れていたはずだ。
それなのに、まるで目の前で斬られたかのように攻撃を受けている。
しかも、俺のユニークスキル【不動】を貫通していた。
「あれまぁ、まだ分からへんのか?」
澁谷は刀を肩に担ぎ、余裕たっぷりに笑った。
「せやなぁ。特別に教えたるわ」
「……」
「俺はな、あらかじめ好きな場所に斬撃を設置できるんや。そして、好きなタイミングで発動させられる」
「斬撃を……設置?」
「そういうことや。あんたが気づかんうちに、そこら中に仕掛けとったんよ」
なるほど。
つまり、こいつは事前に斬撃を仕掛けておき、相手が油断した瞬間に発動させることができるのか。
目に見えないうえ、いつ襲ってくるのかも分からない。
まるで透明な地雷だ。
「厄介な能力だな……」
俺は周囲を警戒しながら、ゆっくりと後退する。
下手に動けば、またあの攻撃を食らう可能性がある。
それに、先ほどの一撃で分かったことがある。
こいつの攻撃は【不動】を貫通する。
通常の攻撃なら、【不動】によって受けるダメージを大幅に抑えられる。だが、澁谷の攻撃にはそれが通用しない。
あと二、三回も攻撃を受ければ、俺の命も危ういだろう。
一方で、澁谷自身の防御力はそれほど高くないように見える。
ならば、やることは一つだ。
相手の攻撃を警戒しながら、こちらの攻撃を叩き込む。
「どうしたんや? さっきまでの威勢はどこ行ったん?」
澁谷は刀を構えたまま、じりじりと距離を詰めてくる。
その表情には、まだ余裕があった。
おそらく、自分の能力なら俺を倒せると確信しているのだろう。
だが、俺だって黙ってやられるつもりはない。
俺はバッグから予備のナイフを取り出す。
俺には、こいつの能力に対抗できる手段がある。
「震空剣!!」
俺はナイフを握りしめ、その場で思い切り振り抜いた。
「……は?」
澁谷は一瞬だけ目を丸くした。
しかし、すぐに表情を緩める。
「なんや? そんなところで素振りして、どないしたんですか?」
どうやら、俺が何をしたのか分かっていないらしい。
その直後――。
ザシュッ!!
「ぐっ……!」
澁谷の胸元に、見えない斬撃が走った。
「グゥッ!!」
澁谷は苦しそうに声を漏らし、胸元を押さえる。
「な、なんや……今の……」
俺はその様子を見て、確信した。
やはり、当たった。
これが【震空剣】の力だ。
剣を振ることで、離れた相手にも斬撃を飛ばすことができる。
しかも、その斬撃は目に見えない。
澁谷の能力と同じように、初見で対処するのは難しいはずだ。
もちろん、何度も同じ攻撃を繰り返せば、いずれ見切られる可能性もある。
だからこそ、今の一撃で決める必要がある。
「どうやら、効いたみたいだな」
「……あんた、何をしたんや?」
澁谷は胸元を押さえながら、ゆっくりと刀を構え直した。
先ほどまでの余裕は、少しずつ消え始めている。
「なんや……あんたも、そんな技を持っとったんか……」
「ああ。そういうことだ」
俺は剣先を澁谷へと向ける。
澁谷の攻撃は確かに強力だ。
一歩間違えれば、こちらが倒されていたかもしれない。
だが、俺にも切り札はある。
相手の攻撃が届く前に、こちらの攻撃を当てればいい。
この勝負――俺の勝ちだ。




