第3現象 初めての連携
ダークヴェンダマイズは少しずつ近づいてくる。未来視を持つダークヴェンダマイズには銃も効かない。未来視で撃つ位置と軌道線が見えるからだ。
ダーク:さぁ…どう対処する、現代のヒーロー達よ。
ましろ:ナツキ、僕らの現象じゃ対処するのは困難だよ。僕の一撃なんて相手の懐に潜り込まないといけないから、確実に読まれる。
ましろの言う通りだ。直接ダークヴェンダマイズを狙おうとしたら、絶対未来視で避けられたり反撃される。かといって遠くから射撃した所で、未来視が発動して避けられる。
精神型のヒーローが来てくれたら一番いいけど、今ここにいるヒーローは僕とましろしかいない。なら、少しでも市民に被害が出ないように風の壁「風鈴の籠」を発動する。
「風鈴の籠」というのは強制的にヒーローとアンチヒーローだけの空間を作る技。
風鈴の籠から出ようとしたら内側に弾き飛ばされるので、この技が切れるのを待つか現象者を殺して解除するかの選択肢しかない。戦いにおける先手後手の意味をなくす技だ。
ダーク:俺を閉じ込めたとしても、有利なのは俺だというのは変わらないぞ。
お前は未来視をすることができる。未来視で見た攻撃を避けることができる。普通のヒーローにとっては天敵となる存在なのかもしれないが、籠に入っていると「回避」が制限される。
ダーク:制限など必要ない。お前らを相手するときは中心にいればいいのだから。わざわざ壁の近くで待つようなヘマはしないさ。
ましろ:ナツキ…動きを読まれてるっぽいよ。どうする?
ここで考えたとしても未来視で見られてるだけだ。もう少し、様子を見て隙を突く。
ましろ:了解、ボクが引き付ければいいってことね。
ましろはグローブをつけてダークヴェンダマイズに殴りかかる。ダークヴェンダマイズは未来視ですべての攻撃を避け続ける。
ダーク:鎧男、風の壁を縮める気だな。お前の考えが手に取るように分かるぞ。
風鈴の籠を縮めて強制的に弾かれるのを連続させる事も出来るが、読まれているか。まぁ、それだとましろを巻き込むからやらないんだけどね。
ダーク:華奢男も疲れが見えてきたぞ、現代のヒーローはこんなものなのか?昔のほうがアンチヒーローとしてもやりがいがあったぞ。
ましろ、このまま打撃を続けてくれ。お前の初手一撃が当たるようにするから。
ダーク:未来視でお前の攻撃など見える。
僕は右手で何かを掴む形を作る。
ダーク:仲間を巻き込んで攻撃するなんてヒーローとしてどうなんだ?
巻き込む?何を言ってるのか分からないな。僕が今しようとしてることが見えないんじゃないのか?
ダーク:未来視で見えない未来など、
固まってるようだけど、見えないんだろ?僕の攻撃は一定の風を利用するから風の動きが未来視で見えるのだろうけど、僕の本来の現象は「風」じゃないから視覚で判断できないんだよ。
ダーク:そんなのズル…
おっと…見えた?お前が今からボコボコにされる未来が。
ダーク:見えてない、見えてないぞぉぉぉ!
本来の現象は言えないから、技名は無しで君を止めるだけの技。動きを止めるだけだから敵の技を止めれるわけじゃない。だけど君の未来視は…
僕らに何も影響がないから、動きを止めてもデメリットがない。
ましろ、やっちゃいな!
ましろ:待ってたよ…この瞬間を!
ましろは初手一撃を入れる。 現象の連打が発動して二撃目が入る。敵の動きが止まってるので的の位置もあまり変わらない。サイバーメガネを装着して、三撃目を決める。
その後は太◯の達人の連打の様な速さのマッハパンチを決めていく。
ましろ:これが…ボクの最大…「50連撃」だ!
