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北極圏進軍

11月後半、帝国によるエルゼへの攻撃は日増しに強まっていた。

海軍基地や王都近郊の諸都市へ空中戦艦が空爆を開始。多くの弾薬人員を喪失したと聞く。


エリゼ、ドワーフの技師、そしてユーキは首都エルドラドより西に三十キロ地点にある工場郡を視察した。工場内は油と鉄の匂いが充満している。


「これが、例の試作品か」

「はい。既に量産体制に移行しています」

かねてよりドワーフとの共同研究で開発されていた、防空能力を飛躍的に向上させる計画が起動に乗ったとの報告を聞き、その試作品の説明を受ける。


「これは精製されたガソリンで動き、時速300キロで飛行可能。機関銃2門と爆弾20キロを2つ搭載可能です。」

「なるほど、これが航空機というものか」

「ええ、ありがたいことに航空機工場は国策の一環として我らがドワーフの国で独占生産させて頂いとります」


「そうだな。エルゼ国に輸出し、金も技術もつくか。羨ましいことだ」

「はは、痛いとこをつきなさるな」


革命政権が樹立したエルゼ国にも、既に数日後十機が供与され、迎撃戦闘機として配備、空中戦艦相手にそれなりの戦果を上げているらしい。

2枚羽のプロペラ戦闘機、第一次世界大戦期のような仕上がりだ。ユーキはそう思いながら、ドワーフたちの説明を受けた。


「エリゼ女王と契約を結んではいたものの、厚かましいとは思いますが、革命政権側に量産機を送っている点についてはどうかご理解を、、、」


「仕方あるまい。革命政権であろうが奴らが帝国に負ければ、次はここだ。それに、君たちドワーフには何時も世話になってる。そんな相手にケチなんかつけられるものか」


エリゼの返答に安堵した責任者は胸を撫で下ろし、エルドラド近郊に駐屯しているエルゼ王国軍にも機体を供与することで話がついた。帰りの馬車に俺とエリゼが乗り込むと、エリゼは小さな声で話し始めた。


「おい、ユーキ。先程の工場見学はどうだった」

「機体の供与や生産数の把握ができて有意義だった。と思いますが、気になる点が」


エリゼは目を細め、「続けろ」と言う。

「十番まで工場があると聞いていたのですが、その奥にもう一つ工場とは違う大型の格納庫らしきものがありました。」


エリゼはあれを見たのかと言わんばかりに口元を緩めた。


「ここからは他言無用だぞ。」

エリゼはタバコに火をつけ煙を燻らせる。


「あの中にはな、超重爆撃機の機体が保管されている」

重爆撃機??そういえば、工場のラインで戦闘機とは違うもっと大きな機体用のエンジンが組み立てられていたな。


「あれは極秘の計画機さ。二年前から密かに秘密軍事費を投入し続けていたものがようやく実ったといったところだな。格納庫の中には既に完成された5機の機体がエンジンの完成を待っている」


エリゼは秘密資料をユーキに投げ渡した。

そこには図面が書かれており、ユーキは驚かされた。手前の工場では、第一次世界大戦期の航空機が量産されていた。しかし、その奥では密かに先進的な大型レシプロ機が組み立てられていたとは!!!

なるほど、手前の工場地帯は大型機量産ラインを隠すためのカモフラージュか。

いやはやドワーフたちの技術は本当に侮れないな。


エリゼは二本目のタバコに火をつけながら言う。

「ガソリンエンジンの起動は戦闘機同様魔力で行う。やはり電気駆動のポンプは未完で信頼性がないのでな。今の科学の力はこれが限度だ。」


大型爆撃機は理論上は既に飛行可能な状態ではあるのだが、精密機械の信用性がほぼ0に近い。そのため、航空力学を専攻させた魔道士を搭乗させ機体の安定操作を行うのだそう。


欠陥の多い点を除けば、あの6発の大型エンジンを積んだ巨人機が戦線に投入されれば間違いなく戦局はひっくり返るだろう。


巨人機のスペック

全長20m

横幅38m、エンジン6発

機体重量19 トン、最高時速350キロ

爆弾5トン、防衛機銃8丁


「なるほど、カーリナ率いる連中にガソリンをしこたま北方に運ばせている理由がわかりましたよ。戦闘機が使うのにはあまりにも量が多かったので不審に思ってたいたので今理解しました」

「ああ、お前の想像してるとおりだ。あのガソリンは巨人機を帝国の帝都頭上まで飛ばすためのものだ。」


11月上旬から、親衛隊の一部が北極圏にいくつもの前哨基地を作りそこに多くの燃料が犬ぞりや車両で運び込まれ続けている。この基地を線上に飛んでゆけば帝国の真北。アルレナ盆地の最前線に行ける。


「12月だ。それまでに軍団を北方の最前線に集結させる。そして巨人機の完成を急がせるのだ」

「わかりました。それまでに手配しておきます」


ユーキはこの日から、徹夜が続くことになる。

南方のエルゼ国の戦況報告書を纏め、北方の物資輸送の状況確認。エディンの艦隊による対空中戦艦戦の命令発令。潜水艦での精霊王国港湾に停泊中の帝国輸送船団への雷撃指令など。


できる限り、ドワーフの王国に影響が出ないよう

軍事的な援助をおこなった。


「だいぶ疲れてるようだなユーキ」

「はは、4徹したのは東エルフ共和国樹立の時依頼だな」


その間、我々は軍団を3つに分けて北極圏を通過させた。カーリナのいる帝国北方。彼の地にできるだけはやく進軍させた。

今年の雪は細かく風に舞いやすい。ソリも軽快に滑るため輸送も順調に進んだ。


ハンニバルのアルプス超え同様、我々は油断した帝国の背後を取ることに成功しつつある。完成した重爆撃機は轟音を轟かせ、北方の空へと飛んでゆく。


「進軍と物資輸送は滞りないようで何よりだ。」


先の対戦で経験した、雪山や豪雪地帯の踏破は無駄にはならなかった。今最前線に立つエリカはその指揮を取っていることだろう。


「さて、我々も行きますか女王」

「いや、私はここに残る」


エリゼはドワーフ達に恩義を感じており、またエルゼ王国の行く末を危惧しこの場から離れることはできないのだ。

そうか、わかった。

ユーキは輸送機に乗り込み、最前線の前哨基地へ飛んだ。



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