新しい世界についてはなそう!
エルフとの初戦で圧倒的な勝利を掴んだ俺たちは、勝利の美酒に酔いしれていた。
「まさかエルフ軍が進攻してくるとはな」
「100年以上侵攻はなかったと祖父から聞いたが」
若い連中が話していたが細かいことはどうでも良い。
我々は午前中に王都を凱旋した。
午後は王族や貴族の夕食会に呼ばれ。晩餐会では新兵器の説明を行い、今後の作戦科拡充の約束も取り付ける事にも成功した。
晩餐会が終わると、そのまま町に繰り出し浴びる程の酒を飲んだ。
「中佐殿!おつぎ致します!」
「あんがとう、お前も飲んでるかぁー?!」
ユーキの階級が中佐にあがり、エリゼの少将への特進も祝う宴会が始まった。
「あ、そう言えばこの間来た歩兵科師団長の処分決まったらしいっすよ」
アルト曰く、我々に喧嘩を売ってきた魔導歩兵科の師団長はエルフ側のスパイと通じていて、明日国家反逆罪で公開処刑されるのだそう。
それは兎も角、作戦立案科による大勝利の噂は国内に広く知れ渡った。
「なぁ、聞いたか?我が科に入隊希望が続出してるとか」
「かわいい子入ってこねぇかな」
新兵たちが沸き立つ中、奥の席では大ジョッキを既に6杯飲み干したエリゼ少将の姿が見えた。
アルトから酒癖の悪い少将からダル絡みされる前に距離を置くべきだと言われ、そっと席を立ったが
「おいこら!ユーキどこにいく?!わらひはここにいるぞ、わらひの酒をのめねぇってのかよ」
(おいおい、誰かコイツの醜態を止めろ!)
俺の周りからスーッと同僚たちが距離を取りはじめた。
(俺に酒乱のおもりをしろと言うのか!!)
「ウグッ!!!痛い!」
エリゼはビールのジョッキをむりやり俺の口に押し当てる。
「アヒャヒャヒャヒャ、あそれ一気!一気!」
(まって、それアルハラあぁぁ)
エリゼにヘッドロックされ逃げることもままならない。俺の胃袋には次々とビールが流しこまれた。
~深夜2:00を過ぎた頃~
ヴォェェェエッオェェェェエッ!?!!
アヒャビャビャ!!ユーキ中佐がゲロッぞぉwww
「おいお前ら!この間も乱チキ騒ぎしやがって!出禁だ出禁!」
店主はたこ坊主のように顔を真っ赤にさせ叫んでいた。
「すいませヴェォオエッッッ」
「フッザケンナコルァァ!!!」
~翌朝 作戦科のオフィスにて~
二日酔いで頭痛と吐き気が、、、。
国王陛下との約束はつつがなく実行され、作戦立案科と魔導歩兵科を統合、戦略歩兵科の新設が行われた。
「これで新部隊が作れますねエリゼ少将」
「ああ、死ぬほど忙しくなるぞ」
ここまでは良かったのだが何とエリゼ少将は一般の男女問わず、体力優秀者を試験的な新部隊員として採用、配属する命令を出したのだ。
(中世ヨーロッパなみの価値観の世界でこれはまずい気が、、、)
「責任者をだせ!一般人どころか女もいる部隊をつくるとはなにごとか!!俺たちは名誉ある魔道歩兵だぞ!ふざけるのも大概にしろ!」
そらきたよ。
現場指揮官が怒りに身を任せ、殴り込みの直訴に来た。一般の平民ならまだしも、女も武器を持って戦うなど、彼ら古いタイプの職業軍人が許すはずがない。
「責任者を早く出せ!!!」
現場指揮官は剣を抜き、近くの棚を切りつけた。
戦略歩兵科の職員が一斉に私の方を向く。
「チッ、」俺は舌打ちをした。
(確かに構想を練ったのは俺だけどさ。大元の発案者で命令出したのエリゼ少将だろうが)
「貴様か!決闘だ!私が勝てば白紙撤回しろ!!」
現場指揮官は一方的な決闘を申し込んできた。俺の体格を見て勝利を確信したのか鼻で笑った。
(確かに、俺は歩兵のゴリラたちと比べれば細いけど何か酷くない??俺も一応軍人よ)
「時は明日の朝!日の出の頃とする!!場は大通りの噴水前!!」決闘時刻と場所を宣言をすると現場指揮官は私を睨み、サッサと部屋から出ていった。
エリゼ少将は数分後、ニヤニヤしながら入出してきて私を見ていった。
「おや、もうこんな時間!貴族方とのお茶会に呼ばれていたので今日はこれで失礼するよ。明日は頑張り給えよ!」
そう言い残し、部屋を出た。
「・・・・・ハッ?!?!」
そうだ!オモイダシタ!!!
