08 安心の代償
「二日目」
全員が昨日よりもモニターに近く立っている。
けたたましいチャイムが鳴り終わってすぐ、麻琴の声がアリーナに響いた。
しかし、ルールの追加はない。
麻琴のコンテナなのだろう、黄色が赤に変わるコンテナがあった。
舌打ちを飲み込む麻琴が見えた。
「ゲームの勝利条件」
次に宣言したのは鈴木。
残った中で一番表情も雰囲気も顔色も変わっていない人の一人だ。
通知音が響いて、海斗は心の中で落胆した。
それは海斗が言おうとしていた言葉だ。
『レ **ゲームの勝利条件**は、ゲーム終了時の最後の問いに正しく答えることである』
誰かが「ルールの数」や「最後の問い」などを叫ぶがそれらは通らない。
「ルールの表示」
凜とした声。
さくらが動揺する気配なく、宣言する。
昨日、初めて会ったときとは雰囲気が変わっている。
海斗が感じたただのコミュニケーションお化けではない。
どちらかというと一瞬見えた感情のない方のさくらだ。
『レ ルールの有効は、**ルールの表示**のタイミングにかかわらず、表示前からも有効である』
「へぇ」
聞こえないように息を吐く。
さくらが考えたのか、麻琴が考えたのかはわからない。
ただ、思っていたほど、二人は単純な関係性ではないのかもしれない。
一回目の休憩時間になり、少しずつ焦りが広がっていく。
今日も最低一つはルールを開けなければ、脱落になる。
ふと、顔を上げると、不敵に笑う鈴木と目が合う。
まるで「期待していますよ」と言わんばかりの笑みだ。
「モニター」
「ベッド」
「机」
「出口」
休憩時間が開けると、焦った人々が口々に言うが、なかなかルールが開示されない。
周りに流され、焦り始める自分に気付く。
間違いを恐れていることは分かっている。
―――「主催者側の気持ちになればいいよ」
鈴木の不敵な笑みと言葉が思い出される。
そもそも主催者に気持ちがあるのか、あってもこんなゲームを作るような主催者の気持ちを海斗が理解できるものなのか。
全体に違和感があるのは事実だ。
だが、それを考えるのは、今日一日で正解を出してからだ。
振り返る。
自分の白いコンテナ。
「…コンテナ」
『ピコーン』
『レ **コンテナ**への破壊行為はルール違反であり、ゲーム外の時間においても即敗者となる』
安堵する。
今日はこれで一日過ごせるだろう。
……本当にそうだろうか。
正解を得たはずなのに、もやもやとすっきりしない。
昨日と同じ条件で三日目を迎えられる気がしない。
そんなの、二日目で勝者を選別できるわけがない。
ちらり、と麻琴や鈴木を見る。
彼らならそれに気付いているはずだ。
それを開示しないということは、ある程度あたりをつけて、その上で他の参加者を蹴落としたいと思っている。
自分はどうだろうか。
自分のコンテナに戻って、改めて周りを見渡す。
何人かには海斗を睨みつけている人もいる。
喧嘩を売ってないのに、喧嘩を売られたと勘違いしている。
別にデスゲームも現実も変わらないじゃないか。
彼らのために自分が動く必要なんてない。
信頼には値せず、期待する人々ではない。




