【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました 第二十ニ章 中編
第二十二章 中編 傀儡の覇王:闇の操り
「……死ね、サル」
レイジが踏み込む。その一歩は地を割り、マグマの川を割った。レベル9999の質量を伴う超速の抜刀。古剣の刃がカンパクの細い首を跳ね飛ばす――その、刹那だった。
「……ッ!?」
レイジの剣先が、カンパクの喉元数ミリのところで完全に制止した。
静止ではない。「固定」だ。レイジの強靭な筋肉が、断裂せんばかりに盛り上がり、意思とは裏腹に石像のように固まっている。
「ククク……。驚きましたか? 貴方ほどの『完成された存在』であればあるほど、私の糸はよく馴染む」
カンパクが、楽器の弦を弾くように細長い指を繊細に動かした。
レイジの全身を、漆黒の粘りつくような魔力の糸が覆っている。それは皮膚の表面ではなく、魔力の流れる「経絡」そのものに侵入し、神経系を支配下に置いていた。
「貴方の覇気、貴方の技、その圧倒的なステータス(記録)。……それら全て、今は私の指先一つに繋がっているのですよ」
「……おの、れ……」
レイジの額に青筋が浮かぶ。レベル9999の力をもってしても、自身の身体が重い鉛に変わったかのように制御不能となっていた。闇属性の魔力回路を掌握されたことで、体内から己の支配権を奪われたのだ。
「レイジ!? 何を遊んで……あ、がっ!?」
助太刀に入ろうとした奏太の言葉が、衝撃に変わった。
カンパクが不敵な笑みを浮かべ、右手の指をグイと引き絞る。
「さあ、信長様。貴方の望んだ『覇道』を、今こそ存分に振るっていただきましょう。……まずは、その耳障りな羽虫どもから掃除してください」
「やめ……ろ……っ!!」
レイジの絶叫を無視し、その腕が、意思に反して古剣を横一文字に薙ぎ払った。
放たれたのは、ただの剣閃ではない。レベル9999の覇気が凝縮された、空間そのものを断ち切る絶技。
「な……っ!?」
「がはっ……ぁ!」
直撃だった。
最前線にいたヤマトが、そして久我の肩が、ユリアの魔力障壁ごと叩き斬られる。三人とも、レイジの放つ「絶対的な力」を知っているからこそ、その一撃が自分たちに向けられることを一瞬たりとも予測できなかった。
激しい爆鳴と共に、三人の身体が岩壁まで吹き飛び、血飛沫が熱風に舞う。
「……あ、あぁ……」
崩れ落ちる仲間たちの姿を、レイジの瞳が絶望と共に映し出す。
指先一つ、瞬き一つ、自分では制御できない。かつて天下を統べた王が、今はただの「殺戮の操り人形」として、己の仲間を蹂躙させられている。
「ハハハハハッ! 愉快だ! 痛快だ! あの偉大な信長様が、私の指先一つで踊っている! これこそが、下克上の極致!」
カンパクは狂喜乱舞し、蜘蛛の脚をカタカタと打ち鳴らした。
「さて……仕上げといきましょう。レイジ、貴方は最高の道具ですが、あまりに危険すぎる。ヴォルガ様への最後の手土産として、その自慢の魂ごと、この火口で消えていただきましょうかね」
カンパクの指が、ゆっくりと地獄の火口を指差す。
レイジの足が、一歩、また一歩と、マグマの渦巻く奈落の縁へと向かって歩き出した。
「サル……貴様だけは……地獄の底でも……許さ……ん……っ!」
「おや、ご安心を。地獄へ送るのは、私の役目です」
屈辱に濡れる覇王。狂笑する道化。
ヴォルガの黄金の瞳が、奈落の縁に立つ獲物を、静かに見つめていた。




