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LAST HERO JAPAN  作者: 悟
夏希編
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5/18

第5現象 事務所開設

 昨日の配信はある意味炎上した。

ダークヴェンダマイズの対処方法は多くのヒーロータレントや考察系に広まっていった。それと同じくして大人気ヒーローの「ラルニちゃん氏」がまさかの東京を離れて、鹿児島に移住した。


 在籍していた事務所を急遽辞めて来たことにより、ファンも焦っていたが「ラルニちゃんがどこに居ようと関係ないよね」というオタクの鏡の様な存在達のお陰で炎上は小さくして終わった。


 僕らはダークヴェンダマイズを倒した功労で200万円程「非科学現象組合」から報酬を貰った。世間はそれでも低いほうじゃないの?と声が上がるが、ダークヴェンダマイズは護送中での事故の為、倒したというよりも護送の手伝いをした…という認識になる。



 僕が住んでいたアパートから少し離れた少し古い一軒家に引っ越した。古い家をリノベーションするのが今の流行りにあったので、それに乗ることにした。


ましろ:乗るしかねぇ…このビッグウェーブに。


 それがいいたいだけだろ…


 ここが僕とましろの家兼事務所になる。事務所と言っても運営は僕とましろ、ラルニがたまに来るくらい。マネージャーは「非科学現象組合」から伊月さんという女性社員の方がわざわざ都会から来てくださった。


 「非科学現象組合」の多くの社員はヒーロー同様現象の力を持つ現象者(フェノム)。伊月さんの現象は…


 現象名:参道(シュラインゲート)

 分類:法則型現象

 危険度:Ⅰ


 空間に鳥居を生成して、鳥居を通過した対象を別地点へ転移移動させる。


 距離が近ければ即時展開出来るが、距離が遠ければ展開に時間がかかる。


 制約

 行ったことのある場所のみ

 精神集中必要

 鳥居破壊で展開中断

 


ましろ:あ、貴女が伊月さん?よろしくね。


伊月:ましろさんですね、よろしくお願いします。夏希さんは今いらっしゃいますか?


ましろ:ナツキなら古家のリノベーションの続きしてるよ。裏庭にいるんじゃないかな?


 貴女が伊月さんですね。遥々東京からお越しいただきありがとうございます。現在は家兼事務所をリノベーションしている途中なので家の中で涼しんでてください。


伊月:「非科学現象組合」の社員は全員現象者だということは知っているでしょう。私の現象は「参道」です。


 あぁ…、確か移動できるやつだよね。鳥居って人並みの大きさだったら裏庭に置いてていいから。


伊月:そう言ってくださるとありがたいです。鹿児島から東京への展開は時間もかかりますし、精神的にも苦労します。


 一応、事務所は家入ってから左側に行くと6畳のフローリングがあります。中はまだ家具はないので伊月さんがいい感じにピックアップしてくださるとありがたいです。


 事務所の隣の部屋は畳になっていまして、一応仮眠室兼自由室なので伊月さんも使ってくださいね。


伊月:了解しました。


ラルニ:かわいいラルニちゃんが来たよ〜♡


伊月:ラルニさんが大手事務所を辞めて電撃移籍したのは本当なんですね。


ラルニ:もしかして公式の社員さん?


伊月:「非科学現象組合」社員兼夏希さんの事務所マネージャーの伊月と申します。


ラルニ:会社では固くていいけど〜、ここではラルニちゃんみたいに柔らかくいこ?


 そうですよ伊月さん、この事務所では仕事として考えなくて良いですよ。ずっと硬い感じだと肩が疲れますし、僕らだって楽しく仲良くなりたいので。


 

ましろ:じゃあ、僕はパトロール行ってくるから。


 よろしく、ましろ。今日は午後から雨降りそうだから近所の人に声かけしながらお願いね。


ラルニ:ラルニも一緒に行ってあげる♡


ましろ:ナツキ、今日は特別長くパトロールするかもだから。


 

 ましろとラルニを見送ったあと、伊月さんと2人っきりになった。兜を付けてるからいいものの、内側の顔はどうしたらいいのだろう…と陰キャらしい答えが出てくる。


 知り合いの2人っきりと初めましての2人っきりは天と地ほどの差がある。伊月さんって見た目ヤリラフィーだけどスーツを着こなす男前な女性、僕は厨ニ心くすぐる全身白の鎧で中身はただの陰キャお兄さん。


 元から陽と陰で逆なのに話しかけたら怒られるかな。僕はa型だから何かと話題を作らないと落ち着かない。話さない時間があるとイライラしてしまう。



伊月:あのぉ…


 何なになに、伊月さんそんなに近づくの?真横にいられたら緊張してリノベーションしている手が止まってしまう。手汗が出て器具が、滑ってしまう。


伊月:何をやればいいですか?


