表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称『女の味方』は信用ならない  作者: ひつじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/5

余計なことを囁く先輩

お姉様とエステル様が声を揃えて「「うわぁ……」」と言った先輩の発言については、私とリヒト様の間でも意見を交わし合うことになった。


お友達は別の令嬢とお茶をしていたようだが、相手が所用で先に帰宅した後、優雅に残りのお茶を楽しんでいた。

お互いに気付いたので手を振り合ったが、わざわざ席を移動するようなことはしなかった。

そこへ、先輩がやってきたのだ。


「初めまして。あなた、彼の婚約者でしょう?」


ひとつ上の先輩に尋ねられ、頷くと例の発言を告げられていたのだった。

お友達は目を丸くし、そのあと少し俯いて「……ご親切に、ありがとうございます」と呟く。

先輩はいたく満足げに笑った。

「何かあったら、遠慮なく言ってね!私、令嬢達を応援したいの!」

そう高らかに宣言すると、先輩は立ち去った。

お友達はしばらく俯いたあと深いため息をつき、まだ残っているお茶をそのままに席を立った。

何も声を掛けられず、リヒト様と顔を見合わせる。


「……今のセリフ、セシリス先輩ならどう思います?」


リヒト様に訊かれ、私は首を傾げた。

「今の、と言うと先輩の言葉?」

「そうです。仮に僕がセシリス先輩の婚約者だとして。他の人から『リヒトがあなたの悪口を言っていたが私は否定した、私は貴女の味方だ』と言われたら」

リヒト様が婚約者……その言葉がフワフワと浮き上がるけど、今は質問に答えないとね。

リヒト様が私の悪口を言って、他の人がそれを否定した……うーん。


「まずはお礼?」

「お礼」

「否定してくれたことに」

「そうですか……」

「それからもうひとつお礼ね」

「うん?」

「教えてくれてありがとう、って」

「……はい」

「その後、リヒト様の元へ行くわ」

「はい??」

「どんな悪口を言っていたのか、どうして悪口を言ったのか。教えてくれた方も知っているかもしれないけど、ご本人に尋ねるのが一番確実だと思うの」

「まあそうですが、はぐらかされるかもしれませんよ?」

「まあ、リヒト様は私の質問をはぐらかすかもしれないの?」

「いえ、そういう訳ではありませんが」

「いいわ、はぐらかされたら徹底的に調べるから!リヒト様と教えてくれた方、どちらが本当なのか白黒付けます!」


ビシ!と言い切ったら、それまでも震えていたリヒト様が大声で笑った。

「せし、セシリス先輩、発想が面白過ぎます!」

「ええぇぇ?」

そんなに面白いこと言った?とは思ったけど、大笑いしているリヒト様は珍しいので、そのまま笑顔を堪能した。



◆◆◆◆◆◆◆


「いや、ホントに精神力強過ぎ。なんなのあなた」

「なんなのってなんですかお姉様!」

「シャーロットにも見習ってほしいわ……」

「ーー今気付いたけど、この縁が進んだらシャーロットとセシリスが義姉妹ね……」

「……シャーロットがこんなに濃い親戚との付き合い、耐えられるかしら……?」

「濃い?ですか?」


◆◆◆◆◆◆◆◆



ひとしきり笑ったあと、リヒト様はご自分の見解をお話しになった。

「僕はセシリス先輩ほど素直に聞きに行けないと思います。なので、報告者に対して『余計なことを言ってくれた』と恨みます」

「まあ」

「自分がフォローした、と言うお手柄報告もどうかと思いますが。何より、誰かが僕の悪口を言っていた報告など、まったく僕のためになりませんよね?僕とその方の仲を悪くしようとしてるとしか思えません」

