05 赤く染まる違和感
「くそっ」
海斗は机に用意された食事をとりながら、一人悪態をついた。
食事の時間は休憩時間にとられ、皆が自分のコンテナに戻っていった。
ちなみに、鈴木はいち早くコンテナに入り、その扉を閉めていた。
多分、鈴木に悪い印象を持ったのは海斗だけではない。
「九個か…」
モニターは大きいが、文字を大きく見せるための巨大モニターだ。
全てのルールがモニターに収まるものと仮定して考えなければならない。
いや、それさえもルールかもしれないので、聞いてもいい。
あるいは、全部でルールがいくつあるかも。
白いが、これから生き残るなら、挑戦する回数にまだ余裕はある。
現状、正解している人はそんなに多くない。このままだと多くの人が脱落する。もちろん海斗も。
食事は一回目なので、一日三食とするとあと二回。
誰もが勝者になりたいので、白いコンテナを持つものは質問を飛ばすだろう。
『ギーンゴーン』
チャイムが鳴った。
コンテナの奥から、機械仕掛けの腕が出てきて食事を下げる。
デスゲームの再開だ。
* * *
「第二ゲーム!」
「主催者!」
「脱落!」
予想通り。
ゲーム開始直後、休憩中に考えられただろう単語が飛び交った。
しかし、当たることはなく、コンテナの色が変わっていく。
青い顔でうつむき、何も喋っていない人もちらほらいた。
おそらく赤いコンテナの人――もう間違えられない人々だ。
先ほど赤いコンテナが黒く変わるのを見てしまったから。
「キーワード!」
『ピコーン!』
新たなルールがわかり、海斗は顔をモニターに向けた。
『レ 各ルールには**キーワード**があり、それを当てれば、ルール全文が明らかになる』
よし、とガッツポーズをしているのはさくらだ。
「へぇ」
海斗は思わず関心してしまう。
最初から、生存意欲は高かった人物だ。
しかし、周りはそんなさくらを睨みつけていた。
もうルールが分かって喜ぶ参加者はいない。
「暴力!」
『ピコーン!』
次に現れたのは麻琴。
海斗は眉を寄せた。
『レ 参加者同士やコンテナへの**暴力**は、ルール違反であり、ゲーム外の時間において即脱落とする』
正解を勝ち取った麻琴の笑みは意地汚く、周りからの睨みを受けて満足しているようだった。
ルールを当てることが、他者を蹴落とし、自分が生き残る方法。
このままだと麻琴が全ての正解をとっていくかもしれない……。
* * *
「兄ちゃん、調子悪そうだなぁ!」
休憩時間、コンテナに座っていると麻琴に話しかけられた。
海斗が表情を変えずに見上げると、得意げな麻琴が見下ろしていた。
直感でわかる、こいつは手当たり次第に声をかけている。
「俺が潰そうとしているルールのキーワードってやつを教えてやろうか?」
他人を煽る方策らしい。
「俺と手を組むってんなら、一緒に勝者になろうぜ」
「…考えておきます」
「ちっしけてんの」
舌打ちされてまた他の人に声をかけに行く。
何人かは助けを求めて彼の下にいるようだ。
だが、本当に守ってくれるのだろうか。最後まで?
今までどれだけ他人に期待して信頼して裏切られたか、自分がよく分かっている。
それに……己の中にある根拠のない自信にも気付いていた。
「ん?」
視線を感じて、その視線を追う。
麻琴の傘下に入ったものの群衆の中から、一対の瞳と交差する。
「渡辺、さん…?」
さくらが静かな目でこちらを見ていた。
さっきまでの感情豊かな瞳とは反対に、何の感情もこもっていない冷たい目。
しかしそれは一瞬で、目が合うとすぐにそらされた。
海斗には違和感だけが残った。