 よかった…真横に来たから「あぁん?」なんてキレ気味に言われるのかと思った。


 でしたら近くのスーパーで、このメモを見て買ってきてくれると嬉しいです。


伊月:買ったあとは、調理してもいいですか?


 そこまでいくとお手伝いさんになるので、買ってくるだけで構いません。なんなら今から渡すお金が余ったら、好きに使ってくださ…


伊月:夏希さん…お金のやりとりはもっと慎重にしましょう。


 ははは…、すいません。


  伊月さんはスーパーに買い物に行ってくれた。もちろん車で。免許を持ってるのは僕と伊月さんだけでましろは持ってない、ラルニは…必要ないと言っていた。


 僕の車はけしてかっこよくはない。コスチュームが厨ニ病末期だが、車はかわいい系が好きだ。乗りやすさとかわいさ重視の結果、選ばれた乗り物は「ラパン」になっている。


 車なんて一生に一度の買い物と言ってもいいくらいだからケチは付けたくないし後から悩みたくない。だから慎重に選んだ結果ラパンになった。


 だがね、あんまり使わない。だって僕、浮遊できるし。まぁ、コスチューム着ない普段使いの時は助かってるよ。伊月さんだって転移できる鳥居があるとはいえ、転移先に場所を取るから、むやみに出せないし。


 そういえばちょうど4人乗りだから、出かけたり旅行するときなんかは役に立つかもな。



 だいぶリノベーションできたと思う。家の中はプロに任せたけど、庭くらいは自作したい。家は僕の部屋とましろの部屋、事務所に仮眠室。LDKと風呂トイレ別になってる。


 庭も広くて車も2台駐車できるから便利だ。立地もド田舎でもなくて、虫も出にくい。夏は庭でBBQをみんなでしたいものだな。



 お昼ごろに伊月さんが帰ってきた。荷物は冷蔵庫に入れてクーラーのついた部屋で涼しんでもらうことにした。


 ソファも新調したから座り心地抜群、テレビも少し大きめなのは、ましろのせい。ましろが動画を大画面で見たいからという理由で少し大きめのを買った。


 

伊月:私はこんな事してていいんですかね。


 いいんじゃないですか?ゆっくりしてても誰も困らないので。


伊月:私はマネージャーとして、「非科学現象組合」からの直接の依頼を夏希さん達に依頼することもあります。


 「非科学現象組合」からのってことは、普通の依頼よりも難しかったりする感じとかですか?市役所の依頼は日雇いの仕事の手伝いみたいな物ですけど…


伊月:依頼は主にアンチヒーローになりうる組織の殲滅・護衛任務・街の修復作業・その他諸々といった感じです。


 確かに悪人なら民間の警察でも、新人ヒーローでもできそうだけど、アンチヒーローになりうるなら話は別。ダークヴェンダマイズみたいな輩の場合は僕らで対処しないとってことね。


 護衛任務は有名人の護衛とかなのかな。何日も護衛することになる依頼だったら極力断るよ。僕は地元でヒーローしてたいし。


 街の修復作業は災害後が多いだろうね。僕の現象なら即戦力になるかもしれない。依頼が来たら真っ先に受けるよ。


伊月:その他諸々のことなんですが…


 それは僕も気になってた、具体的にはどんな依頼?


伊月:主に現象者になった・なりたての人に一定期間講師になってもらうことです。


 現象自体、自分でなれるものじゃないから突然現象者になる人もいるもんね。日常での使い方を教える活動ってことね、了解。


伊月:うまくいけば、そのままヒーローになる道も増えますからね。


 ヒーロー増加も視野に入れてるってことか。衰退してる今は、新しい世代のヒーローの存在が必要だからな。



伊月:ということで早速依頼受注していただきます。


 ………、今から?!


伊月:この方の在籍情報がこちらです。


 鹿児島県 霧島市

 現象発現から約10日が経つ

 自宅待機中


 霧島市と言ったら温泉が有名だよな。僕自身鹿児島出身だけど、実はまだ行ったこと無いから旅行気分で行ってみようかな。


伊月:この発現者はまだ少年ですので、日常生活で支障が出ない程度に扱えるようにする…又は非科学現象組合で保護するかの2択になります。


 それほど危険だということだな。僕は少年の情報が書かれた紙を見る。



 少年の名前は「雨宮奏(あまみやかなで)」歳は13歳。中学2年生に上がった頃に現象発現を起こした。


 当時の現場では学校の窓ガラスが割れて、生徒が複数名耳を押さえていたと記載されていた。恐らくは「音」か何かの現象だろう。


 ガラスを割るレベルの音を瞬時に出すとなれば…衝撃波に近いものか。今は無意識にそれを起こすなら、喋るときに一緒に出してしまう感じか?なら日常生活に支障が出るから対処しなければいけない。


