新王国の樹立
ユーキの日記帳
12月10日
本日、再占領した東エルフ共和国は東ローザ連合王国(略称HRO)に改定。ローザはエリゼ大隊旗の薔薇を咥えたドクロに由来し、国旗も旧大隊旗を使用した。
輸送機で到着したエリゼ女王は国家元首として就任、この日この地で第一帝政が樹立された。第一帝政では陸海空全ての軍が女王の統率化に置かれ、議会も全て廃止。いわば完全な独裁体制が敷かれたとだが、これに文句を言うものは誰もいない。
というのも現在の戦争は海軍が暴走と政界の利権争いが開戦の大きな要因となった。つまり、軍と政治の決定権をエリゼが一任した事は国民の総意でもあったのだ。
これにより、先日独断で帝都を焼き払った空軍のホフマン少将は暴走の危険あり、そう判断され即日指揮権を剥奪された。かわりに旧エリゼ大隊で信用のおける現空挺降下部隊所属のカール・ルードルが新たな少将に任じられた。
ルードル少将のもとにはエリゼの命令で計50機の戦闘機が配備され、彼らの部隊はすぐに飛び立ち、東ローザ奪還を目指す帝国軍に空から機銃掃射を浴びせ撃退する戦果を上げた。
「いやぁ懐かしいな。砲台が元通りになってるじゃないか。」
「ありがたいことに3番砲塔まで完成してますね。」
フリードベルク市街の丘には、帝国軍の工兵たちが復旧完成させた砲台群が無傷で残されていた。砲弾は全てエルゼ王国侵攻のため外部に運び出されており、我々が侵攻して来たことに気づいた時には自爆処理ができなかったのだろう。
砲塔は蒸気式から油圧電気式に改装されており、蒸気爆発による施設員の蒸し焼きが起こらなくてすむ。敵さんには感謝だな。
我々の占領に気づいていない市民たちは今日も弾薬工場をフル稼働させていた。後で彼らにも現状を伝えねばなるまい。できる限り問題は起こしてくれないことを祈る。
その他の朗報といえば、兵器の製造ラインは人類の企画にあった物が残され稼働し続けていたので弾薬や車両の部品はそのまま使用できる点だな。
帝国の互換性がない武器は警察機構に配備され、戦車などは新型の対戦車携行ロケットの練習用標的とされた。
「要塞砲に航空兵力、機甲師団の拡充も得て我々の守りは盤石になったなアルト」
「そうですねユーキ参謀。この備えが半年前にあればと思いましたが2度目の陥落はさせないためと考えればあの犠牲も無駄ではなかった。そう信じることにします」
アルトはタバコを吸うようになったのか。エリゼも気がついたらヘビースモーカーになっていたが、やはり背負うストレスが多いと人間変わるものだ。
翌日
我々人類がこの地に戻り、エルフたちとの共栄共存を約束する勝利を演説がなされた。旧東エルフ共和国の残党は強制労働から開放され市民権が復帰した。
これにより、街では労働者たちによる酒盛りが各地で見受けられ一部治安警察が出動するほどの酒乱騷ぎも起こった。
「ユーキよこの状況をどう見る」
「えぇ、互いの国民は相手国への憎悪と報復心に燃えてますね。まず戦争は止まらんかと思いますが」
エリゼはそうだと答え、葉巻を握り潰し消した。
ならば我々はどうすべきだと思う?殲滅戦か?
それとも防衛のみに徹するべきなのか???
良い答案の答えが浮かんでは消え、またその繰り返しで何も進展しない。進むのは時計の針と歩兵の足並みだけだ。
重苦しい空気の静寂を伝令への声が破る。
「伝令!現エルゼ王国左派革命政権が先程崩壊致しました!南部戦線も崩壊、エルフらによる王国市民の虐殺が各地で多発しているとのこと」
我々東ローザ共和国は難民受け入れのため、速やかに山脈地帯に蔓延る帝国軍残党を包囲殲滅する!各部隊の動員を急げ、エルゼ王国からの難民を全て受け入れるのだ。
ユーキはため息をつき、エリゼの目を見て一言
「最終戦争の時が近いかと。」
「最終戦争、、最終戦争か、、」
気がつけば燃えるような夕日がこの先の未来を暗示しているように執務室を紅く照らしていた。




