3話「終わりと始まり」
さんざん考えた。
こんな生活とはおさらばして、無になりたかったはずだった。
あともう少しで、そうなれると思ったのに、極楽浄土を求めてしまった。
あぁ、もう痛いほどわかっていたはずなのに。
僕にとっての期待とは、裏切られるためだけに存在しているのだと。
「てなわけだ。こいつの魂は俺が管理するぜ。文句ないよな?」
「わ、わかりましたぁ......」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。僕の意思はどうなるんですか?」
「意思だぁ?その意思ってやつが今から死ぬことを選んだんだろ」
「そりゃそうですけど...今の話を聞いて考えが変わったというか......」
「あぁ、そりゃご愁傷様。俺たちがあんたの前に現れた時点で、もう死からは逃れられねえよ。」
「そ、そんな!」
冗談じゃない。
未練など何もなかったはずだけれど、あまりにも沢山のことが起きすぎた。
平穏のために望んだ死だったのに、こんな展開になるなんて......
恨めしいような気さえしてきた。
どうしてこんなわだかまりを運んできたんだ。
恨むような、悲しいような。
今どんな表情をしているのか、自分でも分からなかったけれど、そんな気持ちを込めた視線を天使に送る。
「ご、ごめんなさい!」
そう言いながら、天使はまばゆい光を放ったかと思えば、すっかりその場から消えてしまった。
「全く、お前に変な希望を与えるだけ与えてトンズラこくたぁな。どっちが悪魔だか分かりゃしねえ」
もう何転したかも分からない頭をまた働かせる。
(そもそも魔界ってなんだよ。そっちでは何をさせられるんだ。何もかもから解放されたかったから死を選んだのに!)
「や、やっぱり無理ですよ!色々起こって、すっかりそんな気は無くなっちゃいましたから!」
「心配しなくていい、俺が送ってやるよ。得意なんだ、悪魔だからよ」
「え......」
いつの間にか、奴の手には大きな鎌が握られていた。
送る、という言葉がこの場合何を意味するのか。
それはつまり、死。
ラグを置いて理解したころには既に、僕の胴と頭は繋がっていなかった。
ゆっくりと床が近づいてくる。
首を落とされ、絶命に至るまでのほんの一瞬が、まるでスローモーションのように、まだ意識の残る僕の目に映る。
初めて客観的に自分の体を見た。
この頭が乗ってあったはずの首から、血が勢いよく噴き出ている。
ドンっと鈍い音が、聞こえたような、聞こえなかったような。
ぐるぐる回る視界で、切り離された僕が、床を転がっていることを知らせてくれる。
ブラックアウトしていく僕の目に最後に映ったのは、僕の首を刎ねた男の、生き生きとした表情だった。
(なるほど、悪魔だ......)
(........................)
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