第4現象 金級の意地
ラルニが動き出した。思った通り、ラルニは「波状攻撃」をしてくる。踊ることにより、足元からリング状の波が出てくる。この波は不規則に高さを変えることにより、ジャンプしてもダメージを受けるようになっている。
これだけなら地面を警戒して避けるだけで済むが、金級ならこれだけの攻撃では済まないだろうと僕は考えた。
ただそれとドローンが何の関係があるのか理解するのが遅れてしまった。
ラルニ:皆の視線をラルニちゃんに向けて!!
視聴者に指示を出した。
ラルニの現象は
現象名:視線
分類:精神型現象
危険度:Ⅰ
他者に見られる・認識されることにより、自身の波状強化+出力上昇する。視聴者の同接が増えれば増えるほどに強くなる。
視線を浴びることにより、蓄積ダメージも段々軽くなくなってくるってことか。一度どんなものなのか受けてみるか。
少し電気が走るような痛み、電気風呂に入ってるくらいの感覚のため、気づかない所で体力ゲージが無くなってる…そういう事も出来そうだな。
一瞬、この攻撃を受けたら酔う感じがした。相手の動きを鈍らせる鈍感のデバフもついているのだろう。並のヒーローじゃ、波状攻撃を受けた時点で酔って、鈍感になって立てなくなり、体力ゲージが無くなるというのがオチだろう。
だが、対戦相手が悪かったようだな。僕は現象によって浮遊できる。この波状攻撃では僕にダメージを与えるのは不可能だろう。
ラルニ:お兄さんは空を飛べるんだね♡だけど…ラルニちゃんの「ラブリィ・ビート」は空にも攻撃するよ〜!
ライブ会場のステージからデカいスピーカーが複数台投入された。
スピーカーは空に向けてラルニの動きに合わせて、スピーカーから「ラブリィ・ビート」が不規則に出てくる。これにより空への侵入を防ぐことができる。
ラルニ:これが「ラブリィ・ビート」の二段階目「スカイライブ」!!
空の波状攻撃により移動を制限するとは中々やるな。だがそれでは決定打にならない。ここまでの流れを見るに、ライブ会場のステージを本当のライブ会場にしようとしている気がする。つまり、この後にくる三段階目は予想できる。
僕は浮遊で華麗に「ラブリィ・ビート」を避けていく。不規則とは言え、パターンがある事が分かる。ラルニ自体が会場のステージ付近から出ないことが理由に挙げられる。
この「ラブリィ・ビート」は行動範囲が決まってる。現象本人の行動を制限して遠距離までダメージを与える。僕はそう踏んだ。
ラルニ:みんなの力をラルニに分けて、盛り上がろう♡
ステージの煙幕とともに現れたのは人型のロボ。そのロボはラルニの後ろでバンド演奏を始める。ロボは複数、先ほど力を分けて…と言っていたが視聴者の増加によりライブ会場に視聴者を具現化させたのだろう。
ギターが2人・ドラムが1人・キーボードが1人。それぞれがラルニの「ラブリィ・ビート」を出す。本人よりはダメージが弱く、波状のスピードも遅いが全体的に波状することにより、完全に逃げ場をなくしている。
ラルニ:これがラルニの本気の本気!!「ラブリィ・ビート・メンバーズ」
恐らくこれがラルニの最終段階技だと見込んだ僕はとある技を使う。先程まで浮遊だけで避けていたのには意味があり、この「ラブリィ・ビート」を完封できてしまうので黙っていた。
ラルニ:お兄さん、逃げてるだけじゃ、つまんなーい♡
逃げてる。確かにラルニとラルニの視聴者と公式チャンネルから見てる視聴者は僕が一方的に逃げてるようにしか見えない。
僕は「風鈴の籠」を使う。これによりラルニの視線を遮断することにより、大幅な弱体化。「ラブリィ・ビート」のダメージも殆ど無いようなもの。
ラルニ:……えー?そういう感じ〜?
