パンツァーファウスト作戦2
昨日の話が頭の中でグルグルと渦巻き、昨晩は落ち着いて眠れなかった。久しぶりに司令室から出て外のホテルに泊まったというのにリフレッシュもできやしない。
アルトとの会話、陰謀論だと断定できないおそろしさ。普段は吸わないタバコを取り出し、火をつけたその時部屋の電話がなった。
誰だよこんな時間にと思ったが、中々ベルがやまない。緊急事態かと思い電話を取ると
「ユーキ!今すぐそこから逃げろ!」
エリゼの声だ。
その直後、誰かがドアを蹴破ろうとする猛烈な音が部屋中に響き渡る。俺は咄嗟に拳銃を取り出し、脱出経路を確認する。
ドアを打ち破れないと気づいた暗殺者たちは機関銃をドアに乱射した。弾が分厚い木のドア板を貫通し、一発がユーキの肩を貫通した。
「くそっ!くそがっ!クソいてぇっっ、!」
ユーキは窓を撃ち破り、隣の民家の屋根伝いに地上へ降り野戦憲兵隊の詰め所に逃げ込もうと駆け出す。暗殺者たちは追わずに客室の窓から撃ちまくってくる。
(なんだクソ!この銃声は帝国軍の短機関銃か??)
けたたましく鳴り響き、高速で弾をばらまく特徴的な銃声は間違い、あれは帝国軍の短機関銃の特徴だ。
「この代償高く付くぞ!!」
ユーキは気づいていないが、この時に帝国への憎悪と復讐心で昨日の話の内容をすっかり忘れてしまっていた。
〜2時間後〜
10月29日午前7時、ユーキは最後の輸送部隊を見送った。奇跡的に怪我は肩の1発のみで弾は貫通していたこともあり、ユーキは縫合処置を受け式典に参加したのだ。
卑劣な帝国軍の暗殺を交わし、復讐の炎に燃えるその姿は国民から英雄視された。
第3陣の姿が街から離れ、遠く見えなくなってから約半日、輸送隊が無事到着したとの報告が入った。これでバルジ輸送作戦は完遂だ。
ユーキは式典の後、少し仮眠を取って書類整理を行った。
あとは最終戦争の火蓋を切る鉄拳作戦が発動するだけだ。外は既に暗くなり、時刻は午後11時を過ぎた。
戦時中ということもあって工場地帯は常に動き、労働者のための露店、飲食店が開き皆慌ただしく働いていた。
作戦発動まで残り25時間を切った。
〜 中央方面軍 〜
「グランド中将、第3輸送隊が到着。23時間後の作戦開始と夜戦に備え兵に休息を取らせます」
「頼んだよエリカ君」
「はっ!」
エリカは直立不動の敬礼を返し、野戦司令部から退室した。前線には夜間戦闘用の閃光弾が砲兵達に配布された。上空のかなり高いところで味方の偵察機が旋回しているのが見えた。
「エルト準備は整ったか??」
「あぁ、戦車乗りだから地上を駆け回る歩兵と違って義手義足でも問題ない」
エルトは政権を転覆を目論む海軍首脳部を爆殺したとき運悪く爆風に巻き込まれた。あの時の傷は国のために負った名誉の傷だと言うが、本当はまだ痛い。
ベットであの世とこの世を行き来してたとき、薄っすらと視界にうつったのが泣きながら俺の名を連呼するエリカの姿だった。あの表情、何かこう癖に刺さったな。
エルトの妄想を察したエリカは傷跡を叩き悶絶させた。エリカは超自分の乗る重戦車へ向かいロケット砲弾の点検を行った。
「夜分遅くに失礼するよエリカくん」
「これはエーベルト大佐。こんばんわ」
エリカが砲閉鎖機下から顔を出すと大佐がハッチのそばに座っていた。
「夜戦は久しぶりだな。黄金の夜明けを見た東エルフ共和国攻防戦以来じゃないか」
「あのときは助けて頂きありがとうございました。大佐が弾受けして下さらなかったら恐らく私は今地獄の底ですよ」
違いないとエーベルト大佐は笑う。
「そんなことより、彼とはもうしたのか??」
「何ですか?セクハラですか??お誘いであればお断りしますよ??」
エーベルト大佐は笑いながら否定し、話を続けた。
「知っての通り、私の妻と娘はもう死んでいる。私が戦場にいなければ死に目に会う事や家族団欒の時間をもっと作れたかもしれない」
エリカは少し軽蔑した眼差しを向けるが、エルトが死にかけて医者がもう無理だと言った時の自分がどんな気持ちだったか。それを思い出すと返す言葉もない。
「すみません大佐。私野暮用を思い出したので失礼します」
「しっかりやれよ」
大佐は私の肩を叩き、秘蔵の男性用強壮剤を渡した。エリカはそのままエルトのテントに入り、翌日誰には人知れず自身のテントへと戻った。




