【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました 第二十三章 前編
第二十三章:激突!Lv.9999 火炎竜と、絶望の戦線
前編
〜覇王の剣、毒の牙、そして卑屈の弾丸〜
十兵衛が光となって消えた余韻を、暴力的な熱波が容赦なく掻き消した。
古代遺跡の最深部、大気が熱そのものと化し、吸い込む空気が肺を焼く【焔の玉座】。そこに鎮座していたのは、山のような巨躯を持つ太古の覇者、火炎竜ヴォルガであった。
その頭上に浮かぶ数字は、絶望の頂――Lv.9999。
魔王ルクセリアすら「新参者」と見做し、世界の創世から悠久の時を刻んできた絶対強者。彼女は黄金の瞳に隠しきれない不快感を湛え、その巨躯を震わせた。極度の潔癖症である彼女にとって、人間という存在は、神聖なる玉座を汚す「不浄な塵」に過ぎない。
「……穢らわしい。この神聖なる玉座に、またしても不潔な羽虫どもが迷い込んだか」
ヴォルガの視線が、満身創痍のレイジを射抜く。
「レイジ、貴様か。五百年前、汚らわしい七体の魔神を討ち滅ぼし、一度はこの世界を不浄な統一という名の鎖で縛り上げた矮小なる王……。私のいない世界で、よくもまあ、それだけの不遜を成し遂げたものだ」
ヴォルガの喉の奥で、マグマが煮えるような哄笑が漏れる。
「我ら古の種族が微睡んでいた隙に王を気取っていた貴様の覇道など、私から見れば砂上の楼閣。風が吹けば消える、羽虫の遊びに過ぎん。目覚めた我が前に、二度目の死を刻むがいい」
ヴォルガが一度咆哮すれば、遺跡の天井は粉々に砕け散り、絶対的な熱量が奏太の皮膚を容赦なく焼き焦がす。
蹂躙:崩壊する絶望の戦線
レイジの号令と共に、まず動いたのは武道家・ユリア(Lv.7000)であった。彼女は漆黒の魔力を拳に凝縮し、残像すら置き去りにする神速で古龍の足元へ肉薄する。
「そこよッ! 西斗神剣『秘孔・地衝穴』!!」
流麗な身のこなしから放たれた鋭い突きの連打。竜の鱗のわずかな隙間に、正確無比な打撃を叩き込む。通常の魔物なら即座に自壊するはずの絶技。だが、ヴォルガの強靭な細胞は、秘孔を突かれた先から、古の理に従い瞬時に再生を開始した。
「これならどうかしら、聖なる輝きで浄化されなさい! 『極大・天光滅殺陣』!!」
ユリアが両手を掲げると、遺跡の闇を塗り替えるほどの黄金の光が降り注ぐ。ヴォルガの巨躯を焼き、その高潔さを審判する光の檻。しかし、ヴォルガは鼻で笑うように大きく息を吸い込むと、光の奔流を強引にブレスで押し返した。ユリアは間髪入れずに魔力の極性を反転させる。
「ならば深淵へ……! 『極大・深淵崩壊獄』!!」
光を呑み込み、すべてを虚無に帰す漆黒の闇。ヴォルガの右翼が影に侵食され、黒い火花を散らす。だが、Lv.9999の古龍が放つ暴力的な生命力は、魔導の理すらも物理的に粉砕した。
「……ガハッ!? なんという……出力……!」
ヴォルガの翼の一振りが生じた衝撃波だけで、ユリアは紙屑のように壁際まで吹き飛ばされた。その衝撃で端麗な顔は歪み、最高級の防具が超高温の熱に耐えきれず、無残に焼け落ちていく。
死闘:覇王の連撃と覇道の限界
続いてレイジ(Lv.9999)が動く。彼は鞘から一振りの古剣を静かに抜き放つ。かつて世界を統べた覇王の瞳に、初めて冷や汗が滲んだ。
「クク……。私の輝かしい経歴を『留守中の火遊び』だと面白い表現ですね。いいでしょう、教育して差し上げます。世界は、五百年前から私の手の内にあるということを!」
レイジの姿が霧のように消え、遺跡の空間そのものを切り刻むような猛攻が始まった。
『伝説剣技:十六夜連斬』
視認不可能な十六の同時斬撃。竜の分厚い皮膚を深々と切り裂き、赤黒い鮮血の雨を降らせる。
『覇王剣技:奈落落とし』
上空から全体重と魔力を乗せた垂直落下の一撃。ヴォルガの脳門を捉え、巨躯を無理やり大地に沈める。
『虚空消滅』
剣先から放たれる漆黒の波動。ヴォルガが放つ火炎の一部を強制的に「無」へと還す。
一時間以上にも及ぶ、人知を超えた死闘。だが、同レベルであるはずのレイジの剣をもってしても、数千年の蓄積が生み出すヴォルガの「潔癖な怒り」を貫ききれない。
「我の血を……不浄な人間の剣で汚したなッ!! 『超極大・焦熱地獄』!!」
ヴォルガが大きく顎を開く。放たれたのは熱線を越えた、概念としての「消滅」の奔流。レイジは剣を十字に構え防御するが、あまりの圧力に吐血し、壁を貫通して吹き飛ばされた。
「クッ……久我様、ヤマト殿。……貴方たちの実力では、もはや立つことすら許されぬ領域です。私が囮となって誘い込みます……貴方たちは一度逃げて、機を待つしかない……!」
覚醒:地の極大魔法と「重力」の右腕
最強の二人が満身創痍となり、残されたのは奏太とヤマトだけだった。レイジの「逃げろ」という言葉を、奏太は真っ向から否定するように一歩前へ踏み出す。
「逃げる……? 逃がすものか! ここで終わらせるんだ……! 俺たちの旅も!!」
奏太は、アトラスから引き継いだ風の魔力を右腕に集める。
「死ね、羽虫め。この不潔な空間を、我の火炎で洗い流してくれる」
ヴォルガの喉元が再び太陽のように白熱する。
「……ならば、風だ! 『極大・疾風斬回旋』!!」
奏太は全魔力を絞り出し、風の極大魔法を放った。しかし、古龍が放つ超極大ブレスの前では、その風はただの微風に過ぎず、逆に火力を強める酸素へと変えられてしまう。
「……風が、効かない……!? 属性の相性以前に……根本的な魔力量が、違いすぎる……っ!」
迫りくる紅蓮の火柱。死の熱が奏太の視界を真っ赤に染め上げる。皮膚が焼ける感覚。奏太は膝をつき、死を覚悟した。
その時、奏太の右腕が黄金の輝きを放った。




