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火薬で無双の準備だよ

この世界は実に興味深い

図書館で得た重要な情報は以下の5つだ。


1.文明、文化レベルは中世ヨーロッパ並み

2.この世界は魔法文明が栄え、科学は衰退し邪道とされている。

3.人間以外の種族の国がある

4.エルゼ国は三つの国に囲まれ、北部は穀倉地帯、南部は砂漠、西部は火山・山岳地帯で東は海に面している


そして最後の5つめ、これが今日得た情報で一番大きい。


5.人間の国家は魔力・国力ともに人外の国家より劣っており一部の国からは差別対象とされている。


(だからか、、、)

俺は世界地図に視線を落とす。

我らがエルゼ国はゴリアテ大陸の東、いわゆる最果てに存在。これは人類が繁栄しにくい土地に押し込まれた何よりもの証拠だ。


だから、人口もそこまで多くないのねと勝手に納得した。


幸いとも言えるのが、人類を毛嫌いするエルフのガルマニア国が西の山岳地帯を越えた先にあり、簡単には攻めてこないことだ。


比較的友好的かつ人類に近い種族のドワーフの国ガザリアは穀倉地帯がある北にあった。エルフのガルマニア国と友好関係にある精霊国家メネス朝が死の砂漠を挟んだ南に位置した。


頭痛くなる配置だなぁ


この世界ではどうやら科学技術は邪教のように扱われているらしく、エルフや精霊の国では科学を研究したものは問答無用で火炙りの刑になるとのことだ。


なんか、中世ヨーロッパの地動説と異端審問みたいだな。


その点、生存圏をいつ失うかわからない人類は精霊工学と称して、密かに科学技術を研究しているらしくその辺は寛容だと言えた。


一通り調べものを終え、俺は鉱物の分布図が載る専門書を借り、寮へ直帰した。


こちらの世界にきて半年が過ぎた。

仕事にも慣れ、職場内でのコミュニケーションもうまくいくようになった頃、俺は朝一番エリゼ少佐に書類を提出した。


「ほお、『鉱山資源の採掘量と長期戦の関連性』か、面白い。現地調査、行ってきていいぞ」


「ありがとうございます!」


「ただ、鉱物資源なのに何故砂漠地帯にもいく必要があるのだ??」


「火薬を作るためです」


「かやく???ま、何でもいいが気をつけて行ってこい」


(我々が魔力量で勝るエルフに勝つには科学で押し切るしかないだろ)

俺はそう思いながら少佐からの許可を貰い、鉱物資源を保管する小屋を町外れに1軒借りた。また、遠征用の馬車3台と馬主、部下を3名と護衛の騎士を手配してもらった。


「ふん、なんだってあんな頭しか使わない部署の護衛なんかしなけりゃいかんのだ」

「担当の騎士たちかわいそうだね~」


相変わらずうちの科に対する風当たり強い。聞こえるレベルの嫌味が廊下を通るたびに聞こえてきた。


たが、この不遇と逆境をはね除け、国を反映させるのが軍師の腕の見せ所だ。


ハードな状況に燃えてきたぜ!!


荷物の積み込みが終わり、目的地の西方アルドー山脈へと馬車を進めた。


片道三日ほどの旅路。道中はこれといった問題もなく、西の国境より50キロ地点、アルドー山脈に連なる活火山帯に到着した。


「よーし!荷物をおろせ!」

我々は谷の上に馬車を止めた。


「ユーキさん!ここで一体何を?!?!」

「いいかお前たち、つけたらいいと言うまで絶対にこのマスクを採るなよ」


長い牛の腸でできた管がつながる革製のマスクを装着し、20m程谷をおりた。


「?!?!」

「ド!ドラゴンだ!!」


最年少の部下1人がパニックを起こし、マスクを外してしまった!

(ば!バカ野郎!)

