【14話】正弘サバイバル②
俺は魔物を倒しながら、洞窟へと向かっていた。
一日目の目的は偵察だ。
もし洞窟に見張りがいなければ、そのまま通り抜けてしまえばいい。
わざわざ大多和と戦う必要なんてないのだから。
この辺りにいる魔物は、以前いた場所と似たようなものばかりだった。
スライムにボア。
せいぜい、その程度だと思っていたのだが……。
ポキッ!
突然、木の枝が折れる音がした。
俺は音のした方を見上げる。
そこにいたのは、一匹のウサギだった。
そう、こいつは初めて見る魔物だ。
名前は確か……【バニーバニー】。
とにかく移動速度が速く、攻撃を当てるのが難しい魔物だったはずだ。
俺は指先に意識を集中させる。
そして――。
「【水噴射】!!」
ピョンッ!
しかし、バニーバニーは軽々と跳び上がり、あっさりと攻撃をかわした。
「ぐわぁ! またかよ!」
スライムやボアならともかく、こいつは本当に厄介だ。
攻撃は当たらないし、倒すだけでも時間がかかる。
正直、相手にするだけ無駄な気さえしてくる。
だが、倒さないわけにもいかない。
俺には、自分の身体能力を上げるスキルが一つもないのだ。
林が持っていた【身体能力上昇】。
あれくらいは手に入れておきたい。
その一心で、俺はバニーバニーを追い続けた。
◇
「ハァ……ハァ……」
朝から歩き始めたというのに、辺りはすっかり暗くなり始めていた。
おそらく、あと二時間ほど歩けば洞窟にたどり着くだろう。
俺はウィンドウを開き、合成の残り時間を確認する。
【統合完了まで 56時間32分05秒】
歩いている間にも、かなりの時間が経過していたらしい。
「あと二日とちょっとってところか……」
正直、もう歩くのにも疲れた。
集中力も、とっくに限界だ。
「今日はもう寝よう……」
そういえば、現実世界からこの異世界に来て、もう三週間ほど経つのか。
住めば都、なんて言葉もあるが、俺は一向にこの世界に慣れなかった。
新作ゲームも、アニメの続きも、まだまだやり残したことがたくさんある。
「地球に……帰りてぇ……」
思わず本音がこぼれた。
俺は適当な場所を見つけると、横になって目を閉じた。
そして、そのまま眠りについた。
◇
「この世界の住人とは思えない服を着ていた、だと?」
低く、威圧的な声が響いた。
声の主は、ひときわ体格の大きな男だった。
「そ、そうですぜ、大多和の兄貴……」
一人の子分が、怯えた様子で答える。
「へへ……やっとか」
大多和和成は、口元を歪めた。
俺様がこの異世界に来てから、一週間。
ようやく、この山に囲まれた場所までたどり着いた。
ここなら、いずれ誰かがやってくる。
そして、そいつからすべてを奪ってやる。
できれば女がいい。
女なら、なおさらいい。
正直、現実の世界にはうんざりしていた。
法律のせいで、俺は自由に生きられない。
やりたいことも、好き勝手にできない。
だが、そんな日々も終わった。
神様が俺の味方をしてくれたのだ。
法律に縛られない世界。
人を殺しても許される世界。
こんな最高の場所が、ほかにあるだろうか?
「ハハッ……ハハハハハハハ!」
俺はこの世界の独裁者になる。
誰にも逆らわせない。
誰にも邪魔させない。
洞窟の出入り口には、すでに子分たちを配置してある。
あの男も、まだこの辺りにいるはずだ。
逃げられると思うなよ。
「さぁて……ネズミ狩りといこうか」
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