~昨日のアルハラ記憶回想~
「いいか、魔道士はプライドが高い。当然納得いかん事があったら決闘を申し込んでくる者もいるだろう」
「水だぁ、そんなことより水をクレェェ」
よし、水をやるから話を聞けぃ!
「ようするに明日のユーキの仕事は決闘を申し込まれたらそいつをぶっ飛ばすことだ。反対派を力ずくで黙らせるのだ。負ければ君の首はリアルに飛ぶだろう、私のキャリアも吹っ飛ぶだろう。だか、私は君の開発した新兵器を知っている!余裕で勝てると確信している!」
~回想終了~
(うわぁぁっ、やられた。エリゼの野郎、俺にシコタマ酒飲ませて嫌な仕事押し付けたんだあのやろう!)
俺は怒り心頭で机をバンバンと叩いた。
(まぁ、叫んだところで変わらんか平常心、平常心、ナムナムナムナム)フーーッ
(怒りの圧が消えた、、、)
エディンとアルトは顔を見合わせた。
「よし、俺今日はこれで帰るは!みんなお疲れ!」
静まり返る同僚たちをあとにユーキは帰宅した。
夕方、鍛冶屋に立ち寄る不気味な笑顔のユーキが目撃されたが。
それはともかく、明日の日の出の時刻ユーキは大通りの噴水前に現れるのだろうか?
職員たちの不安は時が過ぎることに増していった。
〜 翌朝 〜
ドンドンドン!ドアを勢いよく叩く音がする!
(あ、いけねぇ今日決闘の日か?!?!)
ドアを開けると空が白み始めていた。
(アブねぇ。時間には間に合いそうだな)
「って、酒くさぁぁっ!?!」
「あんしんしりょー。私は今日非番だ!」
(エリゼ少将。元を辿ればあんたのせいで俺はこんなことに、、。)
酔っ払いの醜態を見たら怒りを通り越して呆れてきた。
「んなことよりブツはしっかり持ってんだルぉうな?」
「何で知ってんすかww」
「おーん?私の諜報力舐めんじゃないわよ」
俺は急いで部屋に戻ると、手のひらサイズの例のブツを2丁ポケットにしまった。
〜 大通り噴水前 〜
大通りの噴水前には多くのギャラリーたちが集まっていた。見届け人の貴族方、どっちが勝つかの賭ける野次馬どもの群れ。
俺がこの場に到着すると決闘相手は叫んだ。
「逃げないでこの場に来たことは誉めてやる!だが、お前が来たことで俺が不戦勝勝ちする未来に賭けた金はパーだ!!」
ガハハハ、アハハハハ
群衆はどっとわいた。
「逃げる事なんかねぇつの、このハゲ!」
「武器は持って来なかったのか??」
「こいつでやらして貰う!」
ユーキが懐から取り出した不思議な形をした鉄の棒、それを見て相手も群衆も大笑い。
「何だあれ!」
「ガハハハ、バカじゃねぇの!」
「おい賭け金を帰せ!あいつの敗けだ!」
見届け人は聴衆に向かって静まるように叫び、両者に問うた。
「お静かに!さてさて、両者とも準備はよろしいですかな??でははじめっ!」
「キェェェェェッッッツ!!!」
相手は刀を抜き一気に斬りかかってきた。
シュッ!!!風切り音が聞こえた。
紙一重、ユーキは後ろにその跳び斬撃をかわしたが魔力を持った剣がかすり、右耳の下半分を持っていかれた。
(たいした腕だ。だがな一撃で殺さなかった事を後悔しな、、、)
ズドドン!!辺りに鈍い破裂音が響き渡る。
「う、ウッッッ、、」
相手はよろめき後退りした。
手から剣を落とし、手で胸を押さえた。
ほぼゼロ距離の射撃。外すわけがない。
ズドン!ズドン!と辺りに鈍い破裂音が響き渡った。ユーキは相手に3発しっかりと撃ち込み、最後の一発を眉間に発砲した。
相手は絶命した。
無慈悲かつ科学を知らない人々が初めて目の当たりにしたこの理解不能な攻撃で場は静まり返った。
後日談になるが、この日を境に俺とエリゼ少将に対する軍内部での風当たりは変わった。謎の武器から音がなれば人が死ぬ。そんなものを持った相手に大っぴらに楯突くものはいない。当然と言えば当然だ。
エリゼ少将はダークブルーの髪を風に揺らし、満足そうな表情で噴水のフチに腰かけ酒を煽っていた。
「いい顔だユーキ中佐、ようやく男の顔になったな。よくやったありがとう」
労いの言葉をかけるエリゼ少将の顔、日の当たる顔は女神のようだが、影の半面は悪魔のようにも見えた。
ともかく、俺は決闘に勝った。労いの言葉を貰った俺は、その場で特別休暇を貰った。
「今日はこれで失礼します。少将は一日酒でも飲むのですか?」
「まーな。あ、ちょっといいか?」
エリゼはユーキの手を引っ張った。
「少将、おれ疲れて、、」
「黙ってこい!」
俺はエリゼ少将から邸宅に招かれ、朝食に付き合うことになった。馬車に乗りエリゼ邸へむかった。邸宅の庭は広く、芝生は青くよく手入れされている。
「芝生!手入れがよく行き届いてますね!」
「まぁな」
上野の西洋美術館みたいな建物だ。
(吹き抜け天井、、、凄いな。)
少将はチェスが好きなのだろうか、室内の手すりは大理石で駒の彫刻が施されている。
(おお、これは東方の海を越えて来たという陶芸品じゃないか!?)
