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LAST HERO JAPAN  作者: 悟
夏希編
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9/18

第9現象 糸使いフミヤ

 フミヤはあらゆる万物を糸で操る現象だ。僕がヒーローなりたての頃、地元で少し名があったのがフミヤ。


 最初の1年間は基礎を教えてもらった。僕自身の現象がとても難しい事から、フミヤの人形を使ってシミュレーションを行った。その結果として今の技がある。


 そして今、フミヤがわざわざ不利になるのに現地に来ているのは理由がある。今からする現象は負荷がかかるからだ。



 剣士人形3体と盾兵人形2体を合体させる。フミヤの人形合体は全て「グランドオーダー」と呼ばれている。今回は突進で敵を蹴散らすのを目的とする為に、いろんな姿の中から「パラディン」を選ぶ。


 「パラディン」とは全身鎧のケンタウロスの姿をした重装騎士人形だ。盾兵の大盾を肩に着用して、鎧を全体に散りばめる。剣士の剣を合体させて槍を作る。これで全身を固めて突進できる理想形態になる。


 ただ弱点として普通の人形の糸よりも合体することで太くなるので扱いづらい。細かい動きをするとフミヤの指がイカれるから少し動きにキレが無くなる。



 パラディンがハイヴに向かって突撃する。動きが鈍くなるとはいえ、直進ならば必要な操作はさほど無い。この時に大事なのは、僕が「風鈴の籠」てフミヤを守ってあげないといけないこと。


 フミヤ自身は棒立ちのため、狙われて集中が途切れると糸が切れて、合体が途切れてしまう。


 フミヤのパラディンが敵の作った人間壁を粉砕していき、誰一人寄せつけない。敵も果敢に攻めるがパラディンの鎧に傷がつかない。気づいた時には大館で突進されている、そんな状況。



伊月:こちらも避難誘導完了しました。


 よしきた。

 フミヤのパラディンが暴れている今、ここで僕と伊月さんと社員10人で一斉にハイヴを狙いに行く。当然部下を呼び寄せて人間の壁を作るが全てパラディンが突破していき、ハイヴのストックが無くなる一方。


ハイヴ:なんなんだよ…お前!


フミヤ:とある界隈では名を馳せていた者だ。大人しく投獄されるのが吉だぜ。


ハイヴ:この程度造作もない。


フミヤ:なら、攻撃モードに入る。


 フミヤの現象の人形はコストが決まっており、普段はコスト10まで。災害時や、都市崩壊レベルの危険度になればコストを40まで引き上げる。


 剣士人形1体  コスト1

 盾兵人形1体  コスト2

 スナイパー1体 コスト3


 重装騎士人形「パラディン」は剣士×3と盾兵×2で作られている。組み合わせを変えることでパラディン以外の形態になることも可能とする。


 この場合はおそらく…


フミヤ:軽装騎士人形「レギオン」


 レギオンは人型サイズの攻撃特化型の合体人形。現状剣士が3体・盾兵が2体・スナイパーが1体でコストを使ってるため、スナイパーと盾兵を消して剣士のみにする。


 その場合はコストが7回復することで剣士を合計10体にすることができる。レギオンは剣士×10で形成される。


 パラディンよりも小柄で小回りもいいが、パワーが減る。だがそれを補うのは他の剣士の剣を背中に浮かせてファンネルにする。

 

 ファンネルは自動追尾になっているため、フミヤが操作する必要はない。本体のみ操作して、その周辺に来た敵をファンネルで殲滅する。


 身軽になったフミヤの軽装騎士人形はハイヴの部下の数を減らしていく。こういった周りを巻き込まない系、ましろ見たいな現象だと一般人を巻き込まないから街中でも動きやすい。


 僕の現象は影響が小さいが被害は出るほどだ。ラルニの波状攻撃もダメージは少ないが建物等の耐久は減るだろう。



伊月:ナツキさん、転移位置を「かんまちあ」に設定しました。


 かんまちあ…ランニングができる少々大きい広場だ。


伊月:非科学現象組合の社員が場所を確保していますので、近隣の被害はないかと…


 何から何までありがとうございます、伊月さん。そうしたら、フミヤがハイヴの部下を全員倒している間にハイヴをかんまちあに連れ込む。


 部下のストック数を分からなくして、僕が「風鈴の籠」を使って仕留める算段ができた。


 フミヤ、ハイヴをこっちの鳥居に投げてくれ!僕はフミヤに大きい声で合図すると、合体人形のレギオンの一つのファンネルがハイヴを突き刺しながら鳥居に入り、転移する。


 僕も一緒に入り、入った瞬間伊月さんに消してもらう。こうすることでハイヴが戻ることもできないようにする。ハイヴの部下は減れば減るほど、ハイヴの身体性能は落ちていく。今なら技も使える絶好のタイミングだ。



