表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵は胸を揉む  作者: リチャード裕輝
【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

185/197

【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました 第二十五章

第二十五章:深淵の再会

〜超越者の誘惑と、レベル1の決意〜


「……ククク。行きますよ、皆様。振り落とされないように」


レイジが不敵に命じると、黄金の聖竜へと姿を変えたヴォルガが、地底の静寂を打ち破る咆哮を上げた。その翼が一度羽ばたくたびに、鍾乳洞の岩壁が震え、猛烈な突風が巻き起こる。


「うわぁぁっ!?」


奏太たちは、竜の背にある硬質な、しかしどこか温かい鱗に必死にしがみついた。ヴォルガは垂直に近い角度で急上昇を開始する。

迷宮の出口となっていた巨大な縦穴を、光速に近い速度で駆け抜ける。視界を覆っていた闇が、一瞬にして弾けた。


「……すげぇ……!」


奏太は思わず目を見開いた。

眼下に広がるのは、見渡す限りの雲海。夕陽に照らされ、黄金の絨毯のように波打つ雲の向こうには、かつて彼らが旅した大地がミニチュアのように遠ざかっていく。

ヴォルガの翼は、太陽の光を反射して神々しく輝き、空気を切り裂く音さえも、祝福の凱歌のように響いた。

だが、その絶景のさらに「上」に、それはあった。

天空の極み、重力さえも届かぬ場所に浮遊する、漆黒の巨大構造物。

それが魔王城――絶望の君臨する「ルクセリアの居城」だった。

あまりの高さに空気は薄く、星々が昼間だというのに近くに見える。普通の人間に辿り着けるはずのない、神域の一角。


「……到着です」


ヴォルガは優雅に旋回し、魔王城の入り口である「静寂の回廊」へと降り立った。

着地と同時に、竜の巨躯は急速に収縮し、再び愛らしいミニドラゴンの姿へと戻る。


「キュ……キューン」


少し疲れたように鳴くヴォルガを見て、奏太はその小さな頭を優しく撫でた。


「ヴォルガ、ここまで連れてきてくれて……本当にありがとうな」


「良い判断です。ヴォルガはここに置いておきましょう」


レイジが眼鏡を指で押し上げ、冷徹な合理性を口にする。


「この先は魔王の領域。まだ転生したばかりの個体を連れて行くのは、戦力として非効率です。何より、帰りにまた我々を運ぶ『足』になってもらわねばなりませんから。ここで英気を養っておいてもらいましょう」


