【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました 第二十七章 エピローグ
第二十七章 ∣ エピローグ ∣ 怪盗巨乳の変貌と童貞の孤独
異世界の終焉と真実の愛の記録、そして呪いの再来
空間が歪み、エルフィの魔力に押し出されるように、奏太の意識は元の世界へ弾き戻された。
「……っ、ぐあッ!」
頭に鈍い、ガンと鳴るような痛みが走る。鼻孔には、船室の絨毯の埃と、焦げ付くようなローションの匂いが混じった、極めて現実的であり、そして淫靡な臭いが届いた。久我奏太は、自分のいる場所が、豪華客船「オリエンタル・クイーン号」のダイニングサロンの絨毯の上であることを認識した。
「久我さん! よかった! 意識が戻った!」
すぐそばには、顔面蒼白のユウキがいた。彼は心配のあまり、その凡庸な顔を歪ませている。
「ユウキくん……」
「大丈夫ですよ。犯人はもう捕まえて、船員と警察に引き渡しました。久我さんが頭を打たれて倒れた後、あの女は抵抗せずに観念しました」
すべては、頭を打って意識を失っていた間の夢だったのか? 想像主エルフィ、Lv.9999のレイジ、Lv.7000のユリア、Lv.7のヤマト、そしてLv.∞の魔王……。全てが、一瞬の白昼夢。
「お疲れ様でした、久我さん、いや巨乳探偵さん」
もう一人の探偵が、皮肉めいた笑みを浮かべて奏太に声をかけた。奏太は、ぼんやりとしながらも、ユウキに頭を下げた。
「ありがとう、ユウキくん」
その瞬間、奏太の右手の感触に強烈な違和感を覚えた。まるで、世界一柔らかく、Lv.∞の温もりが、まだ掌に残っているかのような感触だ。右手首を見る。そこには、暗い輝きを放つブレスレットが残されていた。魔王ルクセリアがくれた、あのブレスレットだ。【契約の証】。
「……え、何これ」
奏太はブレスレットを触ろうとしたが、触れることができない。周囲を見渡すと、ユウキにはそれが見えていないようだった。そして、脳裏に魔王の最後の言葉が、Lv.∞の重みをもってこだました。
『あなたの童貞は私がもらうのよ。浮気は許さないわ。イチャイチャさせないから』
【性魔術解析】の呪い。愛する女性、すなわち「経験値」を持つ者に触れると、その愛する者を「穢れの媒体」として失う。そして今、奏太は、魔王に永遠に童貞を監視され、その初体験を独占予約される呪い、という究極の皮肉を背負ってしまったのだ。
ユウキは周囲を執拗なまでに警戒しながら、奏太の耳元に唇を寄せた。その吐息には、隠しきれない困惑と、どこか場違いな嘲笑が混じっている。
「久我さん。あの犯人の口から、もう一つ、信じがたい……いえ、おぞましい情報が漏れました。この船内に、『男の純潔を奪い去ること』のみを目的とした、国際的な怪盗が潜伏しているらしいんです。通称『怪盗巨乳』。変装の達人で、獲物を狙うその手口は残忍なまでに甘美だとか……。なんでも、一点の曇りもない『清浄な童貞』の証をコレクションしているそうです」
ユウキはそこで言葉を切り、奏太の横顔を覗き込むようにして、わざとらしく肩をすくめた。
「……もっとも、久我さんのような方が、いまだにそんな『数字』を保持しているはずもありませんから、杞憂だとは思いますけどね。くくっ、失礼しました。では、僕は船長にこの事実を報告してきます」
ユウキが立ち去り、人気のないサロンに静寂が訪れる。奏太は、右手のブレスレットを強く握りしめた。脳裏に魔王の言葉がリフレインする。この現実世界での『童貞狙いの怪盗』の存在は、今や奏太にとって究極の脅威だった。
数分後、船医室の重い扉がゆっくりと開き、一人の女性が姿を現した。
看護師、アヤノ。
はち切れんばかりの双丘を強調した白い制服に身を包み、慈愛に満ちた笑みを浮かべてこちらへ歩み寄ってくる。だが、その光景を目にした瞬間、奏太の背筋に氷柱を突き立てられたような悪寒が走った。
「あら、もう大丈夫ですか。よかったわ」
彼女の声は優しく、温かい。しかし、奏太の脳内では「探偵」としての思考回路が、警報音と共に冷徹に回転を始めた。
(……待て。何かがおかしい)
アヤノの歩法。一切の足音を立てず、絨毯の上を滑るように移動するその動きは、看護師のそれではない。獲物の背後に音もなく忍び寄る「捕食者」の気配だ。さらに、彼女の指先――。医療従事者特有の手荒れ一つなく、極薄のラテックスを纏っているかのように異常に滑らかで、解錠用の器具を扱った際に残る特有の微かな「擦れ跡」が見える。
何より、その瞳だ。
慈愛を湛えた笑みを浮かべているはずなのに、瞳の奥からは一切のハイライトが消え失せ、底なしの沼のような虚無が広がっている。
サロンの照明がチカチカと不自然に明滅を始めた。アヤノの背後の影が、異常なほど長く、禍々しく蠢いているように見える。彼女が放つ、濃厚すぎるローションと鉄錆が混じったような異臭が、奏太の感覚を麻痺させていく。
(こいつが……『怪盗巨乳』か!)
「捕まえたぞッ!!」
奏太の右手が電光石火の速さで跳ね上がった。思考を上回る神速の技――「俊手」。回避しようとしたアヤノの虚を突き、奏太の掌は、彼女の誇る巨大な肉の果実に、服の上から深く食らいついた!
