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探偵は胸を揉む  作者: リチャード裕輝
【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました

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【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました エピローグ

エピローグ:循環する運命と孤独の英雄


魔王ルクセリアが漆黒の霧と共に消え去り、サロンには静寂が戻った。

その時、ゴォォン……!と船体が大きな波に打たれ、激しく震えた。


と同時に、薬の効き目が薄れ、奏太の指先に感覚が戻り始める。ゆっくりと上体を起こすと、目の前には、かつての「怪盗巨乳」の面影もなく、制服がぶかぶかになった平坦な胸を抱えて震えるアヤノがいた。

彼女は、絶望に濡れた瞳で奏太を睨みつけた。


「……ふふ、あははは! 見たわよ、あの魔王。凄まじい独占欲ね」


アヤノはふらつきながら立ち上がり、力なく笑う。しかし、その瞳の奥の「怪盗」としての火は消えていなかった。


「でも、忘れないで。胸なんて、単なる飾りよ。大きさが変わったって、あなたの『純潔』を狙う私の執念は変わらない。次はもっと巧妙に、魔王の目すら逃れて……あなたの童貞を奪ってあげるわ。魔王にだって負けないんだから!」


彼女はそう言い残すと、夜の闇に溶け込むようにサロンから姿を消した。


「……やれやれ。呪いの上に、ストーカーまで増えたか」


奏太は溜息をつき、乱れた衣服を整えた。その時、肩にズシリと重みを感じる。


「キュイッ!」


黄金のミニドラゴン・ヴォルガが、当然のように奏太の肩を定位置に決めていた。その黄金の瞳は「逃がさないぞ」と言わぬばかりに光っている。


「……それにしても、ユウキくんが遅すぎる。船長への報告なんて、もう終わっているはずなのに」


不吉な予感に駆られ、奏太はヴォルガを乗せたまま、ユウキが向かったはずの通路へと急いだ。角を曲がった先、薄暗い廊下で奏太が見つけたのは、壁にもたれかかって意識を失っているユウキの姿だった。どうやら彼は、先ほどの船の大きな揺れで壁に頭を強く打ち付けたようだった。


「ユウキくん! しっかりしろ!」


駆け寄り、その肩を揺さぶる。その瞬間、奏太の右手のブレスレットが激しく共鳴した。奏太の脳裏に、この世界のものではない「向こう側」の情景が、ユウキの思念として流れ込んできた。


【異世界:聖王国イシュタル】


そこは、抜けるような青空の下、歓喜に包まれていた。新国王として即位したヤマトの結婚式。その警護の陣頭指揮を執っているのは、今や王国最強の将軍として名を馳せるブリュンヒルデだった。


「――各員、気を引き締めろ! 英雄・久我奏太が愛したこの国の平穏を、一瞬たりとも乱すことは許さん!」


凛とした「真の声」が式典会場に響き渡る。彼女の肩には、あの日奏太が貸した上着を仕立て直した特製のマントが翻っている。その隣には、兵士長へと昇進したガルドとスニークの姿があった。


「へへ、将軍は今日も気合が入ってるな。奏太の野郎が見てたら、また呆れられるぜ」


「よせよガルド。……でも、あの白銀の関所から、俺たちの運命は変わったんだ。あいつが命を懸けて繋いだ未来だ、守り抜かなきゃな」


ガルドとスニークは、自分たちの出世を喜びつつも、今はなき(と彼らが思っている)友への敬意を忘れていなかった。


新国王として即位したヤマトは、豪華な王衣に身を包んでいるが、その隣で微笑む王妃イシュタルに完全に尻に敷かれているようだ。


「ヤマト、背筋を伸ばして! 今日は私たちの結婚式なのよ!」


「わ、わかってるよ……。でも、あのルクセリアの魔力に耐えた時より、今のプレッシャーの方がキツいんだけと……」


その様子を、一段下で見守るレイジとユリア。


「あいつらも大変だな」


レイジが苦笑いすると、ユリアがその腕にそっと自分の腕を絡め、少しふっくらとし始めたお腹をさすりながら微笑んだ。


「私たちも、そろそろ準備が必要ね。……この子も、授かったみたいだし」


「ああ。まさかこの世界で生を授かるとは。平和になったこの世界で、貴方達を最高に幸せにしてみせよう」


奏太が去り、エルフィが世界のシステムを「性による経験値取得」から「生命の神秘」へと再定義した結果、世界は正しく回り始めていたのだった。


そして、王都の中央広場には、異世界を救った英雄の石像が建てられていた。

そこには、凛々しく、どこか哀愁を漂わせた「久我奏太」の姿が刻まれている。


「久我様、見ていますか……。貴方のおかげで、みんな幸せですよ」


レイジが空を仰いだその時、王宮の転生者召喚の間に、一筋の光が降り注いだ。


「待て、新たな転生者か!? レベルが ∞(無限) だわ!」


光の中から現れたのはユウキだった。現実世界で数々の女性と浮名を流してきた彼の「人生経験」は、エルフィが再構築した新システムにおいても、異常なまでの経験値として変換されていた。


「……どこだ、ここ? 船の揺れで頭を打っただけなんだけど……」


ヤマトが鑑定スキルを使い、戦慄した。


「こいつ、現実世界であらゆる女を食い散らかして『経験』を積みすぎだ! 経験値がカンストしてやがる!」


かつて最強を誇ったレイジが、呆然と呟く。


「……なんてレベルだ。私でも敵わない。なんと言うことだ。久我様ではなく、こちらが本物の勇者だったというのか……!」


叫ぶユウキの前に、光の創造主であるフェアリー、エルフィが現れた。

彼女は奏太の時のような「清浄なる記録者」としての仮面をかなぐり捨て、目を$マークにして、口角から涎を垂らさんばかりの食欲を剥き出しにしている。


「ちょっとアンタ! その美味しそうな、濃厚すぎる経験値……私に頂戴な! あの時のLv.1の童貞(奏太)は清浄すぎて毒味にもならなかったけど、このドブ川のように煮詰められた女難の経験値、最高だわっ! 逃がさないわよっ!」


「わあああ! 来ないでくれ! 僕は女の子たちと遊ばなきゃいけないんだ! 帰りたいよーっ!」


【現実世界:オリエンタル・クイーン号】


奏太は、気絶したままのユウキの顔を見て、ふっと口角を上げた。思念を通して見えた、あちら側の平和な光景と、災難な助手の姿。


「……あいつの方が、向いてるのかもな」


あのフェアリー・エルフィが奏太にキスをしたのは、単なる「味見」に過ぎなかったのだ。不味かったからこそ、彼は無事に帰されたのかもしれない。

奏太は、窓の外に広がる広大な夜の海を見つめた。

片手には魔王の呪い。背後には執念深い怪盗。そして、異世界へ魂を飛ばした最強(最凶)の助手。


「キュゥ?」


肩の上で、ヴォルガが不思議そうに首を傾げた。


「さて、孤独な童貞探偵の夜は、まだまだ長くなりそうだ。……行こうか、ヴォルガ」


海風が、彼の少しだけ寂しげな、けれど確かな満足感を含んだ呟きをさらっていった。


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