奪還作戦
さて、エリカ率いる機甲部隊。
そして歩兵軍団は北部の拠点に続々と集結し、攻撃の発令を待っている。
ユーキは参謀は新型の爆撃機に搭乗し、敵帝都空爆に参加。改めて航空機による攻撃の有用性を肌感覚で感じていた。
巨人機は6機しか完成していないがそれでも帝都を直接攻撃できるのは、帝国の勝利を確信していたエルフたちに再度戦争の恐怖を思い起こさせるきっかけになった。
新たに発足した航空部隊司令ババリア・ホフマン少将は帝都への新型魔力爆弾の投下を進言してくる。
あれは都市1つを丸々と吹き飛ばせる兵器だ、そう簡単には使えない。
帝国側は爆撃機の飛来はエルゼ本国からと誤解し、エルゼ方面への空中戦艦の割当数を増やしていると聞く。
もう一撃あれば、エリカの機甲師団や歩兵軍団が空からの脅威に晒されず安全に敵帝都に入城することができるだろう。
そうこう考えているうちに、ホフマン少将が大きな事件を起こしてしまった。爆撃機部隊によるナパーム弾、粘着性ガソリンを敵帝都に投下する命令。
ユーキが一度ドワーフの国へと戻り、戦況報告と物資確保のため前線の席を空けた1週間の出来事、爆撃機部隊は日に2度出撃させられ、敵の攻撃が届かない高高度から投下、帝都の4分の3を焼き払ったのだ。
「何と言うことだ!敵の帝都を焼き払っただと?!しかも前線基地のガソリンもナパーム弾として大半を消費?!」
あぁ、これは敵の報復精神に火をつけたぞ。しかも俺は後で確実に財務長官にどやされる。胃が痛い。
前線基地に戻り、聞いた報告によると帝都は人類への報復で沸き立っているらしい。また、先日の空爆で燻り出され帝都近郊に集結した敵の戦車はゆうに500両はあったとの書類も目に入る。こちらは戦力を再編し前哨基地に集結させた超重戦車2両と中戦車が60両。
車両数だけなら戦力差は8倍弱。この圧倒的な数の車両数はおそらくエルゼ王国を踏み潰すための備えだろう。一応ドワーフたちの工場で生産された歩兵用対戦車携帯弾は我々の足りない車両数を補うために数を揃えつつあるのだが、飛距離は50メートルしかない。
百戦錬磨のエリゼ大隊や共和国残党のドクロ部隊が使えばそれなりの効果は出るのだろうがどうしたものか。カーリナのはからいで前線の防衛陣で指揮を取っていたアルトが後方に下がり、今朝我々の前哨基地で久しぶりの再会を果たした。
「よく生きてた。お前がいないと嫁の愚痴も言えない。お前の奥さんは、生まれた子供共々保護してるから安心しろ」
「ありがとうございます。そうですか、ありがたい限りです」
アルトはかなりやつれている。どうやら東エルフ共和国崩壊時の自決は完全な誤報で、影武者が絶望して自殺したのを見間違えられたらしい。当の本人は地下の脱出通路から北方へと逃亡。ドワーフたちの国へ向かう途中カーリナ率いる北方民族達に捕縛されたのだとか。
アルトは地図を開き話を始めた。今現在、帝国はエルゼ王国への空爆と陸上戦力の輸送能力を強めている。しかし、片道1000キロもの往復はいくらマンパワーのある大国でもかなりの資金と人手がいる。
帝国側は徐々にではあるが疲弊してきている。
だが、帝都の守りは万全。この場合突っ込んで行っても良くて共倒れか最悪我々の全滅かの2択。
であれば東エルフ共和国の領土を北方から攻撃して占領、東へ伸びる敵の輸送網を遮断し東方に進軍した敵軍を包囲するのが一番だ。
スパイからの報告によると共和国の兵器工場はほぼ無傷で敵の手に落ち、現在の帝国による占領後は拡張と増産体制が敷かれているらしい。
「しかも、要塞は修繕され今は帝都空爆と東方への遠征で東エルフ共和国の首都の防備は薄い。今がチャンスですよ」
エリゼとの無線連絡協議の末、エリゼ大隊発足時から生き残った強者を含む300名を各超重爆撃機に60名ずつ分乗させたパラシュート部隊を編成。
電撃的な侵攻と敵への情報漏洩を恐れ、作戦は夜間に実施。既に軍団は何時でも動ける状態にあったため一気に南下。パラシュート部隊降下1時間前に首都北部の街を奪還した。
「素晴らしい、そのまま首都に突入し奪還するのも手だが要塞や工場地帯は無傷で手に入れたい。」
帝国軍は想定していなかった。東エルフ共和国の首都フリードベルクに人類が奪還作戦を仕掛けてくるとは。一度捨てられ、山脈の向こう側に引き下がった人類がまさか北方から攻めてくるなんて。エルフたちは完全に寝込みを襲われ、枕を蹴り上げられたのだ。
戦車隊は塹壕の兵を轢き殺し、歩兵たちが小銃で後始末を行った。首都上空には数百のパラシュートが花開き、帝国の行政機構と司令部を強襲し占拠した。
東エルフ共和国の首都にエリゼ大隊旗、薔薇を咥えたドクロの旗が翻る。
首都を防衛していた帝国の部隊は次々と降伏し、中央広場に集められた。武装は全て解除され噴水前に大量の小銃と弾薬が山のように集められた。
抵抗する部隊もあったが、百戦錬磨の特殊部隊に新兵同然の連中が勝てるはずがない。
5ヶ月間、半年近くたった今日この日
共和国領は再び西方への足掛りとして
人類の領土に戻ったのである。