ハイヴ:これで…追い詰めたと思うなよ。


 残念だが言い訳をしても無駄だ。ここはかんまちあ、天文館から離れている場所だ。多分お前の部下はフミヤが排除済だろうし、今のお前は一般人程度の強さなのだろう。


ハイヴ:近づけば良くないことが起きるかもな。


 僕がハイヴに近づこうとしたら伊月さんが止めにかかった。どうやらハイヴの部下はハイヴが範囲内にいなくなれば印がなくなる。


 無くなった印は次の一般人の項に印が付いてしまう。一定距離離れていないとハイヴに制御されてしまう。


 ちっ、そうなると近づけないのか。ハイヴの現象の範囲を特定しないと安易に攻撃できない。


 だが通信機から連絡があった。


フミヤ:ここから(天文館)から奴を撃つ。


ハイヴ:ここからどうやって撃つつもりだ、何キロ離れてると思って…


伊月:私がいれば距離など無意味です


 そうか、伊月さんの参道があれば天文館にいるフミヤの攻撃をハイヴに直接与えることができる。



ハイヴ:それは…僕が動いてないならの話だろ?


フミヤ:いや…俺のスナイパー人形は追尾式だ。ナツキ、「風鈴の籠」発動しろ!


 僕は言われた通り「風鈴の籠」でハイヴと鳥居を囲んだ。今のハイヴは一般人程度の強さしかないから空高くジャンプしたり壁を無理やり出ることはできない。


ハイヴ:くっ…


 フミヤはレギオンを解除してスナイパー人形で天文館の鳥居から撃つ。伊月さんの転移で玉をかんまちあの鳥居に移動させる。


 弾丸は転移後も推進力は変わらずハイヴの元にとんで行く。ハイヴはやっと焦りを見せたのか、「風鈴の籠」の壁に突撃して逃げようとするが残念ながら反発して逆に弾丸に当たってしまう。


 これて終わりだハイヴ。

 弾丸はハイヴの足に命中。その後もスナイパー人形の弾丸が鳥居を通ってハイヴに全弾当たっていく。


 アンチヒーローは原則として、殺すor捕虜にする…選択があるのだがハイヴは近くにいるだけで影響を与える現象であり、本人も反省する気がないため前者を選ぶ。


 先程まで部下に囲まれて意気揚々としていた時とは裏腹に、助けて欲しいと泣け叫ぶようになった。残念だが現象を悪目的で使う奴はこの世界には要らない。必要されないんだ。


 道を外した自分を恨め…ハイヴ。


 弾丸がハイヴの体全身を貫いた時には、息をしていなかった。確認のため、僕が近くに行って印ができるか試してみたが反応なし。


 無事に討伐完了することができた。ハイヴの死体は他のアンチヒーローに運用されないため、即刻「非科学現象組合」が受け取り、処分するかたちとなった。



伊月:お疲れ様でした、ナツキ。


フミヤ:急な任務だったが引き受けてくれたこと感謝する。


 

 この後、僕らは家に帰る。ましろはニュースを見ていて…


ましろ:なんでボクを呼ばなかったの?


 そう怒っていた。電話に出ないのが悪い。


 ラルニはあのイベントに最後まで残り配信をしていた。本人はノリノリで参加していたのでイベントが終われば帰ってくるだろう。


 伊月さんは「非科学現象組合」の本部に戻り、報告をしている。何やら今回も報奨があるらしいから、期待している。


 この古家の2階部分に家具をおきたい。予算的に1階のみ家具を置いて、2階は物置にしていた。本格的な拠点にするため、ましろと一緒に改装するぞ。


フミヤ:俺がいることを忘れるなよ。


ましろ:この人誰?


 なんでフミヤがいるんだ、もうハイヴの件は終わっただろ?


フミヤ:俺もお前らの「LAST HERO JAPAN」に入るつもりだ。


 マジかよ、ここで新メンバーか。フミヤは実力も歴も申し分ない。現象だって家に入れば操れる。しかも事務作業も人形がこなしてくれるなら伊月さんやましろの負担も減る。


フミヤ:どうなんだ?


 今日からよろしくお願いします。



 その日からフミヤが仲間に加わった。フミヤのパペッティアは思った通り家事や事務作業に重宝するようになった。


 フミヤの負担が大きいかと思ったが、剣士人形1体を操作するだけで、他の人形は命令に従う。操作人形が何もしなくても動くらしいので実質何もしてないのと一緒だとか。


 

伊月:仕事を取られた感はありますが、助かります。


ましろ:ねぇねぇナツキ。


 どうした、ましろ


ましろ:せっかく報奨貰ったんだしみんなで家具買いに行かない?


