【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました 第二十六章 その3
第二十六章 中編2 :終焉の玉座・反逆の咆哮
玉座の間に漂うのは、もはや絶望ですらなく、濃密な「死」そのものだった。
残されたのは、Lv.1の童貞探偵・奏太と、戦う術を封じられ震える姫イシュタル。そして、恐怖のあまり泡を吹いて倒れ伏すヤマト。魔王ルクセリアは、艶かしく組み替えた脚の隙間から、虫ケラを見るような視線を投げかける。
「これでおしまい。……退屈しのぎにもならないわ。消えなさい」
薄い唇から放たれたのは、漆黒の魔力の残滓。それは呪文ですらない、魔王にとっては単なる「溜息」に等しい密度の質量。死の弾丸が姫へと迫ったその瞬間――気絶していたかに見えたヤマトが、魂の深淵からの絶叫と共に跳ね起きた。
「お、おれの……っ、おれの姫さまをッ……汚すんじゃねえぇぇえ!!」
離婚予定の屈辱も、Lv.7という絶望的な無力さも、もはやどうでもよかった。ヤマトは、自らの空虚な人生で唯一手に入れた「最高の女性を守る」という、泥臭くも純粋なプライドだけを燃料に、自らが盾となった。
「新兵研修の地獄……騎士団のガルドにドブ水を飲まされた日々……見せてやるよ、底辺の意地をぉぉッ!!」
【金剛不壊・泥啜】
ヤマトは、騎士団の最下層でボロボロになりながら廊下を這いずり回った日々で得た、異常なまでの「スタミナ」と「精神的耐久力」を全開放した。皮肉なことに、Lv.7ゆえの経験値の低さが、逆に「ダメージの飽和」を起こさない。京大卒の強靭かつ歪んだ精神力が、炭化しかけた肉体を無理やり繋ぎ止め、魔王の魔圧さえも強引に「耐性」へと変質させていく。
「あら……すごいわ。私の魔圧の中で、まだ形を保っていられるなんて……」
ルクセリアが初めて、その美しい眉を不快げに動かした。ヤマトは全身の穴から血を噴き出し、ボロ雑巾のような姿になりながらも、ニチャアと醜く、しかし誇らしげに笑った。
「……そうだ。毒っていうのは、孤独な奴にしか扱えない力なんだよ。他人に理解されない、俺だけの底辺の証明だ! 行くぜ、ベルフェゴールの旦那! 見ててくれ十兵衛さん!!」
ヤマトは十兵衛から受け継いだ毒の剣筋に、ベルフェゴール直伝の「概念そのものを腐らせる死毒」を上乗せし、己の「半年間で肥溜めとドブにまみれた最低の劣等記録」と共に、その全霊を解き放った。
『奥義:深淵の腐食――卑屈の型』!!
「俺は自称勇者ヤマト様だぞ!! あのヴォルガだって一発で倒したんだ! お前だってこれで終わりなんだぁ!」
毒属性神クラスの汚濁が放たれ、かつて高潔な古龍ヴォルガをも汚染したヤマトの「ドロドロとした欲望」が魔王の聖域を侵食する。それは卑屈な男が一生をかけて溜め込んだ、純度100%の負のエネルギーだった。だが、魔王は眉ひとつ動かさない。
「すごいわぁ……。四天王ベルフェゴールの技を、自分自身の『劣等感』で煮詰めて応用するなんて。こう見えて、案外器用なのね」
ルクセリアは感心したように目を細め、くすくすと喉を鳴らした。しかし、その瞳には慈悲の欠片もない。
「でも、無駄よ。そんな不浄な泥、私のこの『孔』がすべて浄化して吸い尽くしてあげるわ。……あなたの卑小な人生ごとね」
ルクセリアの乳首が放つ、光さえも逃さない斥力と吸引の渦。ヤマトの渾身の毒は、一滴残らずその極点へと吸い込まれていく。
「嘘だろ……俺の毒すらも、乳から吸われるのかよ……っ」
「……ふん、こんなの本当は吸いたくもないのだけれど、不潔な男。吐き気がするわ」
ルクセリアの瞳から色が消えた。ついに彼女を「本気」にさせてしまったのだ。
「その不快な記録ごと、無に還りなさい」
魔王が放ったのは、最高位の闇属性極大魔法『終焉の黒炎』。物理的な肉体だけでなく、魂の記録さえも焼き尽くす虚無の劫火がヤマトを包み込む。
「ぐ、がぁぁぁあああッ!!」
ヤマトは【泥啜】で耐えに耐えた。骨が炭化し、内臓が蒸発してもなお、イシュタルの盾となり続けた。だが、物理的な限界が訪れる。
「姫、さま……。次は、俺みたいなカスじゃねえ、良い男を、見つけろ、よ……」
初めて芽生えた、見返りのない愛。ヤマトの肉体は塵となって消滅した。Lv.7の不屈の男が、その魂の全霊を以てイシュタルを守り抜き、跡形もなく消え去った。




