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22話【レレを探して】

集落に来て3日目の昼頃。

今日は外交の話し合いをお休みに、お父様は集落の人から調査を名目とした相談を行っていた。要は住人の視察である。

私はその間、自由にしてていいとの許しを得た。身軽に行動するため、今日は1人で人探しをしていた。

昨日レレさんに会えなかったことが気がかりで、私は族長に彼女のことを尋ねていた。

「レレの姿か? いやぁ見とらんなぁ」

「では、レレさんの行きそうな場所に思い当たりはありませんか? そこだけでも教えていただきたく……」

「んぅ~、アヤツは奔放なヤツじゃからなぁ。レレが何処におるかは知らんが、集落の若いのは南の集会場によく集まっておる。そこへ行けばレレの居場所を知っているヤツも一人はおるじゃろう」

「集会場……。ありがとうございます、族長様」

「いやいや構わんよ。ユリウスの娘じゃからな」

族長は快くシュルルと微笑む。お父様への絶大な信頼あってこそのものだけど。


「それよりお嬢さんは随分とレレのことを気にかけてくれてるようじゃな?」

「はい、素敵なお方ですからっ」

「シュルルル! ユリウスの娘だけあって懐が深いわい! じゃが気をつけい。あンの馬鹿者はすぐに狩りへ行きたがる」

「女性は狩りへ言ってはいけないのですよね?」

一昨日の口論でそのようなことを言っていたのを思い出す。

「まぁ集落の決まりもあるんじゃが、それよりアヤツはちと危うすぎるのじゃ。無断で狩りに行っては毎回酷い怪我を負って戻ってきて、回復すれば懲りずにまた狩りへ行きおる」

無鉄砲に狩りへ飛び出す彼女の姿が容易に想像出来る。

確かに危ないわね。無断で狩りに行っているってことは誰もレレさんが森に入っていることを知らず、戻って来れないほどの大怪我をすれば誰も助けには行けない。命に関わる問題だ。


「しかし、どうしてそこまで狩りに行きたがるのでしょう?」

怪我をしても何度も行くということは、痛みより強い信念があるということだろう。私はレレさんのことをもっと知りたい。

「さしずめ英雄譚に出る戦士にでも憧れているのだろう?」

「英雄譚ですか?」

「ああ、アヤツの母親が残した英雄の軌跡を綴った書物が気に入ったのじゃろう。それに憧れてるからあのような蛮行を……。まったく、勇猛と無謀を履き違えておる」

「……本当に、それだけなのでしょうか」

「ん?」

私の疑念に族長は首を傾げる。

筋は通っている話だが、少し腑に落ちない。


確証なんてものはない。ただの直感だけど。もっと彼女には、深い理由があるように思えてならない。

何度も怪我して、それでも狩りへ行く。生半可な覚悟じゃないわ。憧れ一つでできることではないように思える。

「族長様、1つお願いを聞いてはいただけませんか?」

「言ってみるといい」

「もし……レレさんの言い分を聞いて納得できるだけのことがあれば――彼女を狩りに連れて行ってはくれませんか」

族長の話を聞く限り、2人はまともに話し合えてもいなさそう。お互いの主張一点張りで、相手が見えてないように思える。

意外と、話し合ってみれば分かり合える気がする。

「どうか聞きいれてはいただけませんか、族長様。お忙しい事は承知ですが、お願いします。レレさんは私が執り成しますので、何卒……」

「……わかった。お嬢さんにそこまで頭を下げるなら、話の一つも聞かん訳にはいくまい」

「ありがとうございます……! 族長様っ」

「しかしお嬢さん、何故会って間もないレレにそこまで気を使うんじゃ?」

「それは……」

この行動が少しでもレレさんの助けになれば、嬉しい。

またレレさんのあの明るい笑顔が見たい。できることならその笑顔を、私に向けて欲しい。

「愛ゆえ、でしょうか♡」

「……?」



南の集会場。

一際大きな大木に立てられた、これまた一際大きいツリーハウス。ここが族長の言っていた場所だろう。

2メートル強の高さのハシゴがかかっており、そこから入れるようになっているのね。よかった。これならガウルがいなくても安心して登れそうね。

ギシギシとハシゴを揺らしながらドレスが引っかからないよう慎重に登り、集会場の扉の前へ来る。

中からはシュルルル!というガヤガヤ談笑する声がした。

「失礼しまぁす」

一応扉をノックしてから入った。

中には大勢の若いリザードマンの方々がいた。多くが男性で腕相撲で賭け事をしてたり、血肉が滴る獣肉をかぶりついたりと、人族でいう酒場のような雰囲気であった。治安が悪そうなタイプの。

