【12話】交錯する思惑
大剣が、目の前まで迫ってくる。
ここで死ぬのか……?
クラスメイトに殺されるわけでもなく、ただの事故死。
こんなの、ゲームだったらダサすぎるだろ。
だが――。
ここで諦めるわけにはいかない!
「最後まで足掻いてやるよ!」
俺はガーディアンに指を向けた。
「【水噴射】!!」
指先に意識を集中させ、赤い宝石めがけて水を放つ。
ピシッ!
放たれた水が見事に命中し、宝石にひびが入った。
そして――。
パリンッ!!
ガーディアンの胸元に埋め込まれていた宝石が、音を立てて砕け散った。
同時に、振り下ろされていた大剣が俺の顔すれすれで停止する。
「……え?」
ガーディアンは後ろに二、三歩よろめくと、そのまま巨体を地面に倒した。
《ボスガーディアンを倒しました》
「ハァ……ハァ……」
ウィンドウに表示された文字を見て、俺はようやく安堵した。
よかった……。
どうにか、生き残れたらしい。
そう思った瞬間、俺の意識は途切れた。
◇
どれくらい時間が経っただろうか……。
俺はゆっくりと目を開けた。
どうやら、あのまま気絶していたらしい。
ガーディアンとの戦いで、俺は重傷を負ったはずだ。
それなのに、不思議なことに傷はすっかり治っていた。
「……どういうことだ?」
自分の体を確認してみるが、痛みも違和感もない。
まるで、最初から何事もなかったかのようだ。
……まあ、今は考えても仕方がないか。
「これなら洞窟から出られそうだ」
俺は立ち上がり、穴の壁に手をかけた。
そして、時間をかけて少しずつ登っていく。
ようやく穴から這い上がった俺は、洞窟の奥へと歩き始めた。
それから五分ほど歩いただろうか。
前方に、かすかな光が見えてきた。
「あれは……!」
俺は光に向かって歩みを進める。
やがて、視界が大きく開けた。
「やっと……洞窟から出られたのか」
短いようで、長い洞窟探索だった。
俺は大きく息を吐き、周囲を見渡した。
そこには、いくつもの小さな村が広がっていた。
地図に記されていた、目的地の荒廃した村だろう。
どうにか、無事にたどり着くことができたようだ。
……もっとも、村が本当に安全かどうかは分からないが。
「さて、まずは――」
「おい、そこのお前」
突然、背後から声をかけられた。
振り返ると、三人の男がこちらを見ていた。
その目つきは、どう見ても友好的とは言い難い。
「ちょっと、俺たちに付き合ってもらおうか」
……到着早々、面倒ごとかよ。
◇
「あいつ……どこに行ったんだ?」
正弘が王国を出てから、すでに二週間ほどが経過していた。
俺――林は、城で正弘を助けてから、しばらくの間あいつと行動を共にしていた。
だが、ある日を境に、正弘は突然姿を消した。
何の前触れもなく、忽然と。
俺が城にたどり着いたとき、正弘は確かに坂口に斬りつけられていた。
あのときから、違和感はいくつかあった。
まず、正弘の太ももには穴が開いていた。
これは後から本人に聞いた話だが、どうやら自分の放った【水噴射】が反射され、太ももに命中したらしい。
それ自体は、別におかしな話じゃない。
問題は、そこじゃない。
あいつは坂口に何度も剣で斬りつけられていた。
それなのに、血どころか、擦り傷一つついていなかったのだ。
正弘自身は、特に気にしていない様子だった。
だが、明らかに異常だ。
俺が正弘を担いで逃げるとき、坂口から一撃を受けた。
そのとき、俺は確かに痛みを感じたし、斬られた場所からは血も流れた。
当たり前のことだ。
それなのに、正弘には傷一つない。
……いや。
思い返せば、森での一件もそうだった。
俺が正弘を殺すつもりで攻撃したときも、あいつからは血すら出なかった。
正弘は、いったい何者なんだ……?
「……まさか」
一つの可能性が、頭をよぎった。
「ダメージを無効化するスキルを持っている……?」
もちろん、確証はない。
あくまでも俺の推測にすぎない。
だが、もしそうだとしたら……。
本当の脅威は、坂口じゃない。
正弘だ。
ダメージを無効化できる相手を倒す方法は限られている。
そして、俺が思いつく唯一の対抗策は――【九命の剣】。
あの剣なら、どんな相手でも九回斬りつければ即死させられる。
何が何でも坂口を殺し、あの剣を手に入れなければ……。
「待ってろよ、坂口……」
俺はそう呟き、闇の中へと姿を消した。
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