「ああ。……いよいよ、なんだな。ドキドキするよ」


奏太が震える手で自身の胸を押さえる。レイジはそれを見て、薄く笑った。


「案ずることはありません。貴方には私が付いています」


「私も行きます、奏太様」


背後で、救出されたばかりの王女イシュタルが、凛とした声で宣言した。


「私の力を使ってください。この国を、そして私の希望である貴方をお守りするために」


「では、参りましょうか。地獄の、あるいは新世界の入り口へ」


レイジが重厚な扉に手をかけた、その瞬間だった。

回廊を満たしていた空気が、一瞬にして凍りついた。

ルクセリアの居室へと続く扉の前に、その影は最初からそこに存在していたかのように、淡い桃色の光を纏って立っていた。


「……いよいよね、奏太」


鈴の鳴るような、けれど心臓を直接掴まれるような冷たい声。

超越者エルフィ。

彼女は、かつて奏太の記憶を、そして肉体を蹂躙した時と同じ無機質な微笑を浮かべ、ゆっくりと歩み寄る。


「エルフィ……! なぜここに……!?」


ヤマトが身構え、ユリアが殺気と共に拳を握りしめる。イシュタルはその圧倒的な存在感に息を呑み、奏太の背中に隠れるように震えた。


熟成:超越者の指先


「ふふ……。まだ純粋なレベル1のまま。けれど、その瞳に宿る『記録』は、あの時よりもずっと強く、そして……大きく成長したわね」


エルフィの白く細い指先が、奏太の頬をなぞり、首筋、そして胸元へと滑り降りる。奏太の体が、かつての快楽と恐怖の記憶に反応し、小刻みに震え出した。


「ああ……いいわ。貴方の鼓動、私のために激しく打っている。……ねえ、もう準備はできているのでしょう?」


彼女の手は、躊躇なく奏太の下半身へと伸び、その形状を掌で確かめるように、容赦なく包み込んだ。


「ひっ……!? な、何を……!」


「嘘はつけないわ。身体はこんなにも熱い。……奏太、もう貴方は十分に熟成されたわ」


「貴女ッ!! 離しなさい!!」


ユリアが嫉妬に狂った咆哮を上げ飛びかかるが、エルフィは一瞥もくれず、指先一つで空間を固定し、ユリアを不可視の壁で弾き飛ばした。


「……またあなたね、邪魔をしないで、完成品ユリア。今は、私と彼の大事なときなの」


契約の誘い:魔王を凌駕する力

エルフィは奏太を抱き寄せ、その耳元で甘く、残酷な誘惑を囁く。


「奏太……貴方が望むなら、力を貸してあげる。ルクセリアなんていう偽物の王を、一瞬で消し去るほどの、神の領域の力を。……その代わり、私と交わりなさい。貴方の積み上げた半年間のすべてを、私の胎内で一つに溶かすのよ」


彼女は奏太の手を取り、自らの柔らかな、けれどどこか空虚なオッパイへと導いた。


「ほら、触れて。私の心音、貴方の記録を求めてこんなに鳴っているわ……」


「奏太様……いけません……!」


背後でイシュタルが悲鳴を上げる。彼女には見えていた。エルフィの差し出す力が、魂を対価とした甘い毒であることを。


拒絶:レベル1の「絆」

奏太は、エルフィの胸に置かれた自分の手を、ゆっくりと、けれど確実に引き剥がした。


「……いらない。その力は、いらないよ。エルフィ」


「……え?」


エルフィの瞳に、初めて「困惑」という感情が兆した。

「あんたには……感謝もしてるし、恨みもある。でも、俺はもう一人じゃない。覇道を往くレイジも、十兵衛の遺志を継いだヤマトも、俺を守ってくれるユリア……救い出したイシュタル様……そして、命を繋いでここまで運んでくれたヴォルガもいる。……この仲間がいれば、あんたの力を借りなくても、俺は自分の力で魔王を倒せる」


奏太の瞳には、かつての絶望に怯える少年の面影はなかった。


「自分の力で魔王を倒して、この世界の謎を解く。あんたの言う『記録』の一部になんて、ならない」


惜別:超越者の微笑

沈黙が回廊を包む。エルフィはしばらく奏太を見つめていたが、やがて、くすりと小さく笑い声を上げた。


「……残念ね。本当に残念。貴方を私だけの深淵に沈めたかったけれど……。でも、貴方たちなら、本当にあのルクセリアを倒せるかもしれないわね」


彼女の身体が、再び光の粒子となって薄れていく。


「フフフ……。この世界はこの世界で、壊れていて楽しいのに。……いいわ。せいぜい、私を楽しませて。貴方たちが選ぶ『結末』が、どんなに歪で、美しい記録になるのかを」


エルフィは最後に、奏太の唇に一度だけ、冷たくて切ないキスを残した。


「また会いましょう、奏太。……世界の終わりか、あるいは、真実の始まりで」


光が霧散し、後には再び魔王城の冷たい静寂が残された。

奏太は唇を拭い、目の前の巨大な扉を見据える。


「……行こう。ルクセリアのところへ」


「……ああ、久我。あんた、本当にかっこよかったぜ。……俺、ちょっと泣きそうだ」


ヤマトが鼻をすすり、ユリアは誇らしげに奏太の背中を見つめ、イシュタルはその逞しい後ろ姿に、亡き女王の面影を重ねて深く頭を垂れた。

伝説の終焉まで、あと、扉一枚。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