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LAST HERO JAPAN  作者: 悟
夏希編
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15/18

第15現象 地味で最悪な現象

 僕の名前は夏希ミユ(仮)。ヒーロー名は「エア・スフィア」。鹿児島市の古家をリノベーションして「LAST HERO JAPAN」という事務所兼家を設立。


 数々の反英雄(アンチヒーロー)を倒していき、事件解決をしていった。今回もアンチヒーローの事件を解決した後、お礼として半額で旅館に泊まらせてくれたのだが、ここで事件が起こる。


 朝起きると、僕以外が全員「幼児化」していた!!



 思い出せ、昨日の僕。昨日は露天風呂を出て部屋に戻った。そして神崎が持ってきた酒をみんなで飲んでいた。


 僕は酒が苦手だから1人先に寝たんだけど、もしかして神崎が持ってきた酒が原因なのでは?だとしたら神崎に酒のことを問い詰めないといけないな。


神崎:お…お前、な…なんだ!俺様に何のようだ!


 ちっちゃくなっても生意気なのは変わらないのか。この様子だと僕の記憶も覚えていないというか、幼少期の記憶になってるというのか。


九条:私は幼少の記憶しかないが、現象で少し思い出したぞ。


 おぉ、幼児化しても探偵だから冷静だな。既に現象をまともに扱えるとは昔からしっかりした生き方をしていたんだな。


九条:私達は「とある酒」を飲んだ。果実酒で甘すぎて好きではなかったが、妙にもう一杯飲みたくなった。


 九条は昨日の飲み会で神崎がどこから持ってきたのか話していたことを曖昧だが思い出す。


 市場の奥の誰も通らないような路地裏に迷い込んだ時、神社を見つけたらしい。その神社は面妖な生き物バカリで、人間と呼べる存在はいなかったそう。そこで酒を買って帰ったと…



 信じにくい話だが、今起こっていることを考えると本当にあるのかもしれない。その神社に行けば原因が分かるのか…


霧龍:おはようダフゥ、朝食ができてるダフゥ。


 ちょうどいい所に霧龍が来てくれた。コイツは着ぐるみなのか、本物なのか分からないが、後者なら何か知っているかもしれない。僕は霧龍に昨日の出来事を話した。


霧龍:ハッピーラッキーっていう酒飲みゲーをする時のお酒ダフゥ。


 知ってるなら話は別だ。今すぐ情報を吐かないと、その着ぐるみを脱がすぞ。


霧龍:落ち着くダフゥ、効果は一日で切れるから我慢するダフゥ。


 誰がこの酒を販売しているんだ!


霧龍:妖怪横丁っていう、日本の妖怪の仮装をした街があるんダフゥ。そこの神社近くの酒場の店主が現象持ちダフゥ。


 現象名:幼児回帰(リターン・チャイルド) 

 分類:法則型現象

 危険度:Ⅰ未満


 対象を精神・肉体共に幼児化させる。期限は一日で切れるため、パーティー用アイテムとして「ハッピーラッキー」というお酒を販売している店主がいるとかいないとか。


霧龍:一応明日までは半額にしとくダフゥ。


 無料にしろ


霧龍:それは破綻するダフゥ


 よし、お前ら。この龍の人形さんが遊んでくれるらしいぞ!


ましろ:でかーい、お人形さんだ!


ラルニ:うしろのカバンは何が入ってるの?


フミヤ:お腹ぷよぷよしてる〜。


神崎:解剖したら何が出てくるのかなぁ。


九条:興味ないな。


伊月:抱っこ…


霧龍:あっ、ちょっと…。ズルいぞ夏希!


 子供に人気だったらこれくらい余裕だよね。僕はましろ達を霧龍に預け、原因の妖怪横丁に向かうのだった。



 妖怪横丁の人達は妖怪のお面を付けているだけ。あとはコスプレのたまり場みたいな感じになっている。まぁ、妖怪ではないが僕もコスプレみたいなもんだな。


 ほとんどの店は閉まっており、開店は18時以降だった。だが目的地の酒場には、店主が1人いた。僕は客のふりをしながら店内に入る。


 確かにハッピーラッキーというお酒が920円で売っていた。他にもパーティー用のお酒やつまみが並んでいるが、これは合法なのだろうか。


店主:何か…買っていきまへんか?


 店主は60歳過ぎくらいだろうか。いかにもお酒が好きな見た目をしている。


 このハッピーラッキーというお酒は合法なんですか?


店主:一杯飲んでみるかい?