そう言われて考える。

私はリヒト様のところへ突撃するつもりだったけど、もしリヒト様がなんらかの事情で捕まらなかった場合、『リヒト様が私の悪口を言った』という話だけが残るのだ。

お会いして話し合うまでは、モヤモヤしている気がする。

「そうね。事実を確認するまでの間、悪い考えばかり浮かびそう」

私がそう言うと、リヒト様は頷いた。


「現に、先程のセシリス先輩のお友達は、大変浮かない顔をしておられました。婚約者に聞くのか聞かないのかはわかりませんが、間違いなく憂いてることは確かです」


彼の言葉には同意だ。

立ち去る彼女の背中は少し丸まっていた。

「……バジュスーレ先輩は、どうしてあのようなことを彼女に伝えたのかしら?」

ふと疑問に思ったことが溢れた。

リヒト様を見ると、ニコと笑んでくれる。


「女生徒間の、地位争いでは?」

「地位争い??」

「グリフィス嬢が卒業された後、女生徒の間でリーダーシップを取る方が決まってないと聞いてます。バジュスーレ先輩は、他の令嬢方に『味方である』と認識を広め、女生徒達を牛耳りたいのではないでしょうか」



◇◇◇◇◇◇◇


「グリフィス嬢って……」

「ミュリエル様のことよエステル」

「そうよねぇ?!」


エステル様がテーブルに突っ伏してしまった。

お姉様とエステル様は、アイゼンバーグ家に嫁がれたミュリエル様よりお招きを受け、定期的にお茶会へ出席している。

私も行きたい!と主張しているのだけど、卒業するまでは駄目だそうだ。けち。

それはそうと、エステル様の悲痛な様子に驚いて目を丸くしていると、お姉様がエステル様を慰めた。

「名前が出てきただけで、何も命じられてないわよエステル」

「はっ!……そうねクラリス、御名をお聞きしただけで取り乱してしまったわ。セシリス様も驚かせてごめんなさい」

エステル様が姿勢を戻し、何事もなかったかのように振舞う。

切り替えの速さに感心してしまった。


「ミュリエル様が学園の女生徒の間でリーダーシップを取っていた。バジュスーレ嬢は、その後釜に座りたいと言うことで合ってる?」

「合ってます。とは言え、リヒト様の独自の見解によると、ですが」

「まあたぶん、当たってるわよ腹黒の読みだし」

「そうね」


なんだか、リヒト様=腹黒、が物事の理由になってるような?


「そう、それで『女生徒の味方』を標榜してるのね。行動的には余計なお世話としか思えないけど」

「セシリス様のように即行動出来る令嬢なんて、少数派よね。お友達は揉めなかった?」

「揉めました。」

「「ですよねー」」


背を丸めて帰ったお友達は、婚約者に問い質しもせず悶々と過ごした結果、婚約者を避けるようになっていた。

訳が分からない婚約者が業を煮やし、他クラスまで乗り込んでくる騒ぎとなったのだ。

「お友達は教官立ち会いの元で婚約者と話し合い、どうにか仲直りをしました。その騒ぎでバジュスーレ先輩が彼女に囁いた事実が取り沙汰され、婚約中の人達からは警戒されてます」

「そうなるでしょうね」

「本人に罰とかはなかったの?」

「実際の悪口を言った訳ではなく、行動だけ見たら善意とも取れますので、罰は発生しません。その代わり、生徒間では噂になってます」

「それはそうね。それで大人しくなったの?……待って、そう言えばこの話の最初って……」

お姉様が気付きこちらを見た。

正解、と私は頷く。


「婚約者のいる生徒には警戒されるようになりました。なので、現在婚約者のいない生徒に話し掛けるようになったんです。それこそ、私とか」


◇◇◇◇◇◇◇◇


「ムーサルク嬢、少し良いかしら?」


一人で図書館に向かっていると、バジュスーレ先輩が話し掛けてきた。

「バジュスーレ先輩。何か?」

「クロエ、でいいわ。私は令嬢達の味方だから、そんなにかしこまらないでちょうだい」

そう言われたら、「では私もセシリスと」と言うべきなのかもしれないが。

これまで交流のなかった令嬢を、『女生徒の味方』と言うだけで信用することはできない。

貴族の笑みで流した。


「何かご用でしょうか?先輩」

再度促すと、バジュスーレ先輩は声を潜めて囁いた。



「あなた、最近ワルロー子爵令息と一緒にいるでしょう?彼、三男だから婿入り先を探しているのよね。ムーサルク嬢も条件次第では狙われるから、気を付けてね?」



◆◆◆◆◆◆◆


「「全力で、余計なお世話!」」

「ですよね、ハイ」


◆◆◆◆◆◆◆





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