 確かに僕らの拠点の家具は暮らせるだけの必要最低限揃えてるだけあって、品質や性能は低い。ヒーロー活動をするうえで家具もとい…ベッドの新調は一大事だ。

 

 

 出かける用意をする。久々にラパンを使う機会が訪れた。鹿児島はまぁまぁ田舎だから家具が売ってる店なんて与次郎に行かないと。


 伊月さんの参道で一発で行けるよね?って思うかもしれないけど、おさらいとして伊月さんの参道は行った場所に鳥居を展開する。行ったことない場所にはできない。


 もう一つ大事なのが一定期間は残り続ける。これが一番重要で、現象者が壊すぶんにはいいけど、何も力を持たない一般人では壊すことができないんだ。だから一般人の邪魔になるということで使わない。


フミヤ:なぁ、ナツキ。この車だと4人までしか乗れなさそうだがどうするんだ?


ましろ:そうだよね、ラパンって4人乗りで少し狭いよね。


 ん…、ラパンもしかして使いづらいのか?僕は意外と可愛いもの好きだからラパンを買ったのだが、普段使いする時は確かに狭く感じる。身長が高ければ、椅子の高さを変えればいいけど、変えても運転しづらいのは確かだ。


フミヤ:なら、僕の車乗る?


伊月:フミヤは車をお持ちなんですか?


フミヤ:車ってよりか、僕の人形を合体させる感じだけどね。


 それってもしかしてブルーワー…


フミヤ:あれは公道で使うと迷惑だから、見た目も中身も普通の少し大きい車を形成させる。


 

 そう言ったフミヤは人形を合体させて形を整えていく。一つまた一つ組み上がっていく姿を僕らは見ているだけだった。


 見た目は黒色、ライトが青と少しダークな感じに仕上がったキャンピングカーが出来ていた。大きさは5〜7人が十分に乗れる大きさで、中も快適。まるで小さな家ができたようだった。


フミヤ:グランドオーダー…「ARK(アーク)」箱舟と呼ぶべきか。人形で形成されているから、瞬時に組み替え可能。


ましろ:本当だ、部屋みたいな内装。クーラーも付いているから夏でも涼しいね。


ラルニ:配信する時に机があるとないとじゃ全然違うんだよね〜。


伊月:運転はもしかして…


フミヤ:半自動、目的地を設定したら動いてくれるけど基本は僕が運転する。



 フミヤの合体人形「ARK」に乗り込む。少し大きなキャンピングカーが動き出し、目的地の与次郎に向かう。


 2085年ともなれば、空飛ぶ車とかあるんじゃないの?とか思う人もいるだろう。試験的に実装している国もあるが全てうまく言っていないのが現状。


 リニアモーターカーだって全国展開していないし、火星に住む…なんて言っていたけど何も進んでいない。いつの時代もそうだけど、「あと100年もすれば変わる」なんて言葉は嘘に過ぎない。


 

一般人「そこの人助けてくれや」


 少し公道を走っている時、路肩で停めていた1台の車があった。一般人がそこで助けを求めていた。


 キャンピングカーを停めたフミヤは車を調べると特に悪い部分がない。強いて言うならガソリンが無くなっていた事だ、これくらいならレッカーで運んでもらえばいいとフミヤが言うが…


一般人:ヒーローだったら助けてくれよ


 僕らはフミヤと一般人のやりとりを後ろから見ていた。確かに僕らなら何とかできるが本質はそこじゃない。


フミヤ:ヒーローだからって助ける義務が発生することはない。


一般人:頼み事を聞いてくれるのがヒーローだろ?


フミヤ:レッカー呼べばいい。


一般人:それだと金がかかる、何のためにお前らを呼び止めたと思ってるんだ。


 この一般人は助けられる前提で話を進めていた。レッカーを呼べば多少の費用は出る。だが、ヒーローに依頼すれば依頼料がかかる。どっちにしろお金はかかる。


一般人:このくらい善意でしろよ。


フミヤ:言っておくが、ヒーローは警察や自衛隊の様に一般人を助ないといけない存在じゃないから勘違いするな。


 フミヤの言うとおりである。「非科学現象組合」のヒーローは原則として一般人を助ける義務はない。


 ヒーローが一般人を助けるというのはアニメや漫画の影響が大きいだろう。どっかのヒーロー漫画も助けるのがどうちゃらこうちゃら…と言っていたが、自分でできる範囲はやってほしいものだ。



 こうやって一般人はヒーローを下に見ることが多い。一般人いてこそヒーローという職業が成り立つと勘違いしているからだ。ならアンチヒーローは一般人の方々で倒してください…と僕らヒーローは言うべきだろうか。


 ヒーローも一般人も平等な立場ということを忘れてはいけない。ということで、迷惑人間として「非科学現象組合」に悪人として登録して、無視することにした。


 後日警察から指導を受けると思うが、悪人が1人減ったと思うといい気持ちがした。

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