有毒ガスを吸い込み即死した。


「ヒイイイイッッ?!?!魔法か?!魔法なのか!!」

「落ち着けお前たち!これは火山ガスの仕業だ!見ろ!ドラゴンも瘴気を吸い込んで死んでいるだろ!!」


俺はパニックになりそうな部下たちを落ち着かせマスクを外すなと再度指示した。


探索隊はさらに20mほど下りお目当ての物を見つけた。硫黄である。


我々は馬車から伸ばしてきた糸を強く引き、硫黄の発見を知らせた。


程なくしてヒモのついた樽が上から転がってきた。我々はその樽にできる限り多くの硫黄を詰め込み、死亡した部下の遺体もくくりつけ、引き上げさせた。


さて、馬車3台に満載した硫黄は少佐に手配してもらった王都郊外の小屋に届けさせ、俺と部下2名は南の砂漠地帯へ南下した。


「暑いですね曹長」

「まさか、ここまでとはな」


部下の一人、アルト青年は飲水を切らした。

体感では、気温は40℃を超えていた。

南部は行商人の交易路に小さな町が点在した。一応2つほど大きな街があるがそれ以外は道を見失えば間違いなく干からびる地獄の砂地だ。


喉乾いた、、水を水をください!


ユーキはアルトに水筒の水を分け与えた。

我々は2日近く砂地を彷徨った末にようやく南部で一番大きな町、ゴルディア近郊までたどり着いた。


その時、馬が倒れた。飲水は既に底を尽きてしまった。

(こ、ここで終わりなのか、、)


意識が朦朧とするなか

「旦那!大丈夫かい!水!おい水をとりな!」

誰かが俺に声をかけ、揺さぶった。

 



目を覚ますと俺は個室のベットに寝かされていた。

窓の景色は夕方の燃えるような夕陽をうつしていた。


「お?やっと目覚めたかい?あんたたちよくあの砂漠を馬で渡ろうとしてきたね。普通はラディアに乗るもんだよ」


どうやら、干からびかけの俺たちは買い出しに出ていた酒屋の女将の一行に助けられたらしい。


女将は酒をのみなが話した。

砂漠はラクダに似たラディアという生物と渡るのが常識で馬は数日も持たないとのことだ。事情を話すと女将は帰りのラディアを人数分手配してくれた。


「それより、別室の若いのかなり重症だよ一命は取り留めたけどね」

部下の1人、エディンは脱水を引き起こし顔は乾燥し腫れているとのこと。


申し訳ないことをした、だが俺は国の命運を担っているから後悔はしていなかった。


(もう一人の部下、アルトはどうした、、)

俺は辺りを見回した。


「あー、もう一人のアンちゃんは町の娼館に繰り出したよ。」


あのやろう。性欲の権化みたいなやつだと前々から思ってはいたが、、ともかく女将には感謝しかない


「あと、あんた女将って呼ぶのやめてくれよ。私はそんな年食ってないよ」


「わかったよ、エレナさん」




気づけば外にはあさひが昇りはじめていた。

「実は、この砂漠地帯にとある鉱物資源を探しに来たんだ」


エレナの髪を撫でながら身分を明かし、砂漠地帯に来た理由を話した。

「なんだい、それなら運が良い。うちの死んだ親父はむかしこの辺りで金鉱石を掘ってて、この辺の鉱石には詳しかったんだ。その時の資料が倉庫にあるはずだよ」


エレナは服を着て、一階へ降りていった。

俺は二度寝し、次に目覚めた頃には日は高くなっていた。


エレナ特製のチーズバーガーは本当に旨かった。


うま、これうまいな!

そりゃそーだろ!焼きたてだよ!


食後、鉱石のありかが事細かく書かれた日記帳を見せてもらった。エレナはどうせ捨てるもんだから必要な人にやるよと押しきられるかたちで日記帳を貰った。


目当ての鉱石がある閉ざされた炭鉱は町を出て、東に20キロの地点にあった。

俺は一人で炭鉱に向かい、サンプルを集めた。それが終わると炭鉱の場所と町からの位置が目視でわかるよう、1キロごとに赤い目印の杭を1週間打ち込み続けた。


仕事が終わり、町を去る前夜にエレナに別れを告げた。


「また、今度時間ができたら来ておくれよ」

「ああ、今度は休暇中に来るさ」

これを最後にエレナと再開することは2度となく、彼女は2年後の冬結核で亡くなった。


訃報を知ったのは彼女の友人張に記載された俺の名前と所属部署を頼りに送られてきた一通の手紙だった。




「おお、戻ったか」

「ハッ!エリゼ少佐、只今帰還しました!」


地方遠征は滞りなく完了した。


遠征するためにでっち上げた『鉱山資源の採掘量と長期戦の関連性』についてのレポートもしっかり提出。砂漠で手に入れた硝石、火山地帯で採取した硫黄のサンプルも手渡した。


