↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/57

パンツァーファウスト作戦1

要塞砲地下20メートル地点に新たな参謀本部が創設された。ここなら仮に敵の空中艦隊が現れたとしても爆弾は届かない。


俺は第二次世界大戦直前、満州事変を率いた関東軍石原莞爾中将の最終戦争論を思い出す。


「これからの戦争は大国間でのいがみ合いの末、巨大な国国が壊滅的な被害をもたらす兵器を持つことで戦力が拮抗し、擬似的な平和が実現される」か、、、。


(そうだ、第二次世界大戦後米ソ冷戦は原爆の登場により擬似的な平和がもたらされた。我々が隠している新型魔力爆弾、あれを帝国にも流せば破滅的な戦争を両国が恐れ、戦争が終わる??いや、断じて否だ。先に使われたらどうする。最悪人類側が滅亡してしまう)


西側の戦場の風向きは日々変わり、大規模な塹壕や戦車戦から携行対戦車ロケットや高性能爆薬による小規模な機動戦が主流になりつつあった。大規模な軍団派遣は空からの格好の標的となり、大隊規模の野戦軍が各地で敵兵と交戦していた。


東ではエルゼ王国は内政が完全に崩壊。軍は北部へと後退を開始、王都郊外の要塞戦で最期の抵抗を試みていた。左翼政治家はいち早く国から脱出し隣国への亡命や海を越えた新大陸へと逃亡した。


我々の新国家ローザは軍を東へ侵攻させ、アルドー山脈に蔓延る帝国軍の残党を撃滅。鉄道網の速やかな復旧作業が開始され、山脈の向こう側に群がる難民たちの受け入れ体制を構築していた。



午後の執務が終わって、ユーキは参謀室で酒を嗜みながら作戦同意書にサインを書いていた。



鉄拳(パンツァーファウスト)作戦


第一軍歩兵隊15000人(砲兵1500工兵2000も含む)

エリゼ大隊5000名(降下猟兵500特殊部隊1000 含む)

戦車兵764名

鹵獲戦車100両

超重戦車2両

大隊戦車50両

移動野戦砲500門(長距離砲20門)


第二軍歩兵隊14000人(旧東エルフ共和国軍)


航空軍団

6000名(整備兵含む)

戦闘機 50機

重爆撃機 6機


総兵力は40764名也


これらの兵力を3分割し、北部、中央、南部の3方面軍を編成。3地点から攻勢をかける。攻撃開始までは隠密行動を絶対とした、第一作戦コード666バルジ輸送作戦を行う。

パンツァーファウスト作戦開始時刻1時間前より爆撃機部隊は中央方面軍を援護、あたりは一帯を空爆し敵に主力部隊と誤認せ、南方主力部隊を援護する。作戦発動は1週間後の12月20日とす。



「最終戦争が始まるのか、、、残り6日と20時間5分後に全てが塗り替わる。」

地下司令部から外に上がると、夜空には重爆撃機隊が新型魔力爆弾の模擬弾投下訓練を行っていた。


「願わくばアレを使用するのだけはゴメン被りたい」

作戦が始まれば全軍が出動するため、残された部隊が新首都を防備できるよう急ピッチで要塞砲の点検や外堀の拡張工事が行われていた。


「どうした心ここにあらずって顔をして」

エリゼがワインボトル片手に寄ってくる。


「我々が滅ぶか。それとも相手が滅ぶか。考えるだけで頭痛いですよ。」

「やらなきゃやられる、それだけだろ。もっとも外交で平和が続いた期間が懐かしく、恋しいのは私も同じさね」


誰だって戦争が好きな訳では無い。問題なのは始まったものをどう終わらすか。終わらなければどちらかの破滅がこなければ未来永劫ゴールは来ないという現実にある。


「参謀!エルゼ王国からの避難民受け入れの用意が整いました。」


「ありがとう。鉄道はまだ復旧していないので山越えになるだろう。それなりのケアと宿営地の確保を急がせろ。」

新兵の伝令兵は毎日が青春だな。いつもアタフタしつつも成長が見られて良い。


拡張された工場地帯の煙が何時もより激しく、憂鬱な心を写すように夜空になびいていた。




〜翌朝国会前の大広場〜


午前8時過ぎ、エリゼ女王による演説が始まり

しないに敷設された電気式拡声器が至るところで

鳴り響く。


「諸君、我々は屈辱を晴らさなければならない。諸君、我々は不屈の魂で立ち上がらなければならない!今は亡き戦友たちや家族ため!我らが愛する国土と人々のため!団結し隊列を組み、明日のために血を流すのだ!!」


うおおおおおおおオオオ!!!

聴衆のボルテージは最高潮まで上がる。

黒い軍服に見を包んだエリゼ大隊の精鋭がパレード行進を行い、戦車隊がその後に続く。聴衆は歓喜の声と帝国への復讐を求める怨嗟の叫びが入り交じる。


我々指導部は退席し、それぞれの持ち場へと戻り始めた。


武装警察部隊がガチョウ足行進で大通りを抜けパレードが終了した頃、前線の異変を察知した偵察部隊が一報を入れてきた。


「そうか、帝国軍はエルゼ王国王都を徹底的に焼き払ったか」

この間我々が行った帝都空爆への報復だろう。

もはや両陣営は引けない所まで来てしまったのだ。


歩兵の数が足りないと同僚たちは嘆いていたが、現在新ローザには崩壊寸前のエルゼ王国から脱走した陸軍兵が続々と集まり、この国の兵役に志願する者が後を立たない。不足分は補充可能。


それも当然か、元々陸軍はエリゼや王家への忠誠心が厚い。裏切り者の陸軍上層部や海軍、極左勢力の脆い絆とはわけが違う。鋼鉄の契りは忘れられていなかった事にエリゼは感動しているようだ。


「女王陛下、現時刻よりわたくしユーキは参謀が作戦指揮を取り、速やかな作戦開始のため部隊の移動を開始させます」

「うむ、頼んだぞ」


「各部隊指揮官に通達、パンツァーファウスト作戦実行のため速やかに第一作戦コード666、バルジ輸送作戦を発動せよ!!」

「了解!!」


軍楽隊の戦車行進曲に続き、国歌演奏が奏でられ輸送部隊の第一陣が出発した。娘のエリカ、不死身のアルトは中央方面軍として街をたった。


輸送は第三陣まで続く。小分けの前進は敵の待ち伏せや空爆による軍団壊滅を防ぐための策だ。


「では、私は司令室に向かいます」

「頼んだ。」

2人しかいない冷たく長い廊下、戦争中であるにも関わらず光輝く太陽光と小鳥の囀りがまるで今は平時なのだと錯覚させた。


ユーキはエリザの手をとり、目を閉じるとしばし自分の頬に当てた。目を開けると何時もよりエリゼの髪が青々と見えた。


エリゼは微笑んでいたが、何処か狂気を感じさせる口元の緩み。狂人と聖人が同居しているような表情、後に解る真実と惨劇への興奮をエリザは覆い隠せていなかったのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。