 僕の友達がこれを飲んで幼児化したんですよ。その原因を調べてるんです。


店主:効果は一日、それ以降は元に戻って幼児化の記憶もなくなる。


 もしかして、現象登録はお済みでない感じですかね。現状発現者はヒーローでなくても「非科学現象組合」に現象を登録する必要があるんですよ。


店主:毎月、封筒来るけど無視しとるよ。


 その場合は現象法第3条「無登録現象乱用」

 現象を登録せず使うと違法になる。その場合ハッピーラッキーは危険物として扱われ、危険現象流通罪になる。


 現象法第8条「現象登録義務」

 現象者は現象を一般社会で行使する前に、非科学現象組合の登録を受けなければならない。


 現象法第14条「危険現象の流通禁止」

 危険性が認められた現象及び現象生成物は、 組合の認可なく販売・譲渡してはならない。

 

 この場合は「危険現象流通罪」と「無登録現象行使罪」の2つに該当する。店主さんは長らく現象登録を無視し続けていたということは「故意」で無視しているとみなされ、今から登録しようと言い訳しようと罪に問われる。


店主:アンタが黙っていたら、何も問題ない。


 残念だが、こればかりは見逃すわけにはいかない。店主さんは立派な罪人だ、僕はヒーローとしてあなたを捕まえなければいけない。


店主:助けなくていいことだってあるかもしれんのに…迷惑な奴じゃな。


 ここが日本で良かったな爺さん。


店主:なんじゃと?


 日本はまだ現象発現して20年ちょっとしか経っていない。海外だと早くて50年前から発現しているところがある。日本はまだ国民が現象に対して関心が薄い。その為「非科学現象組合」も動きづらいところがある。


 それが海外になるとどうだろうか。


店主:どうなるんじゃ…


 酷い例だと、10年前の麻薬取締事件で、一つの会社が現象を乱用して麻薬を大量に生成していた。当然麻薬は違法だし、現象登録していない生成物も違法。


 日本であれば十分な時間と判決があるが、海外はくどいマネはせずに、その場でヒーローに殺される。


 日本は平和で安全だから良かったな。でも時期にお前らみたいな奴が増えれば、実装されるのも時間の問題かもな。だからといって今、逃げるようなマネをしたらどうなるかな?


店主:市民を傷つけることはしないじゃろ?


 1回目は見逃す。だが、その1回目は現象を1回使用して悪さや違法なことをしたときに限る。誰かさんみたいに登録を無視して、何度も悪用していたら、当然1回目ではなくなる。


 だからここで、アンタを痛めつけるのは「合法」になるが…どうしたい?


店主:み…見逃して…ほ…


 それは無理な願いだね。知らなかった…とは言わせないよ。「非科学現象組合」からの封筒の手紙を一度でも読んで登録していたなら罪も軽くなっていただろうし、こんな事も起こらなかっただろう。


 現象法第27条「現象乱用の再犯」

 現象乱用罪を再び犯した者は 情状酌量の余地なく、 現象法違反の重複犯として処罰する。


 つまりは、判決で無罪になることはなく絶対有罪になるってこと。


 この後、天星と連絡を通して店主は捕まった。地元民や観光客も現象登録されていない生成物だとは知らなかったらしい。


 「非科学現象組合」の社員が到着後、押収品として現在まで生成していた品「ハッピーラッキー」とその他の品を全部回収した。


 

 旅館に戻る僕だったが、すっかり霧龍の事を忘れていた。幼児化した6人を霧龍に任せっきりにしていた事を思い出したのだが…


霧龍:遅いダフゥ


 そこにいたのは霧龍の丸いお腹にくっついて寝るましろ、画用紙にお絵かきをしているラルニに、段ボールでロボットを作り出して装着していたフミヤ。(勿論適役は霧龍)


 神崎は「俺様が一番偉い!」と小さな幼児王国で王を気取っていた。九条は現象で状況を理解していたのか、大人しく本を読みあさっていた。


 伊月さんは皆んなをまとめようとしていたが、空回りして泣き出す。結果的に僕を見つけては抱っこを要求してきた。


霧龍:オイラ、6人を見てたダフゥ。褒めるダフゥ。


 子供とたくさん遊べてよかったね、霧龍。その調子で今晩まで居てくれると助かるな。


霧龍:冗談じゃないダフゥ!オイラも仕事があるんダフゥ!

 

 霧龍は子供たちを置いて部屋から出ていった。さて、この状況どうしようか。


 一日といっても「ハッピーラッキー」を飲んだ時間がもうすぐ来るがどうなるだろうか。



 最初に戻り始めたのは以外にも九条だった。神崎が最初に飲んでいたのだと思っていたが予想が外れた。


九条:酒に触れて現象を使った際に、現象者の生成物というとこまでは分かったんだがな…


 次に戻ったのはラルニだった。幼児化から戻っても絵を描いていた。彼女は本心で絵を描いていたのだろう。


ラルニ:絵もラルニも、いっちばーん可愛い♡


 次はフミヤで、装着していた段ボール装備は子供サイズだったので破けてしまった。何かを察したのか、その場を離れて機械をいじり始めた。


フミヤ:お前は何も見ていない、いいな?


 次は神崎。コイツは1日中というか…昨日から寝ていなかったんだろう。幼児化から戻っても酔っていた。


神崎:俺様の…酒をのんらぁ、奴はぁ誰ら!


