【Lv.1の童貞探偵】異世界で俺の性魔術解析が世界の穢れの記録を暴くが、魔王に童貞を独占予約されました 第二十一章
第二十一章:地底の毒炎
〜覇王の残滓と、猛毒の系譜〜
地下迷宮の最深部へと続く、灼熱のマグマが逆流する断崖絶壁。
奏太、レイジ、ヤマト、ユリアの一行は、伝説の竜の咆哮が地響きとなって伝わる【紅蓮の回廊】を突き進んでいた。
突如、空間が泥のように濁り、そこから異形の巨躯が這い出してきた。
「……クフフ。またこの臭いか」
久我奏太、ヤマト、レイジ、ユリアの一行は、かつて魔界の森で対峙したあの圧倒的なプレッシャーを再び肌で感じた。空間が歪み、腐敗した風が吹き抜ける。
「……また会ったな、小僧」
空間の裂け目から姿を現したのは、魔王軍四天王が一角、【腐肉の王・ベルフェゴール】。
かつて「光の創造主」エルフィの前に屈辱の撤退を強いられた巨躯が、今はさらに禍々しい死気を纏って立ちはだかっていた。
「またお前か、ベルフェゴール……! なぜここに」
奏太が聖遺物の疼く右腕を構え、鋭い視線を向ける。だが、ベルフェゴールから放たれるのは殺意だけではなかった。
「戦うしかないか……?」
奏太の問いに、ベルフェゴールは醜悪な顔を歪めて嘲笑った。
「グフフ……。やりたいところだが、生憎と今は忙しくてな。軍の中にネズミが紛れ込んでおるのだ。魔王ルクセリア様に仇なす『裏切り者』を追っている。貴様らを料理するのは、その不届き者の首を撥ねてからだ」
一触即発の空気が流れる中、後方で静観していたレイジが、ふと眉をひそめた。その瞳には、覇王としての記憶を辿るような深い困惑が宿っている。
「……妙ですね。ベルフェゴール、貴方とはどこかで会ったことがあるような、不思議な感覚に陥る」
レイジの言葉に、四天王は一瞬だけ動きを止めたが、何も答えず背を向けた。
「……フン、他人の空似だろう。地獄の淵ででも思い出すがいい」
猛毒の系譜:ヤマトの覚醒
ベルフェゴールが霧に消えようとしたその時、彼の視線が一行の端で膝を震わせているヤマトに止まった。
「……ほう。待て。……貴様、その魂に宿しているのは『毒』か?」
「ひ、ひぃっ!? な、なんだよ、俺の毒がどうしたってんだ! 京大卒の論理的思考が毒に変換されただけで……」
ヤマトが情けなく叫ぶと、ベルフェゴールは信じられないものを見るようにヤマトを凝視した。
「……私以外に、これほど純度の高い毒の属性を宿す者がいるとはな。毒の概念を操る者は、この世界でもほとんど伝説級。まして人間風情が宿すなど、初めてだ」
ベルフェゴールの醜悪な瞳に、一転して武人としての狂気が宿る。
「急いではいるが……試したくなった。小僧、その毒、どこまで通じるか見せてみろ!」
「ちょ、ちょっと待て! やめてくれ! ……いや、待てよ」
ヤマトは鼻水をすすり、メガネをクイと上げた。目の前にいるのは魔王軍四天王。だが、自分と同じ「毒」の使い手だという。生前の劣等感と、この世界での疎外感。それがヤマトの中で「負けたくない」という意地に変わる。
「魔王軍四天王だか何だか知らないが……やってやるよ! 京大の論理毒を喰らえッ!」
猛毒の奥義:論理崩壊
激突は一瞬だった。
ベルフェゴールが放つ【万物を腐らせる死毒】に対し、ヤマトは自身の毒属性を全開にする。ベルフェゴールは本気ではなかったかもしれないが、ヤマトの放つ毒は「物質」ではなく「事象」を腐らせる特異なものだった。
「グフッ……!? 私の毒の構築を……内側から崩壊させているのか。論理の矛盾を突き、理そのものを毒すと……。面白い、実に面白い!」
二人の間に立ち込める毒霧が、周囲の岩石をドロドロに溶かしていく。ヤマトは限界を超え、白目を剥きながらも、ベルフェゴールの巨大な魔圧に押し負けずに踏みとどまった。
「……気に入った。小僧、名をヤマトと言ったな。貴様にだけ、特別に私の技の『概念』を一つ授けてやろう。……使いこなせるかは貴様次第だ」
ベルフェゴールが指先を鳴らすと、ヤマトの脳内に悍ましいほどの毒の知識が直接流れ込んだ。
* 獲得:奥義【深淵の腐食】
(※相手が『正しい』と信じている法則そのものを猛毒に変換し、内側から自滅させる最上位毒属性スキル)
「……ただの気まぐれだ。裏切り者を仕留めた後、次に会う時はまた敵だがな。……せいぜい、それまでにその毒を研いでおけ」
ベルフェゴールは今度こそ闇の中に消えていった。
後に残されたのは、あまりの情報量にその場にへたり込むヤマトと、それを複雑な表情で見守る奏太たちだった。
「……ヤマト、大丈夫か?」
「……ああ。……あいつ、強かった。でも……少しだけ、分かった気がする。毒っていうのは、孤独な奴にしか扱えない力なんだってな……」
ヤマトの言葉に、レイジは無言で地平を見つめ、ユリアは冷たく、しかしどこか認めるような笑みを浮かべた。
一行は、ベルフェゴールが追う「裏切り者」の正体、そして竜の暗雲へと、再び歩みを進めるのだった。




