【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました 第二十六章 その5
第二十六章 その5:終焉の玉座・反逆の咆哮
「さあ早く! もう時間が動き出しちゃいますわ!!」
「いくぞ……風属性魔法・神速ッ!!」
奏太は、フェリスから教わった『シャイニング・ブースト』を限界を超えて発動させた。静止した大気を切り裂き、光の矢となってルクセリアの懐へ飛び込む。
(そうか……時が止まっている。つまり、吸われることすらないんだ……!!)
停止した時間の中では、あらゆるものを飲み込む「ブラックホール乳首」の吸引機能さえも沈黙している。
「全力だぁぁぁぁ!! レイジィ! ユリぁぁあ! ヤマトおぉ!! お前たち、力を貸してくれぇッ!!」
仲間たちの顔を胸に、奏太は光速の極点に達した。
プルン。
奏太の両手がついに、魔王が晒していた神々しいまでの巨乳を、強引に、かつ深く握りしめた。
「……っ!!」
柔らかい。今までの人生で触れてきた、どの女性の胸よりも、圧倒的に柔らかく、そして熱い。静止した時間の中でも伝わってくる、魔王の強大な生命力の鼓動。
「つかまえたぞ……ルクセリアッ!!」
奏太は全ての魔力を掌に収束させ、魂を込めて叫んだ。
「【性魔術解析】……発動ッッ!!!!」
奏太の視界が、真っ赤に濁った涙の膜で覆われていく。
脳内に流れ込んできたのは、怒りでも憎しみでもなく、ただただ、ひび割れた心から漏れ出すような、逃げ場のない「悲しみ」の集積だった。
「ガハハ! ラッキーだったなぁ、おい。魔王のやつ、こんな可愛い娘を隠してやがって」
石造りの冷たい床に、少女の細い手首が叩きつけられる。
男の汚れた手が、少女の尊厳を無造作に蹂躙した。呼吸を塞がれ、少女の瞳は恐怖で焦点が合わず、ただガタガタと震えることしかできない。その幼い首筋に、獣じみた吐息が吹きかけられる。
暴力的な質量が、折れそうなほど細い腰を無慈悲に押し潰す。
少女がどれほど声を枯らして「お父様、お母様」と助けを呼んでも、返ってくるのは肉がぶつかり合う嫌な音と、男たちの嘲笑だけだ。少女の心臓が、壊れた時計のように速く、悲しく脈打つ。その絶望の鼓動が、奏太の脳髄を直接揺さぶった。
「ヒヒッ、これだ。これでまたレベルアップだなぁ!」
別の男が、蹂躙される少女の涙を指で拭い、その指を舐めながら下卑た笑いを奏太へと向けた。
「おい、勇者……。……何、そんな顔してやがる。お前も同類だろ? !」
「お前ら、ロリコンかよ…..ガキなんかやめとけっ」
勇者の一人が、面倒そうに鼻を鳴らした。奏太は一瞬、そこに救いがあるのだと錯覚した。だが、男は、隣で絶望的な悲鳴を上げる魔王の妻を指して下卑た笑いを浮かべる。
「こんなガキよりもよ、俺はあっちの奥さんの方が好きやで。ほら見ろよ、良い身体つきや。俺はこっちで『レベルアップ』させてもらうわ(笑)」
娘の無惨な姿を目の前で見せつけられ、心が死んでいく母親。彼女もまた、愛する我が子が壊されていく様を「特等席」で見せつけられながら、自らもまた「趣味」や「効率」の対象として消費されていく。親子が互いの蹂躙を眼前にしながら、ただ汚されていくという絶望の共鳴。
「……やめろ、……やめろぉぉぉッ!!!」
奏太は絶叫し、自分の頭を地面に打ち付けた。
自分は彼女を救いに来た「勇者」のはずだった。なのに、なぜ今、彼女が最も守りたかった人と共に味わった、人生で最も無残な瞬間を、加害者たちの視点で見せつけられているのか。奏太の正義は、このおぞましい「真実」の前に、ただの薄汚い独りよがりに成り下がっていく。
その時、少女の中で「何か」が決定的に死んだ。
絶望が臨界点を超え、彼女の心に、この世の全てを呑み込む巨大な、真っ黒な穴が空いた。
「……あ」
少女の口から、最後のため息が漏れた。
刹那、世界から音が消えた。
少女を組み敷いていた男の頭部が、まるで踏み潰された完熟のトマトのように、音もなく爆ぜた。脳漿と頭蓋の欠片が、少女の白い肌を赤く、ドロドロに染め上げる。
「あ……? お、おい、何だ今の……」
「同類だろ」と勇者を笑っていた男が立ち上がろうとした瞬間、彼の両足が、目に見えない巨大な「顎」に噛みちぎられたように、根元から消失した。
「ぎ、あああああああッ!? 俺の足、俺の足があああッ!!」
のたうち回る男の口に、少女は返り血に濡れた指をそっと差し入れ、慈しむように微笑んだ。
次の瞬間、男の体内からバリバリバリッ!と、無数の漆黒の棘が突き出した。肺を突き破り、眼球を貫き、内側から全身を串刺しにされる「勇者」たち。
「……あ、……ぁ、……」
少女は、もう言葉を持たなかった。
ただ、男たちの肉が不浄な液体へと変わっていく様を、虚ろな瞳で見つめていた。その瞳には、復讐の快感すらなく、ただただ底知れない悲しみだけが、黒い澱のように沈んでいた。
現実に戻った奏太は、激しい過呼吸の中で魔王を仰ぎ見た。
「……ねえ、嬉しいでしょう? あなたたちが望んだ『レベルアップ』よ」
その瞬間、少女の頭上に表示されたステータスプレートが、ガラスが砕けるような音と共に粉砕された。Lv.99が消失し、数字が猛烈な勢いで上昇していく。
「確かにあなたたちも、少しは強くなったのかもしれないけれど……残念だったわね」
少女の背後に、この世の全ての光を吸い込むような漆黒の影が立ち上がる。
「……私の方は、もっと、はるかにおぞましくレベルアップしたのよ!」
【ステータス:Lv. ∞(無限)】
その数字は、かつて彼女を「玩具」や「経験値」としてしか扱わなかった者たちを、一匹残らずこの世の理から消し去り、その屍の上にしか咲くことのできなかった、あまりに悲しく、あまりに醜悪な、孤独の証だった。
奏太の頬を、熱い涙が伝う。
彼女が欲しかったのは、無限のレベルでも、復讐の力でもなかった。ただ、あの日、自分を汚した男たちの手を振り払い、母親の元へ駆け寄り、お父様の胸で泣きたかった。たったそれだけのことが、この世界では「Lv.∞」の呪いを代償にしなければ叶わなかったのだ。




