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黄金の夜明け 2

「エーベルト大佐は、敵塹壕地帯を突破。フリードベルクから25キロ圏内の敵軍を一掃。」

「大戦果じゃないか。」


現在、戦車軍団は30キロ地点で停止。

戦車隊の損失は通常車両6、機銃車2の8両のみ。


「やはり、新型車の大口径砲による近接射撃は凄まじいな。(ほぼ、シュトルムタイガーの小型版だもんな)」

「ええ、敵のコンクリート製のトーチカを一撃で吹き飛ばしたとか」


「これで、塹壕戦における戦車隊の有効性は証明されたわけだ。」

敵軍を一時的に押し出せたのはでかい。


「しかし、これはまずいな」


「女王も不在ですからね」


精霊たちの国は、エルフと人類の戦争に中立的な立場を示していたが、ここに来て本格的な参戦。

エルゼ本国は南方から襲来した精霊国の改造生物の大軍による攻撃を受け被害甚大、南部の領土を失っていた。


西部の新要塞は南部から距離がある。

比較的、南部に近い南西部の旧式ガトー砦は戦場に近いが防衛火力不足。


エルゼ本国は東エルフ共和国と比べ防衛施設が少なく、南部の防衛はほとんどない空白地帯。


「エルゼの正規軍を本国に後退させるしかないか」


「参謀。ここは我々が食い止めますので、正規軍とともに本国へ戻ってください」

アルト司令はそういうと、東エルフの軍で帝国と第三勢力の精霊たちを相手にした防衛戦の準備を始めた。



~ フリードベルク郊外最前線 ~

エリカ「大佐、随伴歩兵部隊の消耗が激しく、これ以上の行軍は難しいかと」


エーベルト大佐「そうか。戦車隊もだいぶ装甲が削れ、これ以上の被弾に耐えられそうもない。前進はここまでだ」


比較的無傷な8両は戦線にとどめ、残りは地下の整備場へと送られた。現在、我々のいる地点は要塞砲の射程外。

最大火力による掩護射撃は期待できないが、敵の残していった広大な塹壕と防衛陣地はそのまま活用できる。


大佐「敵の残していった弾薬を集積しろ」


今回の攻勢で弾薬を激しく消費した我々は、敵の大砲や銃、爆薬を使わなければならない。


大佐「使い方はわかるな」


「ハッ!存じております!」


一時的な大勝利の後は、奪還した地域を再びとられぬよう防衛するかが問題だ。

そんなとき、後方から命令書が届く。


「前線のエルゼ国の正規兵は戦車隊を残し速やかに後退せよ。本国の防衛戦に向かえるよう、速やかに部隊の再編を行うべし」



「な?!それでは、我々東エルフの二十万名ほどで敵の大軍と対峙しろと?!」

東エルフの兵たちに動揺が広がる。


有事の際に、東エルフ共和国で徴兵され、後方支援に従事していた国民突撃隊(満18歳から500歳まで)が武装を始め。弾薬や食料補給に影響が出るが、前線に約12万近い兵員として補充され始めた。


(彼らが来ても約32万人。しかも開戦以来一度の射撃訓練もしていない後方部隊が果たして前線で戦えるのだろうか。)

大佐の表情が曇る。


「大佐、申し訳ないですが。お供できるのはここまでのようです。」


「ああ、エリカ中佐。エルト中佐。本国を頼む」


「あとそうだ、エリカ中佐。これを」

大佐は、弾丸のめり込んだ女性もののブローチを渡した。


「大佐、これは?」

「お守りだ。」


前線での引き継ぎを終えた、エルゼ国の兵隊たちがフリードベルク市街に集結。

フリードベルク駅には機関車が既に待機しており、客車や貨車に到着した下級兵をぎゅうぎゅうに押し込み、本国への輸送が始まった。


一等客車に乗り込むユーキ参謀とそれを見送るアルト司令。

将校も複数乗車した第一陣が、フリーベルク駅を主発した。







~ ガルマニア帝都 港湾都市 ~


帝都で破壊活動を行っていたエリゼ率いる陸戦隊は、フリードベルクから引き抜かられた50万の軍団が迫ってくるのを確認した。


「エリゼ女王。敵の本隊が迫って来ております。後数分で後退を援護するための艦砲射撃が始まります!」


「わかっている。」


エリゼ率いる連合艦隊と陸戦隊は、港湾都市にある空中戦艦のドック、弾薬工場を破壊し後退を開始した。当初の目的通り敵の後方支援を断ち、フリードベルク包囲網を弱体化させることに成功した。