この後はかねてからの計画通り、長期休暇を申請し王都の郊外に借りた小屋で火薬の製造を行った。


鍛冶職人には、事前に中が空洞になった特注の鉄球を20発発注済み、準備は完璧だ。


「ん?何か匂うぞ」

エリゼ少佐がこちらを睨む


「え?あ、すみません硫黄だと思います」


「いや、違うな女の匂いだ」

(ギクッ!!)

「まぁ、いい長期休暇楽しんでこい」


嫉妬した女の顔をする少佐に少しドキッとした。


「はい!ありがとうございます!」


俺は遠征を行った部下のアルトとエディンとともに2週間の長期休暇に入った。


~酒場での遠征打ち上げ~

「ほれほれ~どんどん飲めよエディン!!」

「うっす!頂きます!」

「アルトも、、おっと」ジャバァァ

「うぎゃあぁぁ!顔の傷にしみるぅ!!」


「ギャハハハハ!!」

オエエエエエオロロロロ


飲めや歌え、吐けや叫べのバカ騒ぎは休暇に入る前夜から翌日の日中夜にかけて行われた。

上司のエリゼには苦情が殺到し、棍棒を持った少佐が店に乱入、1か月の減給処分を言い渡された。

 




さて、長期休暇も残り一週間、鍛冶屋に発注した特別な鉄球20発が郊外の小屋にようやく届いた。


20発の鉄球はサイズが大きいので空洞の入り口を下にして雨水が入らないよう保管した。



休暇明け、俺は早速新兵器の開発成功をエリゼ少佐に報告した。

「ほう、トレビシェット用の新型弾を開発しただと?」


新型弾は言わば火薬を詰め込んだ巨大な爆弾。

トレビシェットは簡単に説明すると巨大なシーソーのような投石機だ。  


大砲も火薬も使われていないこの世界で、敵陣に爆弾を投げ飛ばす!こんな愉快な事があろうか??


ユーキはこの新型弾の威力を力説した。

「これが量産されれば魔道歩兵の攻撃なんて蚊が刺す程度!頼りになる武器になりますよ!」


ユーキの迂闊な発言が不味かった。たまたま廊下で聞き耳を立てていた、魔道歩兵師団長に聞かれてしまった。


「ほほーう、それは素晴らしいですな。我々は君たちと違って忙しく、休暇を作るための変わりの戦力を欲していましてねぇ~」


師団長はニヤニヤしながら一枚の戦況報告書をエリゼ少佐に渡す。


西方の山岳地帯を越え、エルフの魔道歩兵と魔道騎士の混成大体が村々を襲撃、情報によると人数は合計で3000。王都より北西35キロ地点、オーデル川を挟んだ対岸に陣地を構築中。


「な!おい師団長これはどういうことだ!!エルフたちの襲撃は聞いていたが2週間でここまで侵入されるとは何事か!!!」 


エリゼは聞いていない。なぜ今頃話すのだと師団長に怒り狂った。


「まぁまぁ、エリゼ殿そう騒がないで下さい。我々の軍団は南部砂漠地帯での不穏な動きを押さえるために半数が出払ってまして~」


(くっ、このクソ師団長は部下を安全地帯に引っ込めるつもりか!仮に王都が陥落してもこいつだけは生き残りそうだ)


「いいでしょう!その仕事受けます!」

ユーキは師団長の前に立ちはだかり言い放った。


「おい、正気かユーキ?!失敗したらどうなるか?!」


「わかっています小佐。その代わり師団長どの。我々がエルフの軍団を見事撃滅した暁には、今後魔道歩兵科はエリゼ少佐の指揮下に入ってもらう!!」


「えぇえぇ、いいでしょうとも」

(フフフ、バカで間抜けな青二才の小僧が!仮に勝ったとてだれが口約束なぞ守るものか)ニチャャ


その時、作戦科の扉が開いた。

「今の言葉しかと聞いた。存分にやってこい褒美は望みの通りにする」


「あ、、あなた様はぁぁ、、、」

ニヤケ顔の師団長の顔が崩れ、明らかに動揺していた。


「マ、マリーナ国王?!?!」

師団長の足が震えた。


「パパァッ?!?!」

エリゼは素を出し、国王をパパと呼んだ。

 