扉を開けると、西部劇のワンシーンみたいに全員が入ってきた私に注目する。荒くれ者がたむろう酒場に入ってきた流れ者じゃないんだけどなぁ。

というか彼らって、もしかして……。

「アァ? 誰だァ? 楽しんでるとこに水差し――ッ!?」

私の顔を見るなり、全員が目を丸くした。

そして――。


「お、おお、お嬢さんじゃねェか!? な、なんでここにぃ!?」

「お、おい! 人族のべっぴんなお嬢さんが来たぞ!」

「椅子用意しろ椅子!! 早くしろバカ野郎ッ!!」

大慌てで片付けともてなしの準備をしてくれる方々。とても見覚えのある方々である。やっぱり思い違いではなかった。彼らは……。

「やっぱり初日に出迎えて下さった紳士様方ですよね?」

「そ、そんな紳士だなんて照れるぜっ!」

「俺たちなんてただの荒くれ者みたいなもんだぜっ! シュルル!」

皆照れたみたいに顔が赤くなっている。可愛いわ。

「そ、それよりお嬢さん! 良かったらこの椅子に座って――」

リザードマンの男性の一人が、私に大きめの樽みたいな椅子を差し出してくれた。やっぱり紳士的な方だわ。そう思っていたら――。


「馬鹿野郎がァァアアッ!!」

リザードマン一の大男さんこと私が頬にキスをしたあの方がその椅子を瓦割りした。その剛腕は見事なもので、椅子は木っ端微塵になってしまった。

「お嬢さんにこんな粗末な椅子に座らせんじゃねェッ! ――それよりお嬢さん! こんな木クズより俺の背中に座ってくれェッ!!」

「まぁっ」

大男さんはその場で四つん這いになり上に座るように言ってくれた。

「けどよろしいのですか? 流石に失礼では――」

「とんでもないぜッ! 俺の背中はお嬢さんに座られるためにあるんだッ!! 是ェ非とも座ってくれぇッ!」

「そこまで言うのでしたら、お言葉に甘えて♡」

よいしょっと、あまり負荷がかからないよう慎重に座る。ゴツゴツした背中がお尻に当たる。ちょっとひんやりしているのが気持ちいいわ。

「お、おっふん!」

変な悲鳴をあげる大男さん。やっぱりちょっと重かったのかしら?

「大丈夫ですか? もし重かったら降りますので――」

「重いなんてとんでもないッ! むしろもっと押し当て……体重をかけてくれて構わないですぜッ!! そんでずっと俺の上に座ってくだせェッ!! 1日だって1ヶ月だって一生だって構わんぜッ!!」

「まぁ♡ それって斬新なプロポーズですか? ドキドキしてしまいます♡」

一生俺の上に座ってくれなんて、初めてされたプロポーズだわ。変わっているけど、漢気がある素敵な言葉でキュンとしてしまう。

「ッ!? そ、そそそそう思ってくれるなら、ぜ、是非とも俺のォ、そ、そ、そのぉ……。……! お、俺はお嬢さんに禊を立てる覚悟も――!」

何かを言い淀んでいると、他のリザードマンが――。


「テメェばっかいい思いしてんじゃねぇぞゴラァ!?」

「キスの次はお嬢さんのお尻まで堪能しやがってェ!?」

「お嬢さん! 俺の背中にも座ってくれェ!! ソイツのより絶対座り心地がいいぜ!!」

「いいや俺の背中を椅子替わりに!! それがダメなら腹を座布団にしてくれても構わねぇぜ!!」

「そ、そそそそれよりお嬢さん……! お、オイラの前のシッポの上に跨って――」

「テメェは死んどけッ!!」

「この変態野郎がッ!!」

バカスカとまたしても喧嘩が始まる。やっぱり賑やかで楽しい方々だわ。

けど今は、他の要件があって尋ねてきたのだ。


「すいません。皆様にお尋ねしたいことがあるのですが?」


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