【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました 第二十四章
第二十四章:転生、そして飛翔
〜失われた翼と、小さな救世主〜
ヴォルガが消滅したはずの光の渦。そこから溢れ出したのは、神々しくも温かい白銀の輝きだった。レイジは焼け焦げた剣を鞘に納め、眼鏡の奥の瞳を冷徹に、しかしどこか満足げに細める。
「……さて。魔王城に向かいますか」
その平然とした物言いに、奏太は思わず声を荒らげた。
「おい、正気かレイジ! 空に浮かぶあの魔王城にどうやって行くんだ? わざわざ地底の迷宮まで降りてきて、太古のドラゴンを叩き起こした結果がこれだけど」
奏太は包帯の巻かれた右腕――アトラスの「地」の力が疼くのを感じながら、空を仰ぐ。そこには雲を突き抜け、絶対的な絶望として君臨する天空の城があった。
「あ……」
レイジは奏太の言葉にハッとして、喉の奥で声を詰まらせた。
(……またやってしまった。ガランの時と同じミスだ。あの時も手段を考えずに突っ走って……。私は、ドラゴンに協力してもらって、空を飛ぼうと思ってたんだ……!)
「なぁ、レイジ、どうするんだよ。ロールプレイングゲームの定石だ。船を手に入れ、絨毯で海を越え、最後は伝説の巨鳥や天馬、あるいは竜の背に乗ってラストダンジョンへ向かう。それが黄金の様式美のはず……!」
その時だった。
遺跡に満ちていた光の粒子が急激に収束し、一体の小さな影を形作った。
「キューン……ッ!」
光の中から現れたのは、かつての山のような巨躯ではない。愛らしいサイズのミニドラゴン。ヴォルガが放った最後の一撃――自らを焼き尽くし、魂を浄化して転生した、永遠の命の新たな姿であった。
「……ククク。おや、これは想定外ですが、合理的だ。ドラゴンの寿命は永遠。彼女は転生によって、ヤマト殿の『毒』を洗い流し、新たな個体として生まれ変わったわけです」
ミニドラゴンは、トコトコと短い足で奏太に歩み寄り、その頬を親愛の情を込めてペロペロと舐めた。
「キュッ。ペロ……ッ!」
「お、おい! なつくのはいいけど、お前、さっきまで俺たちを殺そうとしてたよな!?」
奏太が戸惑う中、ミニドラゴンは次に跪いているイシュタル姫へと飛びついた。
「キューン!」
パフッ、という柔らかな音。ミニドラゴンはイシュタルの豊かな胸元に顔を埋め、あからさまに揉みしだき始めた。さらには薄汚れたドレスの隙間に首を突っ込み、その柔肌をいやらしく舐め回す。
「ひゃっ!? な、なんなのこのトカゲ! 汚らわしい……やめてっ、そこは経験値(Lv.1000)の源よっ!!」
太ももの内側まで入り込んできたドラゴンの舌に、イシュタルは顔を真っ赤にし、嫌悪感とは裏腹に身体をビクンと跳ねさせ、吐息を漏らす。
イシュタルの聖なる双丘と下半身をひとしきり堪能したミニドラゴンは、次に、静かに控えていた武道家ユリアへとターゲットを移した。
「キュキューッ!」
「えっ、ちょっと……っ!」
ユリアの驚愕を余所に、ミニドラゴンはその強靭な足腰をバネに跳躍。彼女の道着の隙間へと強引に割り込み、イシュタル以上の質量を誇るユリアの巨乳を、これでもかとばかりに揉む。さらに、激しい修行で鍛え上げられた彼女の腹筋をなぞり、道着の下へと潜り込んでいく。
「ぁ……っ、んっ!」
ユリアは予期せぬ粘着質な舌の感触に、思わず膝の力が抜けそうになる。鍛え抜かれた肉体が、異質な愛撫に熱を帯びていくのを感じ、彼女は羞恥に顔を染めた。
「フンッ……!」
正気に戻ったユリアの拳が動く。空気を切り裂くような鋭い正拳突きがミニドラゴンの眉間を捉えた――かに見えたが、ドラゴンは空中で身を翻し、紙一重でその一撃を回避した。
「……さすがはドラゴン。本能的な回避能力もさることながら、このパーティ内での『格付け』を瞬時に理解したようですね」
レイジが冷たく言い放つと、ミニドラゴンはビクンと身体を震わせ、レイジの瞳に宿る「Lv.9999の恐怖」を察知して、即座に距離を取った。
今のやり取りで、この場におけるヒエラルキーは確定した。
頂点に君臨するのは久我奏太。その隣に絶対的な暴力と知略を司るレイジ。そして武力のユリア、王女のイシュタル、その下にミニドラゴン。
そして、ミニドラゴンは足元で泡を吹いて気絶しているヤマトを見つけると、そのぶ男の顔面を短い足で「ペシペシ」と、無慈悲に叩き始めた。彼にとってヤマトは、群れの中の誰よりも下に位置する、ゴミ同順の存在なのだ。
「……ふむ。ヤマト殿は、やはりこのパーティの最下層、あるいはそれ以下の『塵』という認識のようですね。動物の直感は恐ろしい」
レイジが感心したように頷くと、ミニドラゴンはふんぞり返り、自身の小さな翼を力強く羽ばたかせた。その瞬間、周囲の空間が歪み、ミニドラゴンの体が再び巨大化していく――。
それは戦闘のための姿ではない。主たちを天空へ運ぶための、黄金の翼を持つ「聖竜」の姿だった。
「どうやら、乗れと言っているようです。……さあ、久我様。魔王城へ行きましょう。これこそが、私がこの迷宮に貴方たちを連れてきた本当の狙いですから」
レイジは気絶したヤマトを「離婚予定の汚物」として、ゴミ袋でも扱うかのように竜の背に放り投げ、奏太に手を貸した。
「ああ、良かった。……危うくですよ、本当に。ここで足止めを食らえば、私の計画が狂うところでした」
レイジの言葉に、奏太は寒気を覚えた。この男、最初からヴォルガを「転生」させて足にするつもりだったのか……?
黄金の翼が羽ばたき、地底の闇を切り裂く。
一行を乗せた竜は、不条理な因縁と一通の婚姻届を抱えたまま、魔王ルクセリアが待つ天空の城へと、真っ直ぐに舞い上がった。