「パパ??え?パパ!!」

ユーキと師団長は驚いた。


「そこの若いのそのいきや良し。だが、曹長では階級不足じゃろて。原刻をもって貴殿を中佐。上司のエリゼ少佐も少将に昇格させる」

急な昇進きたぁーーーー。


「お待ちください陛下、それはあまりにも」


「黙りなさい。あと君の身柄は一時的に拘束させてもらうぞ。エルフ軍の動きが怪しい、誰かが手引したのだろう??」

「・・・・・・。」


「では、あとは若い男女二人で頑張りなさい」

「ハッ!必ずや任務遂行致します」


国王たちは退出し、部屋には昇格して中佐になったユーキとエリゼ少将が残った。


「つか、何で国王がこんなところに、、」


「あのお方は昨今の軍の腐敗を憂いていておられる。たまに清掃員に化けて、いきのいい愛国心ある若い軍人を探しているのだよ」


「え?マジですか」

「ああ、マジだ」


取り合えず、軍師として活躍できる環境が一気に整う、ビックイベントが起こった。俺は舞い上がっていた。





~  西方オーデル川防衛陣地 ~

(まさか、こいつの出番がいきなりの本土決戦とはな、、、)


敵陣までの距離は、川を挟んで300メートルほどでトレビシェットの射程距離までまだ距離がある。だが、エルフの戦闘魔法の有効射程距離は最大で80mでリーチの差は圧倒的にこちら側にあった。


「総員!点検を急げ!導火線をつけるのだ!」 

エリゼは大声で命令を飛ばした。


「弾をセットしろ!」

これから始まるのは一方的な虐殺劇に他ならないだろうが、勝利を掴み取るには非情になるべきだ。


「ユーキ中佐!火薬の重点が終わりました!」

「よしきた!」


ユーキは目配せでエリゼに合図した。

「導火線に点火!打ち方始めっ!!!」





~エルフ魔道部隊~


「少将!ご報告いたします!敵陣に大型のトレビシェットが五機!進軍する我々に弾を飛ばそうとしております!」


「人間はアホよのう。あれは城を攻撃するための道具じゃ、それに飛んできたならば、戦闘魔法で撃ち落とせばよい!」

敵の司令官は笑いながら部下の心配を一蹴した。


「そ、そうでありますな!流石少将殿!やはり人間どもは猿と同じ、やることはたかが知れておりました。」


「やや!敵が撃ってきたぞ!」

「よく引き付けてから撃ち落とせ!」


鉄球がエルフたちの頭上に達した。

「未だ!迎撃しろ」


ズドーーーンッッ!!!!


エルフ軍の迎撃で上空の火薬が大量に詰められた鉄球が炸裂した。四方八方に高速の破片が撒き散らされた。


この一回目の射撃で迎撃したエルフ魔道歩兵たちは全員即死した。少し後方で待機していたエルフの歩兵たちはモロに爆風を受け、生き残った歩兵たちにも重傷者が続出していた。


エルフの少将「う、腕ガァぁッッアアア」

敵からは悲鳴とうめき声が聞こえた。


双眼鏡から目を話した観測手からは「上空で爆発!敵の被害大」との報告がはいった。


エリゼは再度射撃を命じた。

「手を休めるな!第二射放てぇっ!」


第二撃は全て地面に着弾、土砂を巻き込んだ五つの爆煙を確認した。爆発で吹き飛ばされたエルフたちは空高く舞い、地面に叩きつけられ文字通りばらばらになった。


「まだだ!打ちまくれ!」


20発の鉄球を全て撃ちつくすと

敵陣は跡形もなく吹き飛んだ。


戦場が静まり返り、調査兵が偵察から戻ると現場は血と焦げた肉片の匂いが充満していたとのことだった。


科学が魔法に勝利した歴史的な瞬間であった。

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