決戦 エーレ湖畔の戦い
魔道騎兵と魔道歩兵を戦闘に軍団は5日間前進した。あの小高い山の向う側がエーレ湖だ。
我々は道中で敵の小隊と何度も遭遇し、遠距離から打ち合う小規模な戦闘も起こった。
だが王国側の防衛陣地は道中に一つもなく、大規模な戦闘はなかった。
あまりに何も無さすぎて逆に気味が悪い。
空は澄み、風と日差しが心地よい。
戦車の上で仰向けになり、うとうとしていた俺にエリゼ中将は聞いた。
「なぁ、もし古代兵器が我が国にあったらどう思う?」
「戦争がなくなって俺はお役御免ですかね。平和になったらやりたいことがないんで、俺死ぬかも知れませんね」
「ほんとお前は。もっと人生の楽しみ方を増やした方がいいよ。」
俺は社畜時代、両親や周りの目を気にし、趣味のゲームすら満足にできず、半分鬱になっていた事を思い出した。
「やりたいことをやる。今の人生はそれで十分なんです」
「そうか、お前のやりたいようにやればいい。後悔しないようにな」
後悔か、あの時俺は両親に反抗して自分のやりたいようにやっておけばよかったのだろうか。今の俺には想像もできない、別の未来もあったのだろうか。
俺は空を見上げていると
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
ユーキ「く!空中戦艦だ!後方上空!」
エリゼ「何?!後方からだと?!」
双眼鏡で確認すると、反王権派貴族の旗。
間違いない!帝都にいたカーリナの三隻だ!
我々の頭上、かなり高い所を飛んでいる。
「や!ヤバイ!総員!散れ!散開しろ!」
あまりに高い高度を飛んでいたため誰も気づかなかった。発見が遅れ、俺が叫んだ頃には既に火薬の詰まった鉄の樽が数十発投下されていた。我々の頭上めがけて爆弾が降ってくる。
「車両!全速!急いで左へ進め!」
ズドーーン!ズドドーーーーン!!
爆音で鼓膜が揺れる。車体も揺れる。
敵は反復攻撃をせず、そのままエーレ湖の方へ飛び去っていった。
ユーキ「クソッ!クソが!」
エリゼ「やられたな、あのくそ女め」
かなり高い場所から投下された爆弾は、そのほとんどが広範囲に広がるように落ちた。直撃弾こそなかったものの爆風と破片で8両が大破した。時間差で炎上する車両も出た。
我々の車両もキャタピラが破損していた。
交換している暇はない。
こうしている間にも、我々のいないところで古代兵器の奪い合いが始まっている可能性が高い。
「やはり、最後はこれに頼るほかない!」
エリゼ中将は騎兵の馬に乗った。
馬主は既に頭と胴体が泣き別れていた。
俺も残っている馬を探し、飛び乗った。
エリゼ中将「ここから先は我々と第一エリゼ軍団の最精鋭200名で行く!我々が日没までに戻らなければ大破した車両を全て爆破しろ!帝都にも早馬を行かせ、全軍は速やかに旧フリードベルクまで後退だ!」
各大隊長たち「了解しました!」
ユーキ「バドゥーはいるか!」
ばどぅー「はい、ここにおりますとも」
ユーキ「我々が戻るまではお前が、総司令官代行だ頼むぞ」
バドゥー「了解です、お気をつけて。お戻りをお待ちしております」
この時、既にガルマニア帝都は100万の兵に飲み込まれ、反王権派貴族たちの手に落ちていた。
~ エーレ湖畔 グランサソ臨時首都 ~
「宰相どの、裏切り者たちがエーレ湖畔に着陸しようとしています」
カーリナ率いる三隻の空中戦艦はエーレ湖畔に着陸姿勢をとり、宰相のもとに報告が届いた。
「やつら、よくもこの私をこのような姿に、目にものを見してくれるは」
元軍事長官サルマトを裏切り、反王権派の貴族に裏切られた宰相は、帝都で大火傷を追い瀕死の状態から回復していた。怒りに震える手には血と体液が滲み出ている。
「奴らにあれをお見舞いしてあげなさい。」
宰相は王権派軍人たちに命じ、着陸した反王権派軍人たちへの攻撃を開始させた。
~ エーレ湖畔 ~
カーリナ「ようやく着きましたか」
カーリナは船上から湖を見下ろし、紅茶を啜った。
兵士A「か、カーリナ様大変です!ガーゴイルが!ガーゴイルの群れが突っ込んできます!」
船体が湖畔近くに着陸すると同時に、空から宰相が送り込んできたガーゴイルの群れが、魔石を持って突っ込んできた。
カーリナ「狼狽えるな!奴らには魔法しか効かん!魔道歩兵!迎撃せよ!撃ちまくれ!」
宰相は手元に残された魔道戦力を全て導入し、ガーゴイルを使った戦艦への猛爆撃を開始した。
エルフの歩兵たちがガーゴイルを迎え撃つ。無数の閃光がガーゴイルたち目掛けて放たれた。ガーゴイルたちは魔法の弾幕を掻い潜り、エルフたち目掛けて魔石を投下した。
甲板では爆発が起こり、兵隊たちは木の葉のように吹き飛ばされた。
執事A「カーリナ様、ここは我らに任せて我々は神殿へ」
倒れた兵の変わりが船倉からつき次と甲板へ上がってきた。
カーリナ「ええ、可愛い部下たちの溜めに一刻も早く古代兵器を召還しませんとね」
カーリナたちは船の下層へ降りて行き、巨人起動の準備を開始した。
外では、撃ち漏らした敵のガーゴイルが再度魔石を持って飛していた。歩兵たちが空に気を取られている隙に、王国の騎士や歩兵が一斉に船体に近づき、船に乗り込み始めた。
ユーキ「おお凄い、まるで某魔法映画みたいな光景だな」
エリゼ「何を訳のわからんことを。それより、頃合いを見て我々も船に乗り込むぞ!」
エリゼ率いる特殊部隊は近くの森で突入の機会を伺っていた。




