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議会にて

王宮では速やかに各大臣と高級官僚が召集され、指導者会議が開催された。

国務大臣や陸海軍大臣、全ての閣僚にユーキ参謀が列席。


エリゼ女王不在時に、スパイ行為を行った首相が逮捕されたこともあり、会議の進行はユーキ参謀が行うことになった。


「では、これより今後の戦争方針について話し合いたい。建設的な場になるよう、お力お貸し願いたい」


帝国の提示した停戦案は3年を期限とし、東エルフ共和国の占領地を明け渡すこと。アルデンの森の占有権と巨人の死骸を引き渡すことだった。


「これはめちゃくちゃな要求だな。国務大臣どう思う?」

「参謀の言う通りです。これを飲めば同盟国から非難され、最悪援助も打ち切られますな」


やはり、停戦は難しいか。

現状、東エルフ共和国のみが西方で、人類唯一の拠点として機能している。仮にこの停戦案を受け入れ、フリードベルク市街が包囲される形で停戦したら、まず間違いなく帝国側の準備が整い次第進行してくることもありうる。


「間違いなく、無理難題で時間稼ぎする腹積もりだな」


フリードベルクはちょうど雨季に入り、泥に足を取られ大規模侵攻作戦は実施できない。乾季までの時間稼ぎと考える事もできる。


「陸軍としては、砂漠を越えた精霊の軍団に対して全力を注ぐべきかと」


「我々海軍は女王の指揮する艦隊が帰港次第、第二陣を編成、精霊国沿岸都市部への報復攻撃を実施する予定です」


「となると、早急に対処すべきはやはりこちらの南方戦線か。火薬の原料を採掘する鉱山が敵に押さえられたのは痛いからな」


地図を見る限り、敵の本隊は砂漠を越え、南部の小都市を蹂躙、王都南方70キロ地点まで進攻か。


「はい。昨日の報告では精霊たちもかなりの戦力を戦線に投入しているとのことです」


「しかも、街道上の怪物が厄介だとか」


街道上に出現したヒト型の怪物は、昨日確認された新個体らしい。数は約1000体。全身を鋼鉄の鎧で多い、歩兵のライフル弾を弾き返しながらゆっくりと前進してくる。


前線に配備されたガトリング砲で何発も命中弾をいれ、ようやく撃破できたそうだ。

また、報告によると怪物は拳銃を所持。

恐ろしい精度でガトリング砲手の眉間を撃ち抜いてくる。


「ついに怪物も銃を扱う時代になりましたか」

「では、我々も鉄の鎧でも着ますか」


偵察兵の情報によると、改造生物たちの素材は南部の元人間であり、生け捕りにされた人間に魔素を多量に注入して作り出されていた。


「南部地方は資源が少ないから、狩猟などで射撃能力に特化した民が多いが。まさか、精霊たちが人を改造して戦線に送り込んで来るとはな」


人間の改造も問題だが、別の問題も。

どうやら怪物たちが装備している鋼鉄の鎧と銃火器の出所は帝国製らしい。


「やはり帝国側に停戦の意思はないのでは?帝国は停戦交渉を無茶な要求で引き延ばし、精霊の軍団で我が国の戦力を削ぐのが目的かと。」


秘密警察長官がペンを回しながら言った。

現状、東エルフ共和国のある西方戦線では、今も膠着状態が続き、敵空中戦艦による市街地爆撃を受けながらも、軍事拠点としてその機能を維持し続けている。


だが、彼らの使用している火薬原料(硝石)の大半はエルゼ国南部から今も供給されている。ドワーフたちの硝石鉱山からも供出してくれてはいるが、その数全くといっていい程足りていない。


「つまり、敵は我が王都に進攻せずとも、火薬の原料を産出する南部都市を数ヶ月占拠するだけで我国と東エルフ国の備蓄弾薬を枯渇させる事ができます。」


総力戦研究院の見解によると、敵は巨大な大砲を有した我が国の要塞や防衛陣地とやりあうつもりはなく、あくまで火薬が底を尽きるまでゲリラ戦を仕掛けてくるのが目的だとのこと。


こちら側から総攻撃にうって出るのもいいが、東エルフ共和国防衛戦で陸軍士官の半数が戦死。防衛戦なら利があるが、攻勢に全力を注ぐ短期決戦になるとリスクが大きい。


議場に沈黙の時が流れた。


「技術部よりご報告があります」


静まり帰っていた議場に技術仕官エディンの声が響く。彼は指名されるとその場に立ち上がり、設計図と外に待機させていた部下たちに模型を運びこませた。


「陸海軍より発注された物が完成いたしましたので、その模型もお持ちしました」


長さは3メートル、縦40cmの飛行船模型だ。


「これはすげぇ、、、本当に完成するとはな」

驚いた。硬式飛行船じゃないか。

飛行船を知らない人々はこの模型を見てどよめき始めた。


「これは内部に水素を入れ、発動機を巨人の魔石で動かす空中船です。人間の魔力ではエルフたちのように空中戦艦を飛ばし続ける事は難しいですが、そこは科学と魔石で補う事で長時間の行動を可能とした乗り物です」


エディンは、説明を続けながら設計図を広げた。


完成機のスペック

全長150メートル、高さ20メートル

乗員20名、エンジン6発、最高時速120キロ

最大爆装 4.5トン、試作連射機関銃5門



「す、素晴らしいぞエディン君!是非陸軍に来てくれ!」


「陸軍大臣?今回は技術交流という事でしたが、わたくし海軍大臣がいる前で引き抜きをしようとはどういうつもりです?」


少なくとも、南部諸都市奪還の糸口をこの新兵器に見出だすことができそうだ。


飛行船は陸海軍の共同運用となるそうだが、操舵や航海のスキル面から需要部署は海軍の管轄になるそう。


ユーキ参謀は陸軍大臣と海軍大臣以外を退出させ、今後の作戦案を練り始めた。

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