「大変です女王!王都からです。」

「そうか、精霊どもがきたか。艦隊を反転!精霊どもの湾岸都市に艦砲射撃を行いながら帰還する!」






~ 将官専用 一等客室 ~


エリカ、エルトを含めたエルゼ国の軍は列車に乗り込み西方へ転進。


「今入っていいか?」

「おう」

返事があったので、エリカに呼ばれたエルトは部屋のドアを開けた。


「酒は、ドワーフに貰った年代物でいいか?」

「おいおい。年齢的にアウトだろ。」


何をいってる?この世界では大丈夫なんだぞー。メタいこと言わせんな。


「さて、今回の南方からの襲撃。お前はどう見る?」

「精霊たちの動きが気になるな。奴らは帝国側と連携しているようにも見えない」


エリカは解答を聞いて頷き、一つの仮説を立てた。

もし、精霊の連中が古代魔術や古代神話を本気で信じていたとしたら、今の状況をどう考えるのだろうか??


ユーキ「流石、我が娘ながら古代神話まで知ってるとはな」


エルト「参謀!」


ユーキは、防音対策の施された客車に二人を呼び、話し始めた。


さーて、エルゼ国の未来を担う君たちには話しておこうか。


精霊たちは恐らく、今回の戦争を聖書にある、人類とエルフの最終戦争が起こったと考えているのだろう。だから、生命の樹レーベンスバウムの化石がある、アルデンの森を占拠し。古代神話の生物を復活させるつもりだ。


「で、あればフリードベルクを見捨てるような今回の移動は不味いのでは??」


エルトの発言にユーキが頷く。

フリードベルクは最早、都市機能が不全を起こし、普通なら残り数週間で街は陥落するだろう。だが、それは敵も同じだ。

首都に防御要塞を作らず慢心していた帝国側は、我が軍の艦砲射撃と陸戦隊の強襲で疲弊しきっている。


帝国側から停戦案を携えた使者との交渉も秘密裏に進んでいる。


「そんな時に精霊国がせめて来るとなると、おそらく戦争を終わらせた大義名分を振りかざし、古代の遺物を強奪する算段か」


その通り、エリカお前は賢い。


もしもの時に備え、古代兵器の巨人から出来る限りの魔力と肉片を抽出し、それを輸送させている。この機関車にも厳重に警備された車両にそれらが保管、輸送されている。


新型爆弾7発分相当の魔力をエルゼ本国に持ち帰る計画だ。そして、サルマトたちから押収した爆弾一発にはすでに魔力が充填され、もしもの時に使用できるようフリードベルクにある。


「まさか、、、」


そのまさかだ。我々は本国で新型爆弾を数発量産、交渉失敗時はフリードベルクには時間稼ぎの盾になってもらう。


「そ、そんな親父が、、、」


エルト君には申し訳ないと思ってる。


「アルト司令官が、、しかし、ユーキ参謀。残った巨人の肉片はどうするの?フリードベルクを手放せば巨人の肉片も敵の手に落ちます!」


フリードベルクが陥落すれば、特殊部隊が管理されている魔力制御装置を破壊し、魔力を暴発させ、跡形もなく残骸もろとも吹き飛ばしてくれる手はずだ。


エリカとエルトの表情は凍るが、仕方ない。

これは最終手段だと言うとこを告げ、そうならないためのあらゆる努力が行われていることを説明した。


少なくとも、我々エルゼの連合国だけでなく帝国側もかなり疲弊していることから、停戦の和平案が現実的だろう。


問題は漁夫の利を狙う、精霊国の動きが喫緊の課題だ。


そこまでを二人に話し、将来を担う新しい世代の育成と戦争で失われた現場指揮官の補充が急務であることも説明した。

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