34話【現状報告】
《アルミラ視点》
私は今、とても幸せです。
リザードマンの集落に帰ってきてから二週間あまりが経過した。
国へ帰ってくるや否や、お父様は国王陛下に謁見し今回の事態を説明。
そうして問題となる私のリザードマン受け入れ政策だが、なんやかんやお父様が頑張ってくれたお陰で国王陛下からの許可が得られた。
強力な武力を持つリザードマンを国に取り込むのは、国としてもメリットがあるそうだ。他国への牽制やらなんやら色々あるらしい。ただの公女の私にはよく分からないけど。
そんなこんなでその政策を本格的に始動させるため、私もお父様の仕事を手伝ったりしていた。書斎でお父様の隣に座り、たまに意見をちょっと言うだけだけど。
まぁ素人の考えが採用されることはなかなか無いから、お父様が主体となった政策の取り決めの細かい部分を決めている。
私は政策の発案者という位置付けだから、一応内容に目を通しておいた方がいいらしい。まぁ私の知らぬ所でリザードマンの方々が酷い扱いを受ける政策になってしまわないよう目を光らせておこう。お父様に限ってそんなことはしないだろうけど。
あとはレレさんのこと。おっと違った。もうレレと呼ばなきゃいけないのだった。
いつまでも堅苦しい敬語やさん付けは嫌だと、レレから申し出てくれた。歳も2つほどしか離れていないし気にするなと言ってくれた。
レレは十七歳だったのね。その割には体躯が大きい。やっぱり人族以外は成長が早いのね。
と、それはさて置き、――レレは人族の国初のリザードマンの来訪者である。記念すべき1人目。それ故、近々国王陛下に謁見し、社交パーティーの場で彼女をお披露目するらしい。
勿論私も同行する。私が連れてきたのだもの。後見人みたいな者ね。
というか一人で行かせるのは心配だわ。社交界の堅苦しい会場で、少年誌の主人公みたいに「英雄に、オレ様はなる!!」とか言い出しそうだもの。ブレーキとなる人間がついていないとね。
社交パーティーまでは表に姿を見せるのは厳禁。レレは私の邸宅で暮らしている。
と、まあリザードマンの件はそんな感じ。
ちなみに足は治った。家に帰った翌日に。
勿論私の自力ではない。魔法という便利な技術に依存した回復である。
この世界には回復魔法が存在する。
回復魔法を行使してもらうには、教会にお金を渡し神官を送って貰う。要は魔法のお医者様を呼ぶのだ。大変高価ならしく、平民ではとても手が届かないそうだが、公爵家の財政からしたら小銭程度である。
回復魔法は神聖な技術であるとされ教会が独占しているから、神官以外はどう足掻いても使えない。ずるい。私も使いたい。そうすれば何度も回復して無限にエッチができるのに。
ともあれ体は万全に回復した私。傷跡は残ってしまったが気にしない。きっと将来英雄を守った傷として勲章になる。
それよりも大事なのは、私の『性』活のこと。それはもう大変充実していた♡
リーシャとお茶を楽しんではエッチをして、ガウルと買い物デートをしてはエッチをして、レレと邸宅の庭園でエッチな運動してはエッチして、それはもう幸せな日々を送っていた。
実に満たされている日々。沢山の愛を感じられ毎日。
それに今は、やりたいことができた。
奴隷ハーレムを作るための第一歩の為にも、そして私の自立にも、そして何よりアッチのお楽しみのためにも♡
その話をするには、少し前の話をしなければいけない。
◇
リザードマンの集落から、国へと帰る道中にて。
私たち一行は馬車を川の前で止め、長い家路につくための小休憩を挟んでいた。
御者が馬に水を与えている間に、私は川近くの岩場で涼んでいた。
「おいミラ! 川冷たいぞ! 一緒に入ろうぜ!」
少し離れたところで、レレは川に飛び込み楽しく水浴びをしていた。相変わらず元気一杯ね。完全に調子を取り戻して良かったみたい。
ガウルと同じ馬車に乗っていたから喧嘩してないか不安だったけど、案外仲良くやっていたようだ。
「私はここで涼んでいるから大丈夫。レレは気にせず遊んで」
この足では川ではしゃぐのは無理そう。それを言うとレレが気にしてしまいそうだから言わないように気をつける。
「そっか……。あっ! デケェ魚いた! 待ってろミラ! 今捕まえてくる!!」
「ふふっ、あんまり遠くに行かないでね」
子供がいたらこんな感じなのかしら。なんだか賑やかで楽しいわね。
「アルミラ様、暑くはありませんか?」
照りつけるような日差しを心配して、日傘を私に差してくれるリーシャが尋ねる。
「ええ、大丈夫よ。それよりリーシャも座って」
「ですが他の人の目も……」
「そんなの私たちが気にしなければいいのよ。ほらほらっ♡」
「わ、わかりましたから。引っ張らないでくださいっ」
彼女の手を引いて、私の隣に座らせる。
日傘で相合傘をして、リーシャと流れる川を静かに眺めた。穏やかで幸せな一時。
コテンと彼女の肩に頭を寄りかからせる。
「風が気持ちいい」
「ええ、そうですね」
涼しい風は時々下流へと吹く。
鼻いっぱいに呼吸する。草花が運ぶ自然の香りと、隣に座るリーシャの甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「リーシャいい匂い♡」
「あの……嗅ぐのはやめてください。恥ずかしいので……」
自然だけでなくリーシャの匂いも堪能する。恥ずかしがらなくてもいいのに。いい匂いなんだから。
「そう言えばガウルは?」
姿が見えないわ。何処に行ったのかしら? いつもはリーシャと同じく私の隣にいるのに。
「彼なら周囲の見回りに行っています。危険がないか警戒しているようです」
「そうだったのね。休憩なんだから休んでいいのに」
私の怪我のこと、もしかしてまだ気にしているのかな。ガウルのせいじゃないってずっと言ってるんだけどな。
ガウルは責任感が強いから、きっと必要以上に気にしてしまうのね。
ガウルが戻ってきたらレレも合わせて4人で休憩しましょう。少し小腹も空いたし、なにか食べたいわ。
「ミラぁ! 獲ってきたぞ!」
「レレ、魚獲れたのね」
「いや魚じゃねェ! キラキラした石だ!」
そうして見せてくれたのは、白く半透明な鉱物のようなものだった。
ん? これってもしかして……。
「ミラはアクセサリーが好きなんだろ! ならこの宝石で指輪作れ! オレ様からのプレゼントだ!」
「まぁ♡ 嬉しい♡ ――でも残念ね。それは宝石じゃないの」
「ん? 違うのか? 普通の石とは違うのにか?」
「ええ、普通の石ではないわ」
これは、見たことがある。
「ねぇレレ、これどこで見つけたの?」
「川に落ちてた! 近くにこれがたくさんある洞窟もあったぞ」
「鉱山まであったのね。それなら……」
ここは人もあまり通らない道。きっと誰のものでも無い、まだ未発見の鉱山。なら私のものにしてもいいよね♡
「ふふふっ、これがあればアレが作れるかも♡」
それだけではない。販売や事業展開をすればお金儲けが出来る。お父様にお小遣いをせびって奴隷を買わなくても良くなる。ついでに実家を出た時の生活資金も稼げる。
一石二鳥どころか三鳥も得られる得策。
「あのアルミラ様。この石はなんなのですか」
「これ? これはね、とても便利な物になる石なのよ」
この鉱物の名前を、私は知っている。
地球にも存在する鉱物の一つ。――珪石。
そして――地球では当たり前に使われていた、シリコンの基となる素材である。