ラルニは笑おうとしたが声が震えていた。さっきまで自分のテリトリーで最高潮まで行って勝ちを確信したのに、負ける一歩手前まで落ちてしまった落差に驚いているのだろう。
「ラルニちゃんの降参により、現象決闘戦は銅級…エアスフィアの勝利です。」
公式の合図で決闘が終わる。そのタイミングでバーチャル空間から外れて元の位置に戻る。
ラルニ:そんなにラルニちゃんをいじめて楽しい?
コメント欄
そうだそうだ!
配信映え、最悪すぎる!
もっとラルニちゃんのライブ見たかった!
僕は勝者なのにコメント欄では色々と叩かれていた。やっぱりネットは色んな人がいて怖いと感じた。
ちょうどましろが強化パーツを組み終わり、会計を済ませてこちらに来た。来るなり、ラルニに気づき興奮していた。
そっか、ましろはラルニの大ファンなんだよな。自分の好きな有名人が目の前にいるって考えると嬉しいよな。
ましろ:ナツキ、なんで呼んでくれなかったの?ボクがラルニちゃんのファンだってこと知ってるでしょ?
ラルニに会えた興奮ともっと早く呼んで欲しかった不満の2つの顔をしていた。とりあえず、ましろが強化パーツに悩んでいた最中の出来事を話す。
ラルニちゃんが有名なアンチヒーローを倒した僕らを探しに来たこと。僕とラルニちゃんが現象決闘戦で勝負して、見事ラルニちゃんに勝ったこと。
情報量の多さでましろは白くなってダウンした。あまりの情報量で疲れ切ったのかな?
ラルニ:このあと時間あるなら配信出てくれない?
ましろ:ナツキ、やろう!これはラルニちゃんと近くに…じゃなかった、ボクらの認知度が上がるチャンスだよ。
今なんか別の理由が聞こえた気がするが、気の所為だったことにしよう。
なんだかんだあって…
なんでラルニが僕のアパートにいるんだ?確か配信をしよう…と言ってたような気がするが、外じゃだめなのか?男の部屋に人気女の子ヒーローがいたら、それこそ炎上すると思うのだが…
ましろは見た目と声がそっちよりだからいいけど、僕に関してはガチでただの鎧男だから。不安も高鳴るまま、配信がスタートされる。
ラルニ:やっほー!!今日もみんなの視線を独り占め♡ 超絶かわいい配信ヒーロー、ラルニちゃんだよ〜!!
出会った時も似たようなことやってたけど、挨拶みたいなものなんだな。そういうの通ったことないから僕とましろは普通の挨拶になってしまいそうだ。
ましろ:どうも、みんなの視線を独り占めっ♪ ましろですっ!
えっ…ましろ、そっち系の挨拶できるの?
ましろ:ボクはラルニちゃんのメン限3年目の古参ですからね。
コメント欄
かわいすぎる
解釈一致
ましろちゃん推せる
ラルニコピーだw
ガチ勢きた
コメント欄の方では受けてるみたいだ。だがなましろ、君がそういう挨拶するとハードルが上がるのを知らないだろ。ただでさえ兜付けてないと人と話すのがまともに出来ない僕。
こんな鎧ガッチガチの見た目で、声が裏返ったりボソボソだったら第1印象終わりじゃん、どうしよう。
はい、どーも…。鹿児島でヒーローやってますナツキと言います…。
無難だ、これ以上ない無難な返事だ。ラルニとましろの口がポカンッ…としているが関係ない。僕は僕の挨拶をしたまでだ。
コメント欄
えぇ…
それはない。
流れっていうのをまるで知らない
早速批判コメント来た。分かっていたよ、こうなることを。
ラルニ:お兄さん、ノリ悪くな〜い?
ましろ:そうだよナツキ、ラルニちゃんに失礼だよ!