そして止める技を解除すると止まってた中で受けた蓄積ダメージが一気に来ると同時に反動で後ろに吹っ飛ぶが、風鈴の籠で内側に吹き飛ばされる。
ダークヴェンダマイズ…次の未来は見えたか?もう聞こえないほど、ましろにボコボコにされていた。
ダークヴェンダマイズが内側に弾かれると僕がダークを殴り飛ばして風鈴の籠に飛ばす。風鈴の籠に当たって、また内側に吹き飛ばされる。そうするとましろが連打して吹っ飛ばすというのを永遠と繰り返す。
この連撃の名を「風鈴連獄」と名付けた。
その後、風鈴の籠を解除する。ダークヴェンダマイズは流石アンチヒーローというのもあり、気絶で済んだ。警察に取り押さえられて収容されていく。
今回のアンチヒーローが「未来視」で良かったと思う。市民への被害も風鈴の籠で最小限に抑えることができたが、交通の被害は出てしまった。だからといって被害料をヒーローが払う必要はない。
さてと…帰りますか。ましろもちょっと疲れてるみたいだし、おんぶして家に帰る。
ましろ:ボクさ、今日頑張ったからご褒美欲しい。
ラルニちゃん…だったけ?そのフィギュアがあるからいいでしょ。僕も疲れてるからこのまま帰るよ。
ましろ:ご褒美、ご褒美!
子供じゃないんだからダダを捏ねない。今日は久々の本来の現象を使ったから慣れなくて疲労が激しいんだ。頼むから家に帰らせてくれ。
夕暮れ時、2人はアパートに到着。ましろをベッドに寝かした後、僕もコスチュームを脱いで風呂に入る。
あのコスチュームは見た目は厨ニ心くすぐるデザインだけど、当の本人は蒸し暑苦しくてしょうがない。だけどさ、ヒーローって見た目も重要じゃん。どうせなら、カッコいい地元のヒーローになりたい。
この一件で無名ヒーロー2名が地元鹿児島で一躍人気ヒーローになることをまだ知らない。
翌日
いつも通り朝6時に起床して朝飯を作る。僕は米派なので茶碗1杯の米と赤味噌を使ったナスの味噌汁。スーパーで安売りしていた鯖を塩漬けして焼く。
これが僕の考える理想の朝食だ。だが、ましろは菓子パンとミルクのみ。僕が和食を作っても食べてくれない。和食が嫌いってわけじゃなく、朝からそんなに食べれないのだそうです。
ましろ:朝からそんなに食べると太るからね。動画登校者たるもの、体型維持必須だよ。
そう言ったものの、菓子パンでは栄養が不十分だと思うんだけどな。
その頃の時間帯にテレビでは「ダークヴェンダマイズ大敗北」という特集が組まれていた。
ダークヴェンダマイズはアンチヒーローの中でも上位に入るくらい手こずる悪人だとヒーロータレントは説明する。
当時の映像を観てもらうと分かる通り、複数人どころか数十人規模のヒーローが集結してやっとダークヴェンダマイズの現象の「観測」を破ることができた。
だが、今回の件はたったの2人。しかも無名のヒーローが有名アンチヒーローを倒した。これは類を見ない快挙であるとヒーロータレントは言った。
だがナツキとましろはそんなニュースに興味もなく、パトロール巡回をしていた。
昨日間近で見ていた人達のSNS投稿やニュースの拡散により知らない間に名が売れていく。ナツキとましろは…
「なんか今日、市民の人たちが写真取ってくるよなぁ」
としか思ってない。
無名ヒーローしかいなかった鹿児島に名を挙げたヒーロー2名。この存在は他の無名ヒーローの憧れに変わっていく。
今日は服屋に寄る。
ナツキは用はないけど、ましろはある。この前のように2人で連携して敵を倒すためにはもっと速度が欲しい。
ならば強化パーツとしてグローブを改造する必要がある。なるべく軽量化しつつ、空気抵抗を抑えるように少し鋭く。
ましろが店員とグローブの事で話している間はナツキはとても暇になる。女の子の服選びが長いのと同じで、装備パーツ選びや改造は時間がかかる。
ふと、服屋の外を回っていると自撮り棒?を使って動画を撮っている人がいた。スマホに向かって何か話しているな。
なんでかな、見たことあるような気がするんだけど。どこで見たかなぁ…と思っていると自然に身体がその配信者に向かっていた。
ラルニ:やっほー!!現象界隈最強かわいいヒーロー!ラルニちゃんだよ〜♡
そうそう、ましろが好きなヒーローのラルニちゃんだよ。思い出した。有名配信者がなんでこんな田舎の方に来ているんだろう。観光でもしに来たのかな?
コメント欄
ラルニちゃん後ろから人来てるよ。
ラルニは後ろを振り向くと、大柄な白い鎧をまとった奴が立っていた。
ラルニ:えぇ!これ、どういう状況!
コメント欄
不審者じゃない?
ラルニちゃん逃げて!
