7話「紫色の空」
目を閉じていても、瞼越しに届いていた光がすぅっと弱まっていくのを感じる。
眉間に込めていた力を少しずつ抜き、ゆっくりと目を開いた。
(あ......)
先ほど目を覚ました部屋、魔界と呼ぶには小綺麗だった部屋とは違い、まさにその呼び名にふさわしいような景色が僕を出迎えた。
夜...という訳では無いはずだ。
これと言った明かりがあるわけでもないのに、辺りを十分に見渡せる。
空は夜のように暗い色ではあった。
しかし、僕の知っている夜とは違う、妖しい濃い紫色が空を支配していた。
そして、その雰囲気に変にマッチした、整備された道が一本、僕の視線の先にすぅっと伸びており、奥の方には町明かりのようなものが見える。
(あれが、きっと僕が奴隷として過ごす町なのかな......)
戸惑い、緊張、恐れ、不安。
思いつく限りの不安定な感情を表す言葉のどれもが、僕にぴったりだった。
「おい」
グアンの声に体がびくりと反応する。
「どっち見てやがる、こっちだこっち」
声のした方に慌てて振り向く。
「うわっ!」
そこには、とても大きな鉄の門、そしてその門構えに相応しいほどの大きな城。
そしてその門の両脇に、グアンのような人間に近い姿とは違い、真っ黒な毛におおわれた二足歩行の化け物が、門を守るようにして立っていた。
魔物とでも呼べばいいのだろうか。
面食らっている僕を、感情の読めない瞳がじっと見つめている。
「ほら、入る前からビビってんじゃねぇ」
そう言いながらグアンは首をクイッと動かし合図を送ると、その魔物は、大きな門を二頭がかりでゆっくりと開けた。
その先には、これまた大きな庭が広がっていた。
そしてやはり僕の目を引いたのは、その庭の先にある大きな城だった。
ラスボスでも待ち構えていそうな、このおどろおどろしい空にピッタリの城が僕を見下ろしていた。
「ボサッとすんな、行くぞ」
ここに来るまでに、何度もこいつの後ろに着いていったけれど、今回は一層、気後れした。
雰囲気こそ魔界的ではあるが、立派な城には変わりないし、生きていた頃にもこんな城に入ったこともなければ、見たこともなかった。
どんどん遠ざかるグアンの背中。
このまま見送ってしまいたかったけれど、門番の魔物が、またあの目で僕をじっと見ていることに気が付き、またしても逃げるように、その背中を追いかけた。
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