表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/50

14話【八つ当たり】

ガウルが新たに加わり3人が乗った馬車は邸宅へと向かった。

1時間ほどの帰路を辿り、邸宅に着くともう日は傾いていた。

ガウルを買ったことをお父様に説明している間に、私はリーシャにガウルが入るためのお風呂を用意してもらった。


《ガウル視点》


貴族の家の広い浴室。

あの女、我が主人のアルミラが個人で入るための浴槽らしい。

そんな浴槽に奴隷の俺を入れるとは、風変わりな女だ。

「お湯は張っておきました。あとはご自分で体を洗ってください」

「ああ、わかった」

あの女の付き人であるリシャルテは素っ気ない態度だ。俺が気に入らないようだ。まあ奴隷を歓迎する方が物珍しい。

「……私には構いませんが、主人であるアルミラ様には敬語を使ってください」

「卑しい出自な為、敬語を知らぬ」

「だったら覚えてください。貴方の部屋に本を置いておきますから」

文字は読めないのだが、これ以上何かを言うと小言を言われそうだ。口をつぐんでおこう。


「俺の部屋があるのか? 何故だ」

「お嬢様が用意したのです」

「俺は奴隷だぞ」

「お嬢様は身分の下賎などお気になさらないお方なのです。かくいう私もただの平民です」

奴隷に部屋まで用意し、平民の女を最側近にするとは。

立派な邸宅、大勢の使用人。最低でも侯爵以上の家柄だろう。なのにそれにはそぐわない、あの女の行動。

やはり変な女だ、我が主人は。


「とにかく風呂に入ってください。体くらいは自分で洗えますよね」

「ああ」

「そうですか。では私はこれで」

終始一貫して冷たい態度、彼女は大きい布とガウンを置いて立ち去ろうとする。

「待て付き人、一つ聞きたい」

付き人がドアノブに手をかけた時、呼び止めた。

「はぁ……、付き人ではなくリシャルテです」

「それはすまない、リシャルテ」

「それで一体なんですか?」

リシャルテは冷たい目をしている。軽蔑や侮蔑といったものとは少し違う。だが、瞳の奥に確かな怒りがある。

「お前は俺を嫌っている。だが俺が奴隷であるからではないように思える」

その怒りは、俺がこの邸宅へ踏み入れたことへの不平不満ではない。

それよりも、もっと一個人的な、私的な感情に思える。

「……」

リシャルテは少し黙ってから、口を開いた。


「ただの八つ当たりです。気にしないでください」

バタンと扉が閉じた。

彼女が去り際にはなった言葉を、俺は理解できない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