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12話【ガウルという奴隷】

「彼に決めたわ」

目が会った瞬間、即決した。

彼しかいない。直感でそう思わせてくれた。まるで恋に落ちた乙女みたいに彼から目が離せない。

「こ、公女殿下、しかしあのぉ、彼は……」

「ん? 何かダメなの」

「あっ、いえいえとんでもありません! 公女殿下にお売りできない奴隷など当店には一つもありませんから!」

「……?」

引っかかる言い方だが、まぁいっか。とにかく店主の許しは得られたわ。

あとは彼の意志を聞いて――。


「お嬢様! 危険です!」

リーシャは私を庇うように前に出た。そして立ち塞がる大きな影を睨みつけた。

たとえ一人倒れても、もう1人自由になっている、私を襲うことが出来る奴隷がいるから警戒を怠っていないのだろう。

けど彼は大丈夫だ。今回はちゃんと確信を持って言える。

「ッ! いけませんお嬢様ッ!」

立ち塞がる彼女を押し通り、彼と向き合う。

「彼は私を助けてくれたわ。だから大丈夫よ」

「ですがいつ気が変わって襲いかかってくるかは……!」

「私を信じて、リーシャ。大丈夫だから」

「……ッ! ……っ」

それ以上、リーシャは何も言わなかった。ありがとう、信じてくれて。


再び彼と向き直る。

「ねぇ、アナタの名前は?」

「……ガウル」

「カッコイイ名前ね。私はアルミラ、アルミラ・ランドリス」

「苗字が、あるのか。……やはり貴族か」

「貴族はお嫌い?」

彼は黙って答えに困っていた。

「正直なのね。そういうところも素敵っ♡ ……でも私がアナタの嫌いな貴族かどうかは、アナタの目で確かめて欲しいわ」

「どういう意味だ?」

「私の奴隷になって。ガウル」

ガウルと比べれば小さな手を彼の前に差し出す。

それは彼に了承を求めるものだった。

「奴隷に頼むのか。お前は変だ」

「変じゃないわよ。アナタの意思は大事だモノ」

無理強いはしない。無理矢理結ばれた関係に愛なんて芽生えないもの。だから私はちゃんとお願いする。彼の意思で、私を求めて欲しい。


「……わかった」

彼の大きな手は私の手を握り返した。とっても大きくて私の手を全部包こめそうな程だった。

「……! 本当に? とっても嬉しいっ!」

嗚呼、心が満ち足りる。私を求めてくれるなんて、とっても幸せ。

その満ち足りた感情が暴走して、つい彼の体に抱きついてしまう。

「……! なんで抱きつく?」

「ダメ? 私がしたいと思ったからそうしたのよ」

「構いは、しない」

彼の体に頬を当てる。

頭2つ分も身長差がある。とっても大きい。抱きついても、彼の胸の位置まで私の顔が来ない。

けど、伝わってくる。少しドキドキしているみたい。嬉しい。私もドキドキしているの、伝わってるかな。

「その、クサいと思うぞ」

「確かにちょっと臭うわ」

何ヶ月もお風呂に入れてないのね。帰ったらまずお風呂ね。

「なら離れた方が……」

「ううん、それでもいい。この匂いも好き。だってガウルの匂いだもの」

胸の奥がジンジンする。幸せな香りでいっぱいだもの。

「……そう、か」

困ったように、だが少し照れたようにガウルは言った。


嗚呼、嬉しいなぁ。

また、愛しい人に巡り会えた。


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