客室で待機し骨董品を眺めていると、ようやく執事が呼びに来た。二階の会場に誘導され、俺は背広を着せられた。少将は純白の第一種礼装だ。
「ふむ、よく来てくれた我が軍師よ。では食事を始めようか」リリリン
ベルの音がホールに響き、朝食会が始まった。着席後、前菜、主菜、メインの肉と魚が一定のテンポで運ばれてきた。どれも旬の素材を生かしたメニューで旨い。
ユーキが感動していると、少将が口を開いた。
「口にあったようでなによりだ。では、我が軍師よ先程使ったあの兵器について聞きたいのだが」
「はい。説明します。」
俺は今回使った新兵器について説明した。この兵器は戦に多きな影響をもたらすこと。鍛冶師の手で量産可能な事を説明した。
エリゼ少将は面白いおもちゃを得た子供のように目を輝かせてユーキの話を聞いた。
締めのデザートとコーヒーが運ばれてきた頃、少将は再度ベルを鳴らし、部屋にいる従者を全て退出させ、今後の方針についてを話し始めた。
「説明ありがとうユーキ。明日から新兵器の増産を始めたまえ!そして今日から一週間以内に素晴らしい事が起こると約束するぞ!」
「素晴らしいことですか??」
エリゼ少将は何かを企んでいるときの笑顔をした。
「ああ、詳細は明後日の新聞を見ればわかるだろうよ。1つ明かせるとしたら、世界を取るということだ。お前はこれから忙しくなるぞ。」
エリゼはそう言うと席を立った。
こうして、朝食会は終了しユーキは帰宅した。
明後日、朝の号外を見て驚愕した。
「号外だよー!」
「首相が毒殺?!」
作戦立案科と魔道歩兵科の統合に最後まで反対し、予算削減を訴えていたカール首相が毒殺された。
「号外!今度は高級貴族が相次いで行方不明!」
夜の号外では、戦争反対とエルフ、精霊との対話を望んでいた穏健派の貴族たちが相次いで行方不明になった。
それから一週間の内に12名の軍拡否定派の要人たちが次々と暗殺された。もはや軍拡を止められるものは政界からいなくなった。
マリーナ国王陛下は戒厳令を発動し王都を閉鎖、治安維持のため男女の性別を問わず国の治安を護る新部隊の発足と拡充を命令した。
戒厳令が敷かれ、月一で行われていた最高軍事会議が週三回の開催となった。エリゼ少将は三日連続で出席し、俺はそこから開示された情報に目を通した。
1. エルゼ国の情勢不安は瞬く間に諸外国に知れ渡ったこと。
2. 北のドワーフの国は中立、南の精霊の国は様子見。西のエルフたちの国は好戦的な姿勢を示した。
というのも、エルフたちの領地では昨年の記録的な凶作で領民からは不満が続出。エルゼ国の情勢不安を知り、軍を送り込もうとしていた。
「これは大きな戦争になりますね。」
「ああ、これを見ろ」
先のオーデル川の戦闘で4000人ものエルフが死亡。人類への報復という大義名分を掲げたエルフ軍の軍事侵攻が目前に迫っていた。
(そして、今朝届いた密偵から直で手渡された情報には、、)
"至急、エルフたちは兵を招集中。規模は約10万。進行は二ヶ月以内。現在敵の先遣隊2000の出発を確認"
「マジかよ。」
我々の正規軍を遥かに上回る敵兵力が今まさに動き始めていた。




