04 裏切られる期待
「はぁ」
誰も喋らなくなって数十分後。
再び鳴り響くチャイムと共にぷつり、とモニターが消えた。
誰かが声を出しても反応することはない。
少しずつ冷静を取り戻した人々はこそこそと喋り始めた。
海斗は自分のコンテナの入り口に座り込み、周囲を眺める。
そもそもなぜこんなデスゲームに参加することになったのか、まるで見当もつかない。
参加者に顔見知りはいないようだし、主催者に思い当たる人はいない。
いや、海斗が自覚していないだけで、どこかで恨みを買っている可能性は残る。
「ん?」
一カ所だけ、人が集まる場所がある。
中心にいるのは、例の長身長髪の男だ。
「…行ってみるか」
情報は知っておきたい。
興味が無いフリをしながら、その集団に近づく。
「鈴木さ~ん!どうしてそんなことに気付くんですか~!」
どうやら彼は鈴木というらしい。
取り囲んでいるのは女性が多い。
男性もいるが、ニコニコと壁を感じさせないように鈴木と喋っている。
やはり権力者なのだろうか。
「冷静になって考えるんですよ」
鈴木はゲームに参加しているときと変わらぬ声色だ。
「感情に流されないように、気をつけましょう」
「鈴木さん!次はどんな事を聞こうとしてるんですか?」
「このように休憩があるのは確かですが、ゲームの制限時間は明らかにされていません。このあたりは聞くべきでしょうね」
「第二ゲームはあると思いますか?」
「さぁ、どうでしょう。聞いてみてもいいかもしれませんが、いかがでしょう」
鈴木は他の人の質問を交わしていく。
頭がいい人なのだと分からせられる。
「優さぁん!このデスゲームで重要なのは何だと思いますか?」
記憶にある声が聞こえて、思わず目線を走らせた。
見れば、最初に声をかけてきたさくらが鈴木にすり寄っていた。
「そうですね…」
鈴木は微笑みをさくらに返していた。
男なのに、どきりとする笑み。思わず見とれてしまう。
「このルールを作った主催者の立場に立つことじゃないでしょうか」
「さすが優さん!あったまいいー!」
きゃあきゃあと女性達が盛り上がる。
なんだか気分が悪くなってきた。
海斗はゆっくりと自分のコンテナへと振り返った。
鈴木の視線がその背中をなぞった。
* * *
『ギーンゴーン』
海斗が自分のコンテナ前に戻る頃に再びチャイムが鳴り、モニターの電源がつく。
休憩時間の終了だ。
他の参加者も冷静にモニターを眺めた。
チャイムが鳴り終わる頃、カツカツ、とハイヒールをならしながら、鈴木が前にでた。
「制限時間はありますか?」
沈黙。
鈴木は顔色を変えずに己のコンテナを振り返った。
丁度、白いコンテナが緑色に変わったところだった。
どうやらそれが鈴木のコンテナのようだ。
そして、制限時間の事項はない。
「休憩時間について」
『ピコーン!』
コンテナの色は変わらず、代わりに待ちに待った電子音が鳴った。
『レ ゲームは90分間ごとに10分間の**休憩時間**を挟む』
何人かが、ほっと息をつくのが聞こえた。
さすがの鈴木も横顔に安堵がにじんでいた。
「雑談はどうですか?」
『ピコーン!』
『レ ゲーム時間中は**雑談**をしてはいけない』
頭の良い人だ。
皆が知りたいと思うルールを開けてくれている。
脱落が怖くて話せない人々の代わりに動いてくれているようだ。
ならば乗っかるに超したことはない。
海斗が頬杖をついた瞬間、鈴木のくちびるが弧を描いた。
「正解していないもの」
『ピコーン!』
嫌な予感がして立ち上がった。
鈴木は満足した笑みを隠すことなく、踵を返し、自分のコンテナに入っていった。
『レ 一日目に一度も**正解していないもの**は脱落する』
忘れてはいけない、これはデスゲームだった。