そんなに叩くことかいな。我、ゴツゴツの鎧男ぞ。キャライメージ壊したくないんだ。
ラルニ:今日は、あの凶悪犯のダークヴェンダマイズを倒した2人を徹底的にあばいていくよ!!
どう倒したのかを知りたいのか。家に帰る途中スマホを確認してたら、僕らのダークヴェンダマイズを倒したっていう動画ばかり投稿されていた。どれも似たり寄ったりで、どうやって倒したのかまでは説明されてなかった。
このラルニという奴はその情報を自分だけのチャンネルで上げることにより、他の考察系やヒーロータレント系の人の動画よりもワンランクアップした内容を提供できるというわけだ。
当然他の似たり寄ったりな内容とは違い、本人たちからの正確な情報を得ることで配信の視聴率や他の配信アーカイブの再生数の回転も伸びるというわけだ。
見た目に反してやってることは頭がいいと思うのだった。
ラルニ:みんなも知ってると思うけど、2人の現象について詳しく知っていこう♡
ほら来た、まずは僕らの情報からだ。公式サイトから見ればすぐに分かるけど、視聴者にその手間を省かせる…いい始まり方だ。それに現象の詳しい内容は記載されてない事が多いから、単純にヒーローオタクにはありがたい話になってくるのだろう。
ましろ:ボクの現象は連打です。
初手一撃を相手に与えると二撃目が敵の体の何処かに「的」として出てきます。この的に当てれば確実に二撃目が入ります。
それを繰り返していく感じです。ですが連打が続くにつれ蓄積ダメージは伸びますが、的の出る速度が上がるので、今の僕ができるのは最高「50連打」までです。
コメント欄
どこかの太鼓のゲームみたいな感じだな。
そのサイバーメガネってVRみたいで現象とマッチしてるのがGOOD!
ましろちゃんって可愛いのに戦いは男前だね。
ラルニ:ゲームをしてる感覚なのかな〜。コスチュームとマッチしてるから、ヒーローとして覚えやすそうだね♡
ましろ:憧れの人に褒められた(歓喜)
コメント欄
次は鎧男の方か
鎧のくせに武器を持ってないのが歪だ
ラルニちゃんと戦ったときも、よく分からない技で勝ったもんね。
ラルニ:ラルニちゃんもお兄さんの現象が気になる♡
ましろ:ナツキ…ここで言うの?
全部は言わない。
ましろ:そう…
僕の現象は大きく見れば「風」
基本的に風を使った技を持つ。ラルニ戦で使った技は「風鈴の籠」といってどんな広大なフィールドやギミックの中でも、強制的に一対一にすることができる。
風鈴の籠の壁に触れると内側に反発の力が加わるので調整したら、いくらでも相手を殴って壁に飛ばして、跳ね返ってきた敵を殴るという連鎖を引き起こします。
あとは「浮遊」です。単純に飛べます。最大2人までは運ぶことが可能です。なのでアンチヒーローが現れた際、すぐに駆けつけることができます。
コメント欄
か…、カッケェ…
剣を使わずして拳を使うのか
王道系な感じだから親しみやすさ抜群
ラルニ:お兄さんの現象ってTheヒーローみたいな感じで、ラルニちゃん好きだよ♡
コメント欄
ラルニちゃんの「好き」来たぁぁぁ!
久々の「好き」きた
やべぇ…俺に言ってる感じがして気持ちいい
なんかすっごいコメントばかりだけど、ましろ…どうなってんのこれ。
ましろ:ラルニちゃんのファンは「好き」という言葉に敏感です。いつも配信見てくれて好き!と言うのと同じで自分に向けて言われてる感じが、いいんですよ。
あぁ…説明ありがとう。ネットには色んな層が居ることをまた知った。
ラルニ:大きく見れば「風」ってどういうことなのかな〜。正確な内容って公式に伝えてない感じ?
その言い方で正解。僕の本来の能力的に説明が難しいから「風」にしてるだけ。
ラルニ:次は…みんなが気になっている、2人がどうやって倒したのか聞こう!
