陸上戦艦
四日間の移動を終え、第一陣がエルゼ本国に到着した。
エディン「参謀。先に戻ってお待ちしていました」
エリカ「お久しぶりすおじさま」
エルト「お久しぶりです」
そうか、エリカとエルトは戦場にずっといたからエディンがつい最近、フリードベルクに来てたのを知らなかったか。
にしても、青い瓦の軍庁舎が懐かしい。
「あれが新しい防衛要塞か」
「破損した軍艦をそのまま陸に埋めたようなものですが、ないよりは良いということで突貫工事で作られました」
計4基の30cm連装砲塔が南方に睨みをきかせる。
「にしても、随分はやく完成したもんだ」
「ええ、先にフリードベルクから撤退されたドワーフの兵や技術者の有志たちが手伝ってくれたので、思いのほか早く進みました」
現在、蒸気機関の設置に手間取り、稼働しているのは二基のみだが、防衛戦には申し分のない火力だ。
にしても、やはり王都は大混乱だな。
戒厳令が敷かれ、国会は停止。
露店は殆どないし、商店街も以前より活気がない。軍事工場以外稼働している産業がほぼない。
昔はもっと活気があったよなぁとエディンと話していると、深々とお辞儀をし我々を迎えに来た一人の老紳士が現れた。
ユーキ「久しいな爺。今のこの国はどうなってるの?」
侍従「ええ、女王は軍艦に乗り海外遠征。精霊たちの侵攻で、南部諸都市が陥落。これに恐れおののいた貴族の一部がドワーフの国に亡命ですじゃ。」
臨時の国王代理、ベルゼン首相は戦時資金の横領と汚職で更迭。商業のほとんどは物資不足で営業休止。
南部からの鉱物資源も戦争で止まり、
鉄不足で軍関連の施設も一部閉鎖、、、。
北のエリアには要塞建設のためコンクリートが全て軍用に回されたことで、街の至るところに建設中止になった建物も見える。
よくまぁ、暴動が起きないもんだ。内政がったがたやんけ。あれもこれも、全部スッポカして遠征にいったアホのせいか。
侍従「ただ、女王の求心力は未だ健在で、民主政治家の度重なる汚職、国民は女王の帰還と強力な絶対王政を望んでいますじゃ」
なんじゃそりゃ。主人公補正か??
ともかく、エリゼが帰国したら即国会と民主政治を停止させ、王権を強化した軍政に移行するしかないか。市民への配給と軍への物資集中を早く行わなければなるまい。
どうせあいつは、暗殺で死ぬ玉じゃないし。
ここまで政治ほっぽらかしてたから、たまには重荷を背負わしてやろう。フフフ
エディン「お父さん何か悪いこと考えてる顔してるね」
エリカ「お母様に何時も振り回されてばかりだから、たまにはいいのではないでしょうか?」
侍従の老紳士は近況報告を終えると退室した。
現在の状況を確認し終えたユーキ参謀はふと外を眺めた。そして、戦前からエディンに伝えていた計画案の進捗を尋ねる。
「はい、それなら見た方が早いかと」
エディンは、ユーキと若い二人を連れ武器工場の地下へ案内する。
「すげぇな!いや!すげぇよこれ!」
「す、凄いですね」
「大佐が見たら喜びますよこれ」
新型戦車 E10戦車(エルゼ10号の略)
重量75トン、時速30キロ。
主砲口径300mmロケット砲。砲弾7発搭載。
全面装甲25cm、側面背面10cm
「射程は1キロと短いですが、砲弾は要塞砲と同程度の破壊力を持ちます。要塞突破や市街地戦に絶大な威力を発揮することでしょう」
素晴らしい!
だが、南部の陥落で鉄不足。
試作車を含めて2両のみ完成。
ロケット砲弾は加工が難しく、完成品が28発のみ。しかも、これを1両作るコストは通常車の10倍で、完成までの作業時間も10倍近い。
「これが平時に作られてたら、間違いなく財務庁から暗殺者が送られて来ますね」
「確かに、軍艦作る予算で国の予算がパンパンだったころ、大型艦を作ろうとしてた海軍の強硬派に謎の死人も出てたしありうるわ」
戦時のどさくさとは言え、こんなもんを作るだけの余力が我が国にまだあることに少し安心した。
動力炉は巨人の肉片を小さく圧縮し、膨大な魔力を戦車の起動に必要な分だけ抽出し続ける精霊工学の結晶といえる精密機器。
そりゃ高くなるわな。
明日の午後、試験場で最終性能試験を実施。
素晴らしい。実に素晴らしい。
おそらく、南部の都市が陥落し敵の化け物どもが王都に接近するまで残り2週間弱と推定。
それまでに、防衛線の構築を急ピッチで行わなければならない。
「エリカ、エルト。お前たちは要塞砲から14キロ離れた地点に防衛線の塹壕地帯を作り、最前線の指揮を取れ。兵は3万人出す」
エルト・エリカ「了解しました!」
「ブランド中将を呼べ、後方の要塞砲指揮と防衛戦の最高指揮官に彼を任命する」
了解しました!失礼します!
数分後、ブランド中将が入室した。
「やぁ!ユーキ参謀久しぶり。今回のお役目ありがたく拝命いたしますよ。」
中将はそう言うと、机に要望書をつきだした。流石抜け目のないやつだ。
「戦車20両、兵員8万名。砲弾薬、食料、酒を人数分、最低で3週間分を早急にか。いいだろう」
「ありがとうごさいまーす!」
退出したブランド中将と入れかわる形で、伝令兵が入室した。
「参謀、帝国から停戦案が届きました。」
「ようやく来たか」