 ましろも幼児化から戻るが、元から寝ていたので別に何も起こらない。


 最後に伊月さんが大人に戻るが、元々僕が抱っこしていたので、察した伊月さんは顔を赤らめていた。こんな伊月さんを見るのは初めてで抱っこから降ろすことを忘れていた。


 

 次の日…


 僕らは無事?霧島の旅館を出て、家に帰る準備をしていた。「ARK」に荷物を詰めている時、霧龍と天星が見送りに来てくれた。


霧龍:また来るダフゥ!


天星:次は事件ではなく、参拝に来てほしい。


 彼らに手を振って、僕らは地元に帰るのだった。


 伊月さんと九条は「非科学現象組合」にしばらく戻るので会えないらしい。事務所に戻ったら、いつもの日常が始まる。



 僕はいつも通りパトロールをして市民を安全に平和的に守る。最近は反英雄(アンチヒーロー)や悪人を見てきて、戦ってきた時は忙しかったが今は暇になった。


 霧島以降は反英雄や悪人が現れることがなかった。かといって他の県の助けに行こう…ともならなかった。


 僕は久しぶりの人と出会った。


永:お久!


 会いに行った訳ではなく、パトロール中に偶然会った。永さんが通う大学は長期休暇に入っていて遊んでいたんだと。


永:最近のニュースで活躍見ていたよ。この短期間で随分成長したんじゃない?


 確かに。時間なんてあっという間…、そう言いたかったが過ぎた時間はそこまで長くなかった。ここ数ヶ月の出来事だからか、忙しく感じたのか数年経ってるような感覚だった。


永:そう言えば、ヒーロー登録改変の件見た?


 見たよ。ずいぶん思い切った事をしたと思っている。僕らが温泉旅館に泊まっている間に起こった出来事なんだけど…



 「非科学現象組合」が新たにヒーロー登録改変の知らせを出した。その理由として、過去の反英雄(アンチヒーロー)や市民の暴動、海外からの刺客が増えてきたのでヒーローを多く募集するべく、年齢を引き下げたのだ。


 今までは18歳以上・高卒以上に限られていたが、ここを大幅に下げて高校入学時なら誰でもヒーロー登録することができるようになった。


 所謂「学生ヒーロー」ってやつだ。学生とヒーローを両立させて活動するヒーローを作り出そうと「非科学現象組合」は考えた。

 

 最初こそ世間の猛反発を受けたが、ヒーローになりたい学生の現象者達が多かった事と反比例して反発の声は少なくなっていた。


 一部は反発する層がいたけど、ならアンチヒーローや悪人が出ても助けないから…と「非科学現象組合」は大きく出た。



記者:学生ヒーロー制度を撤回してください!


組合幹部:制度は予定どおり施行します。学生ヒーロー制度を拒否することは自由です。


組合議長:しかし、その選択の結果として全国的なヒーロー不足が解消されない場合、非科学現象組合はすべての事件・災害に対応することを保証できません。



 今まではよく分からない組織として認識されていたから市民から下に見られていたのだが、日々増える事件やヒーローにより認知され始めた。


 ヒーロータレントとしてヒーローを引退していた層も、当時はヒーローなんてやるのは馬鹿のやる事だと言っていたが、そう言える時代が終わったとこで現役復帰する者達が多々現れていった。


ニュース:学生ヒーロー制度施行を受け、多数の引退ヒーローから現役復帰の申請が相次いでいます。


 やっと日本は現象に向き合って国が進んでいく時代が始まる。20年と長い時間はたってしまったが、海外と同じ舞台に足を並べることができた。


 この世界は今よりいい方向に行くのか悪い方向に行くのか分からないけど、僕は時代が進んでも地元を守り続ける。


 


 次の話から夏希は主人公じゃないです。今回のエピソードで少しだけ先の話を見せましょう。


 僕の名前は雨宮奏(あまみやかなで)。

とあるヒーローに助けてもらって以降、ヒーローになるのを夢見ていた。


 ヒーロー登録年齢の改定以降、ヒーローになれるまでの時間が短縮されたことにより、当時、助けてくれたヒーローと共に活動をしたいと思った。


 それから2年後、僕は地元を離れて「非科学現象組合」の本部がある東京に引っ越すことになる。元々地元の高校に入学予定だった。「LAST HERO JAPAN」に入るのも目的としてあった。


 だけど、僕がヒーロー活動をしようと考えていたら思ったことがある。あの人よりも、あの時助けてくれたヒーローよりも強いヒーローになりたい。


 僕を助けてくれたから、何かあればそのヒーローを僕が助けたい!と思うようになってから、東京に行くことを決めていた。


 あとは…「LAST HERO JAPAN」という事務所がヒーローの募集をしていなかったんだ。僕は約束したんだけどな、ヒーローになったら入れてほしいって。


 でも分かるよ、「学生ヒーロー」がここ2年で増えたことで良いこともあれば、悪いことも増えていった。


 「LAST HERO JAPAN」はそれを避けるために、募集をしていない。


 

 さて、新たな生活・場所。僕を待っているものは僕にどんな影響を与えてくれるのか。考えただけで不安が溜まるが、それ以上に楽しさでいっぱいだ。


 行こう、次の時代へ…


 

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