観測は相手の次の行動が分かる未来視と言うのは知ってると思います。この未来視で見れる未来は数秒先という事以外制限がなく、一回でその場の全員の未来を見ることができます。
通常…これを回避する方法は能力分類の第三精神型現象。洗脳や幻覚等を与える方法です。残念ながら、この洗脳と幻覚の様な現象を持っているヒーローは全員アンチヒーローであることから選択には入ってません。
ダークヴェンダマイズを過去に捕まえたヒーローは数十人規模で捕まえたと言っていました。いくら全員の未来視を見れるからとはいえ、頭に入る情報の処理ができず動きが数秒鈍くなる事が考えられます。
コメント欄
現状で他の考察よりもためになってるのなぜ?
やっぱり現場で戦うヒーローの言葉は違うな。
今の中堅ヒーロー達って過去の経験を重ねてるだけだから新情報助かる。
そこで僕がとった行動はラルニさんと同じ「風鈴の籠」を使ったことです。強制的に一対一の構図を作ることにより、相手の動きを制限したり、街の被害を無くすことができます。
ただ弱点として上下は塞がれてないので飛ばれたり、地面に潜られたら効果がありません。ですがダークヴェンダマイズは観測ができるだけで、他はありません。
調べたところによるとダークヴェンダマイズはアンチヒーローの指示役のポジションが多かったそうです。若い頃はヒーローと肉弾戦をするほど凶悪でしたが、今はその覇気が無かったのが救いです。
今回の場合、「風鈴の籠」で閉じ込めたのはダークヴェンダマイズと僕とましろです。空間を作るだけなので、味方が多い分にはいいです。
ましろ:急に閉じ込められたから、ボクもビックリしたよ。
ラルニ:でも観測を止めれるわけじゃないから、どうやって倒すの?
まずは、ましろがダークヴェンダマイズに向かって殴ります。当然殴る位置は未来視で見えるので引きつけるだけです。だとしても僕の行動は未来視で見えてしまいます。
ラルニ:そうだよね、決定打が無いからましろちゃんが疲れるだけだよ?
ここで僕は観測の「穴」をつきました。観測及び未来視は可視化できない攻撃に対しては反応できないのです。言葉の通り見えない攻撃なので未来でなんの攻撃を受けたのか対処しようがありません。
僕は風のような力でダークヴェンダマイズの動きを止めました。動きを止めることができるなら、最初からやればいいじゃんと思うかもしれませんが、この力は僕でも加減を見すれば危ない技なので慎重でした。
ラルニ:止めれたら、ましろちゃんのターンだね♡
ましろ:僕の50連打を打ち込みました!
当然動きを止めてるのでましろの連打の反動は止まります。ここで解除すると「風鈴の籠」に向かって反動で跳んでいきます。
先程も言いましたが「風鈴の籠」の壁に触れると内側に反発する作用があるので、僕らの方に跳んできます。
ましろ:飛んでくるダークをボクとナツキが交互に殴って、壁に飛ばして、反発したのをまた殴っての繰り返し…
2人で連携して殴る+「風鈴の籠」の条件下での連携技「風鈴連獄」をダークヴェンダマイズにぶつけて勝ちました。
コメント欄
理屈は分かったけど、未来視でも視えないってチート級じゃね…
こんな田舎に才能の原石いたのかよ
ラルニ:2人がよかったら…なんだけど、ラルニのお願い事聞いてくれない?
内容によ…
ましろ:はい!是非聞かせてください!
コメント欄
でた、ラルニちゃんのお願い事
絶対王政だもんな…
この流れで、何をお願いするんだろ?
ラルニ:ラルニも鹿児島に移住する♡
ましろ:え?
コメント欄
えぇぇぇぇぇ?!
ダメダメダメダメ!!
もしかして…ユニット組む気?
だとしてもラルニちゃんは俺たちのヒーローだよ!!