この人見たことあるような。
ラルニ:そうじゃん、昨日アンチヒーローを倒した2人組の1人。
どうやらこっちの事を知っている様子。なんだってこんな田舎の無名ヒーローの事を知っているんだ?YouTubeで「ラルニちゃん」と検索すると55.6万人登録者がいた。
ましろと住み始めて、YouTubeの事を少し検索してたけど10万人行くのでさえ上位何%とかいう激戦区界隈。超大物配信者だと確信したナツキ。
ラルニ:お兄さんって結構つよい系?ラルニと戦ってみない?
コメント欄
うぉぉぉぉぉ!
ラルニちゃんの戦闘が久々に見れるのかぁ!
この人には悪いけど、ラルニちゃんの踏み台になってもらおう。
戦うって何を?ここには悪人は居ないみたいだし、何のことを言ってるの?
ラルニ:知らないの?!ヒーロー同士で戦ってランクを競い合う「現象決闘戦」を知らない系?
コメント欄
マジかよ…
カモ確定でw
やっちゃってよラルニちゃん!
何か特別な場所とかに行く感じ?それなら少し待ってね。同居人が服屋で装備品改造中だから。
コメント欄
ラルニちゃんを待たせるとはいい度胸だな!
コイツ、勝てないから逃げるつもりだ。
僕は思った。これ…面倒な事に巻き込まれた。まず、ラルニちゃんのチャンネルの配信に出てる事により逃げ場を失った。ここで逃げるようなら「ヒーローなのに…」と酷評を受ける可能性がある。
せっかく昨日、ダークヴェンダマイズを倒したばかりなのに弱いって思われたら仕事の依頼来なくなるよ。
ラルニ:今の時代バーチャル世界に移動できるから、待たずに済むよ。
バーチャルなら時間場所を問わず出来るのか。だけどさ、どこで戦いを申し込めばいいんだ?
ラルニ:「非科学現象組合」の公式サイトで「現象決闘戦申込」を押せば登録できるよ♡
コメント欄
ラルニちゃん物知り〜!
そんな優しいところ好きだよ!
そんな項目があったのか。僕は公式サイトに飛び、申請するとメールが届く。
「登録完了いたしました。あなたのランクは銅級からのスタートです。」
現象決闘戦はヒーロー同士が戦うことで強さの順位を決めることが出来る。最初は銅級から始まり、一般ヒーローが目指すのは金級となっている。尚、この決闘戦は公式サイト及び、ヒーロー公式チャンネルで生配信される。
ラルニ:ラルニはもちろん金級だよ!
コメント欄
現代ヒーロー最強枠だもんね!
ラルニちゃんと戦えるだけ有難いと思え。
「お互いの承認を得ました、これより現象決闘戦を始めます。」
公式のメールが来たあと、その場所はすぐにバーチャルに変わる。一種の転移現象だろう。
「場所はライブ会場(外)、ラルニちゃん指定のステージになります。」
いくつかステージ選択ができるらしい。だが選択できる権利があるのは、自分よりランクが高い人。同じランクの場合は2人が選んだどちらかでランダムに決まる。
戦いが始まるまでに20秒程時間がある。この間に周りに何があるか見ておく必要があるが、ライブ会場(外)はライブ会場側以外の立地は平ら。隠れる場所なんてありはしない。
ラルニとかいう奴はライブ会場側から広範囲に攻撃するものだろう。遠くにいても広範囲攻撃を受ける、接近したら大ダメージ。自分が有利になる様に出来てるな。
5・4・3・2・1…フェノム開始!!
始まった。まずはラルニの現象が何なのか探る必要がある。僕は生憎ラルニの配信や動画を見てないから、どういった現象なのか理解できない。
だが1つ気になるのが、ドローンだ。ラルニの周りには複数のドローンが飛んでいる。それは攻撃で使う物なのか、もしくは…
ラルニ:さぁ…いっくよ〜♡
ラルニが合図をした途端ドローンが飛んでくると予想したが、ドローンは彼女自身を見ているようだった。
つまり、このドローンは自身を投影してる。別の言い方をすれば、この複数のドローンで配信しているということだ。
ラルニの現象は配信に関することなのか、だとすれば条件がいくつか絞れる。だが攻撃自体は何をしてくるのか全然分からない。
ラルニ:みんな!もっとラルニちゃんを見て見て〜♡
ドローンに向かって指示を出した。恐らく攻撃する前フリなのだろう。
この現象決闘戦は体力制になっていて100の体力を削られたら負けになる。ラルニの攻撃を広範囲だと予想しているが、ステージ全体まで攻撃が届くならクソゲーである。
広範囲攻撃はダメージが分散されるので一発一発は軽いけど、知らない間に蓄積されることが多い。




