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13話【人が繋がるのには】

様々な事後処理を終え、1時間後。

「こちらの契約書にサインしていただければ、彼は正式に公女殿下の奴隷となります」

「ええ、ありがとう。タヌキおじさん」

店の入口にて書類にサインを行うと、ガウルは正式に私の奴隷となった。

金貨3枚で。日本円で言うところの3000万円と言ったところ。剣士奴隷としては高価ならしい。

その理由は彼が珍しい人族と獣族のハーフだかららしい。つまり半獣族。

人族と獣族の種族を超えた愛によって生まれた子。嗚呼、とってもロマンチックで素敵ね。

念願の奴隷。私を愛してくれる人。私が愛している人。

ふふ、これからとっても楽しくなりそう。


「ではこちらの隷属の首輪を奴隷にお付けください。付けた者の命令は絶対服従となる魔法が施されておりますので」

「ああ、それは結構よ。捨てておいて」

「はい、かしこまり……え?」

私の言葉にタヌキおじさんもリーシャまでも目を丸くした。

「お嬢様! 首輪を付けないなんて危険です!」

私の身を想ってこそ、リーシャは厳しく叱責してくれるのだろう。だけど、そんな首輪付けたら愛し合えるものも愛し合えない。

「万が一この奴隷がお嬢様を傷つけるようなことがあれば……!」

「じゃあそういう事がないように約束すればいいでしょ?」

「約束って……! そんな子供じゃないんですから! 信頼できる者同士だから約束は有効なのですよ!」

「でもこんな首輪があったら信頼も何もないわ」

「っ……!」

首輪をつければ絶対服従。きっとこれをつければ、誰でも私を愛してくれる。

けど、そんな物に頼った愛なんて私はいらない。人を繋げるのに物なんて不要。心と体があれば十分よ。


「ねぇガウル」

「なんだ」

「アナタは私を傷つけないって約束できる?」

「できる。決してお前を傷つけない」

ガウルは即決だった。鉄面皮の中に、固い決意を感じる。痺れちゃいそう♡

「ほらねリシャルテ。ガウルもこう言っているわ」

「……ッ、……ですが」

まだリシャルテは納得できないみたい。

さっき獣族の青年に襲われたことが引っかかっているみたい。

心配してくれる気持ちが嬉しくないなんてことはない。けど、もう少し私を信じて欲しい。きっとそれは、私がこれから行動で示していかないとダメなのだろうね。


「付き人」

膠着した状況で、ガウルが口を開く。

「信じてくれ。俺はコイツを傷つけない。何があろうともだ。亡き父と母に誓おう。それでも足りぬと言うなら、コイツを傷つけた時には即刻自害しよう」

リーシャを見つめるその瞳は、とても嘘が介在する余地のない純真なものだった。

それはきっとリーシャにも伝わったはずだ。

「…………店主」

「はい、なんでしょう?」

「首輪は私に預けてください。もしもの時は私が彼に首輪をかけます。――お嬢様、これが私なりの最大限な譲歩です」

「うん、信じてくれてありがとう。リーシャ」

「こういう時に愛称で呼ぶのはやめてください。……ズルいです」

頬を赤らめ膨らませるリーシャ。本当に可愛い。たくさん可愛がってあげたい。


「では、首輪はお渡ししておきますね。装着させた人物であれば自由に取り外しできますが、取扱にはご注意ください」

「ええ、ありがとうね、タヌキおじさん」

「いえいえとんでもない! ――あの~、それよりずっと気になっていたのですが、その狸というのは一体……」

「あっ、そうだった。タヌキおじさんに言い忘れるトコだったわ」

私は懐に入った巾着を取り出す。中にはまだ金貨が沢山入っている。3000万円使ったとは思えないほどの重量感だ。

その巾着に手を突っ込み、半分ほどを取り出した。多分一億円分位はあるかしら。

その金貨でいっぱいになった手をオジサンに手渡した。

「はい、これチップね」

ジャラジャラと音が鳴る金貨に、海外アニメみたいにオジサンは目を飛び出させる。

「うぇぇぇ!? ここここここ、こんな大金、よろしいのですかぁ!!??」

「ええ、今日は大変お世話になったからね。ほんの気持ちよ」

ちゃんとお店にお金を落としておかないと、ご贔屓にはしてくれないしね。

それに……。


「あ、ありがとうございます! これでより仕事に精が――」

「それでね、タヌキおじさん。1つ私と約束できる?」

「へ……?」

金貨の詰まったオジサンの手を、両手いっぱいに握りしめる。

力強く、目一杯の力で。金貨がオジサンの手にめり込むぐらい。

そして私は、静かに微笑んだ。決して明るくなく、冷たく微笑んだ。

その威圧に、店主は息を呑む。


「ここにはね、私を愛してくれるであろう沢山の人達がいるの? だからね、彼等にもっと良い暮らしを、住み心地のよ居場所を提供して欲しいのよ。このお金で」

「……! そ、それはもちろん――」

「絶対に約束よ。間違っても……自分の懐にしまっちゃダメだからね?」

「……ッ!」

見透かしたような私の目に、オジサンはドキリとした。

「もし私がまた来た時にね。なーんも変わってなかったり、さらに酷い環境になってたら……」

オジサンの耳元で小さく呟く。


「私、怒ってこの店ぜーんぶ壊しちゃうかも♡」

「ッ!? も、もももちろんそんなことは全体にありません!! 必ずや今の倍、いいえ10倍には良い環境に変えてみせます!!」

冷や汗の止まらぬオジサンは動揺しつつも約束してくれた。

「本当? 良かったわ。これからもご贔屓にね♪」

「い、いえいえ、こ、こちらこそ……ご、ご贔屓に……」


人が繋がるのには、心と体があれば十分。

かっこ。お金は除くものとする。


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