 了解、今から行く。


伊月:裏庭の鳥居から正確な座標に合わせてあります。


 よし、とりま準備するものはコスチュームくらいでいいか。


伊月:何かありましたら連絡下さい。


 あいよ、じゃあ行ってきます。


 僕は伊月さんの「参道(シュラインゲート)」の鳥居で転移した。転移先の霧島市は結構平らな街並みで、街全体が一望できる。


 伊月さんからのメモでこの近くに住んでいるらしいが、どこにいるのだろうか。


 

 ここだと思った家の窓はガムテープで割れを固定してあった。現象発現から10日が経過してるから、家にも被害が出てるのだろう。急いで保護しなくてはいけない。


 インターホンを鳴らし、雨宮奏の両親が出てきた。雨宮奏の両親に非科学現象組合の者と伝えると部屋に案内してくれた。


 ドアの前まで来ると「こっち来ないで」と言われてしまった。まだドアノブを触っていないのに僕らがいることが分かるのか。それも音の影響なのか…


 僕は非科学現象組合の依頼で来ました、「エアスフィア」というヒーローです。雨宮奏君と話がしたいから、ドアを開けていいかい?


奏:あの、エアスフィア?ダークヴェンダマイズを倒したっていうあの?


 奏君が返事をしてくれたが、返事をするたびに音が漏れ出てしまい、振動が伝わってくる。両親には離れるよう言い、直接対面することになった。


 

 ドアを開けると部屋の中は音の衝撃で殆どが割れていた。奏少年は割れた本棚近くでぐちゃぐちゃの本を読んでいた。


 奏少年、僕に君の現象発現について教えてくれないかな。


奏:それだとエアスフィアの耳が…


 気にする必要はない。君の事情を知りたい、話せることは全部話してくれると助かるよ。


奏:それなら…


 奏少年は話し出した。

 現象が発現する前は学校でヒーロー特集を見て、友達と会話をしていた。いつか自分にも現象が発現したらいいなと思っていたそう。

 

 そんなある日、いつもの様に友達と会話していたら喉のほうが「ゴワッ」とした感じがあり、声を出すと衝撃で教室の窓ガラスが割れてしまった。会話していた友達が耳を抑えて倒れていた。


 声を出すと現象が発動してしまうと分かった今は、学校に行くのを止めて自宅リモートで通っているらしい。


 奏少年はこの力を制御して、また普通に話せるようになりたいと言った。



 ありがとう、全部話してくれて。


奏:いいの、エアスフィアだけが僕の話をは全部聞き取れたから。


 僕は奏少年を近くの広場に連れて行く。一旦どの程度の威力なのか検証するためだ。なるべく人けが無い場所まで行きつつ…


奏:ここらへんでいい?


 いいよ、思いっきり叫んで。


奏:あぁぁぁぁ!!!


 奏少年の音の衝撃波を受けると、少し足が後ろに引きずられた。なるほど…結構な威力だ。


 そしたら次はゆっくり小さく叫んで。


奏:ぉぉぉぉぉ…


 もちろんこれにも意味がある。奏少年の部屋に入るときに、僕の存在が認知できていたことだ。つまり奏少年はコウモリの反響を利用した「探知」が使えるということだ。


 これを無意識でやってると思うと、信じられない才能だ。探知なら災害時に重宝されるだろう。音の反響で狭い場所でも居場所を特定できる…こんな支援特化型の現象は僕の中では初めてだ。


 それに支援だけじゃない。いざとなれば敵を吹っ飛ばす程の衝撃波を出すことができる。奏少年は支援と戦闘の2つの役職を持つ。


 大体の検証はできたから、ここからどうやって日常会話ができるようになるかだ。


 こういう声を出す系の現象は「呼吸法」でどうにかなる。まずはどのタイミングで音が発生するのか詳しく調べてみる。


奏:喉に何かあるような感じがする。


 喉か、喉には肺に空気を入れる器官と食道につながる器官の2つがある。恐らく奏少年には第3の器官があるとみた。とすると食道に逆流しないように弁があるとするのなら、練習次第で第3の器官の弁も作用するかもしれない。


 よし、ここからが腕の見せどころだ…



 一方、自宅の方では…


ましろ:ただいま!今日はいっぱいお手伝いしたよー!


ラルニ:配信映えするニュース聞きたい?


伊月:夏希さんは今、依頼をしているので今日は帰ってきません。


ましろ:そんなぁ…

伊月(いつき)

一人称:私 年齢:24歳 165cm・54kg

紫フェードカット長め 褐色

趣味:旅行・神社巡り

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