新兵は突撃する2
戦車がガトリング砲を撃ちまくりながら前進を開始、エリカたちの中隊は馬に乗り前進を試みた。
「よし!前進しろ!」
新エリゼ中隊は騎馬突撃を開始した。
しかし、敵の軍勢は混乱こそしているもののあまりにも数が多く、半ば狙い撃ちにされる状態に陥る。中隊はやむなく馬を盾にし、結局は肉弾突撃を開始。
前線の至るところで、肉薄攻撃による塹壕内での戦闘が再開した。
この間、要塞砲は射程距離ギリギリの敵司令部を狙い撃ちし、見事それらを壊滅させる事に成功した。
しかし、第二砲台の主砲内部で砲弾が爆発。
砲台は大爆発を起こし、巨大な砲塔が宙を待った。
第二砲台の消失で絶え間ない砲火に間が空いた。当然、その隙を敵の魔術師たちが見逃すはずがない。奴らが一斉に動き始めた。
「ま、まずい!狙い撃ちにされるぞ!」
前線には敵のゴーレムが幾つも出現し、投石を開始。凄まじい勢いで飛んでくる巨石に戦車は正面から押し潰され次々に撃破、爆散していく。
この日行われた大攻勢は占拠された味方の塹壕奪還に成功。当初の目的通りの戦果を納めた。さらに前線を3キロ押し上げることに成功し、砲撃による敵司令部の壊滅も確認された。
しかし、100万以上の敵兵力はいまだ健在。
こちらは、新エリゼ中隊の半分と随伴した歩兵大隊のうち12098名が戦死。戦線に投入した戦車10両全てが破壊された。
また、要塞砲一基はいまだに火が収まらず炎上中。
進撃は完全に止まり、膠着状態に陥った。
新エリゼ中隊含めた最前線の各部隊は、仮設の塹壕と土嚢に身を隠し、後方の待機部隊の到着を待った。後方部隊は占領地に素早く展開し、陣地構築に取りかかる。
「くそ、これではらちがあかない。このままではいずれ敵軍の物量で押し潰されてしまう。」
「大丈夫だアルトよじきに良い知らせが来るはずだ。」
エリゼが会議室でそう言った二日後、事態は大きく進展した。エルゼ国の軍艦5隻が敵の帝都を強襲、2時間に渡る艦砲射撃を実施し敵の空中戦艦と兵器工場、市街地を徹底的に破壊したという報が入る。
「海軍は損傷を受けて帰還してのでは?」
アルト司令は驚き、ユーキに詰め寄る。
「わるいわるい、撤退したと見せかけて反転強襲を実施させたのだよ」
そう、ユーキ参謀は軍に敵国のスパイや裏切り者が入り込んでいると考えていた。そのため、エリゼ女王と艦隊の提督のみ事前にこの計画を提案し、実行する手はずになっていた。
「つまり、我々は前線を押し上げ、敵の首都の攻撃にも成功したと」
「あぁ、敵に大打撃を与えたことにはなるな」
読み通り、スパイに情報が入らなかったようで敵国の首都は大混乱に陥っていた。
意表をつかれた敵軍の行動は時がたてば、前線への支援の停滞という形であらわれるだろう。
「エルトこっちだ!早く持ってこい!」
「向こうのトーチカは完成したぞ!」
エリカたちのいる最前線には土嚢袋が大量に送られ、特設陣地が次々と作られていく。
「ふむ、あとは持久戦か。ユーキよ私は本国に帰る。後は任せた」
「ええ、女王。気をつけてお戻りください」
「アルト司令。任せたぞ」
「はっ。わかりました」
表面上は我が方に優位な状況で戦線が押し上げられ、膠着状態に入った。これを確認したエリゼ女王は司令部をあとにした。
エリゼは本国からの支援継続の約束をにこやかにサルマト宰相と交わし、午後の汽車で王都への帰路に着いた。
そうだ。はなから、この戦に勝ち目などない。敵が我々と同等の兵器。そして、我々以上の兵力を持っている現状、敵に大打撃を与え、戦線の維持と即時講和を模索することが重要だ。
エリゼ帰国から二週間、はかなくも和平交渉は中断され、敵軍の増援を確認。
おそらく、先の本土攻撃が油を注いだのだろう。
交渉が失敗に終わったことは非常に残念であるが、防衛陣地を強化できる時間稼ぎにはなった。
連合軍側は何としても帝国軍の進行を送らせる、アルト指揮官のもと砲兵隊を最前線から3キロ後方に前進させた。防御陣地に近づく敵兵に容赦ない砲撃を慣行。最前線に配置されたガトリング砲は接近した敵兵に無慈悲な銃弾の雨を浴びせた。
我々はできる限り戦線を維持し、時間を稼ぎ続けるのみ。
幸い、弾薬製造工場と前線までの距離が25キロと短く、我々は持久戦に有利な環境にある。
「問題は、兵隊の数ですか。」
「そうだな」
こちらは開戦時の最大兵数85万人から、今は最大44万人に減少。敵の兵力は最低でも我々の2倍以上の100万以上が残存。敵は指揮系統こそ麻痺しているが、前回の教訓から至るところに防御陣地と塹壕を構築している。
フリードベルク市内では希望する民間人の疎開が始まった。移住先は、エルゼ国かドワーフの受け入れ先の二択。蒸気機関車は日の運行数を増やし、疎開者たちの輸送回数を限界まで増やした。
だが、折り返しのエルゼ本国からの支援物資は日をおうごとに減少していく。
支援物資の減少は、本国であの結論が通ったのだろう。
「アルト、これが二週間前にエリゼが置いていった交渉失敗時用の命令書だ。」
「流石国王、準備のいい」
俺はアルトに命令書を手渡した。
もちろん、エリゼは国王だ。
命令に私情は挟むことはない。
~命令書~
交渉失敗時は、断固フリードベルクを死守せよ。四ヶ月以上持ちこたえることを期待する。




