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異世界に召喚された俺たちですが、どうやら仲間を殺さないと帰れないようです   作者: 高野
【第1章】生き残るために

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【18話】秘策

俺は剣を振るいながら、横目でウィンドウを確認した。


【統合完了まで 9時間21分45秒】


「……流石に間に合わないか」


あと九時間以上。


この戦いが終わるまでに、合成が完了する可能性は低いだろう。


だが、中西や大多和の戦いを見ていて、俺は一つのことに気づいていた。


ユニークスキルは、普通のスキルとは比べものにならないほど強力だ。


【絶剣】も【不動】も【震空剣】も、戦況を一変させるだけの力を持っている。


もし、俺の合成が完了していたら……。


「おい! 戦闘中にウィンドウを眺めるとは、ずいぶん舐められたもんだな……!」


「っ!」


大多和が力いっぱいに大剣を振り上げた。


まずい!


俺は咄嗟に後ずさる。


「震空剣!!」


大多和が剣を振り下ろした。


刃は俺に届いていない。


だが、次の瞬間、俺の着地地点に見えない斬撃が飛んできた。


「しまっ……!」


避けきれない。


そう思った瞬間だった。


「正弘、危ない!」


中西が俺の前に飛び出し、剣を振るった。


ガギィィンッ!


激しい衝撃音が響き渡る。


中西は震空剣の攻撃を受け止め、どうにか軌道を逸らした。


「助かった、中西!」


「お礼はあと! 前を見て!」


「わかってる!」


即席の連携にしては、悪くない。


俺が攻撃を引き受け、中西が隙を見つけて攻める。互いの役割は明確だ。


……それでも、大多和にはまったく歯が立たなかった。


「ハハッ! いいねえ! もう少し楽しませてくれよ!」


大多和が大剣を振り回す。


一撃一撃が重い。


しかも、距離を取れば【震空剣】が飛んでくる。近づけば大剣そのものが襲いかかってくる。


おまけに、【不動】によって攻撃のダメージまで軽減されるのだ。


まともに戦って勝てる相手じゃない。


さて……どうする?


俺は大多和の剣を弾き返しながら、必死に頭を回転させた。


中西が隙を見つけて攻撃する。


その瞬間に、俺の【畜撃】を叩き込む。


それが今の俺たちに残された勝ち筋だ。


だが、問題がある。


仮に中西の攻撃が成功したとしても、大多和は倒れないかもしれない。いや、おそらく一撃では倒せない。


だからこそ、俺の【畜撃】が必要なんだ。


蓄えたダメージを一気に解放し、【不動】を突破する。


そのためには、まず中西が攻撃を当てられるだけの隙を作らなければならない。


だったら――。


「はぁぁぁぁぁ!!」


俺は剣を振るう速度を上げた。


一撃。

二撃。

三撃。


大多和の大剣に弾かれながらも、俺は攻撃を続ける。


(もっと……もっと速く!)


少しでもいい。


ほんの一瞬でも、大多和の意識を俺に向けられればいい。


「おらおら! そんな攻撃が通じるかよ!」


大多和が大剣を横薙ぎに振るう。


俺は剣を盾にして受け流し、すぐさま踏み込んだ。


「これで……どうだ!」


俺は剣先を大多和の体に叩き込む。


「うぐっ……!」


大多和の体がわずかに揺れた。


ほんの一瞬。


だが、確かに隙が生まれた。


「中西! 今だ!」


俺が叫ぶと同時に、中西が地面を蹴った。


「ええ!」


中西の剣が、まばゆい光を放つ。


その輝きは、これまでの攻撃とは明らかに違っていた。剣身が虹色に染まり、周囲の空気までもが震え始める。


「これが……私の奥義!」


中西は大きく剣を振りかぶった。


「【終焉交響曲(ラスト・シンフォニー)】!!」


虹色の剣閃が、大多和へと襲いかかる。


速い!


いや、速いなんてものじゃない。


剣が振るわれたと思った瞬間には、もう大多和の目の前まで迫っていた。


「なにっ……!?」


大多和の表情が初めて変わった。


いける!


今なら――!


「リミットブレイ……!」


俺も【畜撃】を解放しようとした。


その瞬間。


ドコォォォォォンッ!!


凄まじい爆音が響き渡った。


地面が大きくえぐれ、土煙が空高く舞い上がる。


「ぐあっ!」


俺は衝撃に押され、思わず腕で顔を覆った。


な、なんだ!?


いったい何が起きた!?


やがて、煙の向こうから大多和の声が聞こえてきた。


「……そんなもんか? がっかりさせんなよ」


嘘だろ……。


俺は煙の向こうを見つめた。


そこには、大剣を構えた大多和が立っていた。


中西の奥義を受けたはずなのに、まだ倒れていない。


しかも、俺の【畜撃】まで潰された。


どうやら大多和は、俺が攻撃を放つ直前に【震空剣】を地面へと叩き込み、衝撃を発生させたらしい。


その衝撃で俺の体勢を崩し、攻撃を中断させたのだ。


こいつ……。


普通に戦闘IQが高い。


力任せに攻めているように見えて、俺たちの狙いをきっちり読んでいる。


一度【畜撃】を見せてしまった以上、次は確実に警戒されるだろう。


同じ手は通用しない。


「くそっ……!」


俺が立ち尽くしていると、中西が駆け寄ってきて俺の手を引いた。


「一回逃げるわよ!」


「逃げるって……!」


どうせ逃げても、【周辺察知】で居場所がばれる。


時間を稼いだところで、状況が好転するとも思えない。


それでも、中西の表情には迷いがなかった。


……何か、まだ秘策があるのか?


俺はそれ以上聞かず、中西についていくことにした。


俺たちが走り出すと、大多和はすぐには追ってこなかった。


大剣を肩に担ぎ、ゆっくりと歩いてくる。


まるで、逃げる俺たちを追い詰めることそのものを楽しんでいるかのようだった。


「スキルがあるからって、俺を舐めやがって……」


その声を背中に聞きながら、俺は必死に足を動かした。


やがて、大多和から二十メートルほど離れたところで、中西が突然立ち止まった。


「正弘」


「なんだ?」


中西は俺の目をまっすぐに見つめた。


その表情は、驚くほど落ち着いていた。


「私は今から、あなたを刺す」


「……は?」


一瞬、何を言われたのかわからなかった。


俺を刺す?


今、この状況で?


「ちょ、ちょっと待て! どういうことだよ!?」


中西は答えず、剣を握る手に力を込めた。


「頼んだわよ、正弘」


……そうか。


迷っている場合じゃない。


俺は中西を信じるしかない。


俺は覚悟を決め、中西の前に立った。

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