「あぁっ!? ……ふふ、さすがは探偵さん。気づいていたみたいね」
アヤノは、首を不自然な角度に折り曲げ、冷たく微笑んだ。その瞳が、暗闇の中で獣のように鈍く光る。彼女は奏太の腕に、隠し持っていた注射器を迷いなく突き立てた。
「この薬、意識を保ったまま全身の自由を奪うの……」
「っ……身体が、動かない……!」
薬物の霧が全身の神経を支配し、床に倒れ伏す奏太。視界は歪み、音は遠のくが、意識だけは異常なほど鮮明なまま、指一本動かせない。その時、異世界で得た【性魔術解析】が、奏太が意識を失っていた間の「辱めの記録」を、最悪のタイミングで脳内に強制再生させた。
(解析された辱めの記録)
意識不明の奏太を、アヤノがニヤニヤと見下ろしている。
「あら、寝ていてもこんなに正直……」
彼女は意識のない奏太のズボンを無慈悲に引き剥がし、その柔らかな指先で奏太の「聖域」を執拗に、ねっとりと弄んでいた。無意識のはずの奏太の身体は、彼女の巧みなテクニックに反応し、情けなくも屹立ち上がってしまっていた。
「さっきは、あの男の子のせいで邪魔されたけど、もうこうなったら、今ここで全部奪ってあげるわ」
アヤノはエロティックな手つきで、自らの白い制服のボタンを一つ、また一つと弾き飛ばしていく。溢れ出した全裸の双丘が、倒れ伏す奏太の顔を覆い隠さんばかりに迫る。
彼女は全裸のまま奏太に跨がり、耳元で熱い吐息を漏らした。
「ふぅ……」
奏太の首筋に湿った舌が這い、全身が快感と恐怖で粟立つ。
「さあ、始めましょうか。ふふ、ここだけは動いてるわ……身体は正直ね」
アヤノの濡れた秘丘が、奏太の熱を帯びた屹立をゆっくりと受け入れようとする。暖かい、生々しい感覚が先端を包み込み、いよいよ「童貞」が失われようとした、その刹那――。
(これまでか……。あの異世界でも、魔王を前にしてすら守り続けてきたのに……。俺の『清浄な童貞』が、こんな女に奪われるのか……!)
「――私の独占予約品に、よくもその汚れた穴で触れようとしたわね」
濃密な魔力の霧の中から、全裸の巨乳を晒した魔王ルクセリアが、凄まじい威圧感と共に瞬間移動で出現した。魔王は、奏太に跨がり腰を下ろそうとしていたアヤノの髪を掴み、そのまま床へと無造作に叩きつけた。
その肩には、小さな黄金の影。
「キュイッ!!」
「ヴォルガ……!?」
ミニドラゴン・ヴォルガが、怒り狂ったように翼を逆立て、アヤノへ牙を剥いていた。異世界で奏太の“清浄”を見続けた存在。主の危機を察知し、魔王と共に現界してきたのだ。
「ふん。こいつも怒ってるわ。貴方の童貞は、異世界では国家機密級の保護対象だったもの」
「キュィィィィッ!!」
ヴォルガはアヤノの白衣へ飛びかかり、布をズタズタに引き裂いた。
「ひぃっ!? な、なによこのトカゲ――!」
「トカゲじゃないわ。奏太の“最後の清浄”を知る守護竜よ」
「ル、ルクセリア! ごめんなさい! これは……っ」
奏太は痺れた舌で必死に訴えるが、魔王の怒りは収まらない。
「謝罪は無意味よ。本来ならこの女を塵にし、貴方を異世界へ連れ去るところだけど……今回は、この女に『永遠の罰』を与えて見逃してあげる。二度と貴方の気を引けぬよう、この女の『経験(穢れ)の象徴』を消し去ってあげるわ!」
ズゥン!!
鈍い音と共に、アヤノの豊満な巨乳が、まるで空気が抜けるように急速に萎んでいく。
「ひ、ひぃいッ! 私の、私の宝物が――!!」
怪盗巨乳アヤノは、平坦になり果てた自らの胸を掻きむしり、絶叫しながら泣き崩れた。魔王ルクセリアは、奏太の耳元に最終通告を叩きつける。
「いい? 罰は保留よ。貴方は一生、孤独な童貞探偵を続けること。もし次に私の許可なく女に触れたら……その瞬間、私が貴方を異世界に連行し、永遠に二人っきりで監禁する! 私の童貞! 次はないわよ!」
魔王は満足そうに微笑み、一瞬で消滅した。
静まり返ったサロンで、奏太だけが荒い呼吸を繰り返していた。
そして――。
「キュゥ」
足元から、小さな鳴き声。見ると、消えたはずのヴォルガが一匹だけ、その場に残っていた。
「……お前、帰らなかったのか」
ヴォルガは当然のように奏太の肩へよじ登り、鋭い爪を立てて定位置を確保する。右手のブレスレットが、淡く脈動した。
『監視役くらい残しておかないと、貴方すぐ浮気しそうだもの。……ヴォルガ、変な女が近づいたら、迷わず焼き払いなさい』
脳裏に響く、魔王の呆れた声。奏太はガックリと頭を垂れ、絶望に顔を伏せた。
「……俺の日常、完全に終わったな」
目の前で泣き叫ぶ「怪盗貧乳」と、肩で目を光らせる黄金の「監視竜」。久我奏太は、救いようのない宿命を背負い、かつてないほど賑やかで孤独な、日常へと戻ったのだった。




