表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《記憶の鍵と風の旅人》  作者: 夢乃
第一章:風の鍵
PR
13/18

第十二話:鉱山の入り口

 東へと進んだセイとリィナは、谷を抜けた先の険しい山道を進んでいた。木々は徐々に少なくなり、代わりに岩肌が露出した斜面が続くようになる。標高が上がるにつれて空気もひんやりとしてきて、鳥のさえずりすら聞こえなくなっていた。


 「この辺り、ほんとに人が通ってたのかな……」


 リィナが吐く息が白くなり、肩で呼吸を整えながらぼやいた。


 「地図には載ってないけど、鉱山跡があるって情報が古文書に残ってた。父さんたちは、あえてそういう場所を選んでたのかも」


 セイは短剣を手にして、軽く柄の部分をなでた。すぐにそれがわずかに震え、刃の奥に眠る“何か”の気配を伝えてくる。


 その反応は、確かにこの山の中にある。


 山道の途中、小さな獣道のような分かれ道があった。草に覆われていたが、何かが通った痕跡がかすかに残っている。


 「……こっちかも」


 ふたりは慎重に草をかき分け、道なき道を進んでいく。数分も歩かないうちに、大きな岩の向こう側に灰色の建物が姿を現した。古い石造りの構造物で、半ば崩れかけていたが、入口らしき場所ははっきりと残っている。


 「見つけた……これが、鉱山の跡地?」


 リィナが目を見張った。近づくと、錆びた看板が斜めに突き刺さっており、そこには“管理棟”という文字がかすかに読み取れた。


 「中、入ってみよう」


 セイが扉に手をかけた瞬間、短剣がびりっと鋭く震えた。


 「……記憶がある。しかも、強い反応だ」


 中に足を踏み入れると、薄暗い空間に埃の匂いが充満していた。床は石畳で、ところどころ苔が生えている。壁際には古びた棚が並び、その多くが倒れていた。


 「ここ、もしかして……避難場所みたいに使われてたのかな」


 リィナが足元を照らしながら進む。やがて、奥の部屋の一角に、崩れた机の陰から何かがのぞいていた。


 「セイ、これ……手帳?」


 リィナが拾い上げたそれは、革表紙の小さな手帳だった。ページは何箇所か破れていたが、いくつかの記述が読める状態で残っている。


 『物資の補充完了。次の“記憶の鍵”は南部の礼拝堂にて受け渡し予定。リオ=ファングの指示による』


 「リオ=ファング……父さんの仲間だ。確か、記憶の刃の保管に関わってた人物」


 セイの声に、リィナも息をのんだ。


 「じゃあ、この場所で“鍵”が一度保管されていた可能性がある……」


 手帳の奥から、もう一枚の紙片が落ちた。それは、擦れて読みにくくなっていたが、こう記されていた。


 『保管者は一名に限定。“影の男”には注意せよ』


 「……影の男?」


 セイとリィナは顔を見合わせた。旅の中で、そんな呼称を聞いたことはなかった。


 鉱山の空気が、急に冷たく感じられた。


 記憶の残響とともに、ふたりの旅は次の局面へと移ろい始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