21話
マップに表示されている名前で「客間」(最初の間)。
カイトが最初に来た部屋と若干の家具の種類配置などに違いはあるが、おおまかなところは他の参加者が配置された部屋も基本的には変わらない。
次の部屋へと繋がる開口部と、中央のわかりやすい位置にアイテムボックスがある。
「さて、やるか……!」
そう言ってジェクターを構えたのは異質な女だ。
頭についた作り物の角、白と青を基調にした現代風の衣装。
この洋風の館とは似ても似つかわしくない、だが自信に満ちた表情はなぜか説得力を感じさせる。
「漆黒に誘え、“闇を照らす終わりの光”!」
独特の掛け声とともに、弾は飛び出して来なかった。
女が行なっていたのは打つフリ、いや、打つ練習だ。
ステージには静寂が流れ、代わりにそれを視聴している視聴者のチャット欄が慌ただしくなる。
〈頑張って、ハピーちゃん!〉
〈最初が肝心だよ!〉
〈何が何でも生き残るなら、強そうな人についていくのもアリ〉
〈は? 何言ってんのお前。ハピーちゃんは1人でも勝てるし。にわかファンかよ〉
〈確実に次のステージに進むなら協力は必要。お前は男と絡んでほしくないだけだろ〉
〈ハピーちゃん、今日も生きていてくれてありがとう〉
コメントは端末から参加者も見ることができる。
この端末は大外れ、大当たり、その他どのスポーン位置に配置されたとしても例外なく全員に最初のアイテムとして支給される。
ハピーはニヤリとする。
「ふっはっは! うむ、手に馴染んできた。そろそろ本格的に戦闘を開始してもいいかもしれないな!」
今日という日をワクワクしながら待っていたハピー。
今のところハント・ザ・デッドは彼女の期待を裏切るどころか応え続けていた。
銃型の武器、洋風の館、そしてゾンビ。
厨二病からしてみれば興奮する要素しかない。
それにハピーは楽屋で出会ったとある男のことで頭がいっぱいだった。
「名前は吉木、だったか。あいつ、わかっているじゃないか! 周りは滑稽な愚物にしか映っていなかったかもしれないが、我にはわかる……」
空に向かって指を突き立てる。
「あいつも我と同じ、裏の世界から来た異世界人だ!」
あの時は早死にすると言って脅すようなことを言ったが、心の中ではユウトの存在を歓迎していた。
ハピーが悪魔だとするなら、ユウトはゾンビが溢れたポストアポカリプスの世界で孤独に戦い続けるゾンビハンターと言ったところか。
ハピーはユウトに対して同族の匂いを嗅ぎ取っていたのだ。
そんな妄想に浸っていた時、呻き声が聞こえてくる。
暫くして現れたのは、ゾンビだ。
〈ゾンビきた!〉
〈改めて見るとめちゃくちゃリアル〉
〈てか本物にしか見えねぇ。動きもぬるぬる〉
〈ハピーちゃん大丈夫?〉
〈無理しないで〉
ハピーはゾンビを見て一層、興奮する。
まだ見ぬ場所、まだ見ぬアイテム、まだ見ぬゾンビ。
この先のことはハピーでさえ想像もつかないが、この瞬間一つだけ確定したことがあった。
「今、はっきり見えた。我の優勝する姿がな」
高らかに宣言する。
だがこのハント・ザ・デッドに優勝という概念はない。
【No.6 登録参加様名〈ハピー〉】
◇――――◇――――◇――――◇――――◇
不安、恐怖、焦燥。
清水ミヨの中でそれはもはや消えることなく、すぐ近くにあるものだった。
上京して一年。
周りの助けもありながらなんとか順応し、遂にバラエティ企画という最大のチャンスを掴んだが、その代償は相当のものだった。
腹の内で行われる同業者との睨み合い、忙しさで遊ぶこともできず友達さえ作れない孤独感、今の勢いを潰したら何もかもが地に落ちてしまうかもしれないというプレッシャー。
自分なら出来る、これが自分にとっての正解だ。
家族や地元の友人に喜びと共にそう伝えていたその裏で、ミヨは人知れず泣いていた。
自分のやっていることは間違っていないのか、自分は本当にやっていけるのか。
ミヨの生活には常に心労が付き纏っていた。
「……早く、早く帰りたい」
そしてそれは今も変わらない。
カイトの楽屋にいた参加者は、参加者の一人が爆死したことによってこれがただのライブイベントではないということは理解できた。
ただ、全員が同じ理解をしたわけではなく、「何かがあるが、その何かはわからないので、正しく脅威を認識できずに、まだ心の余裕を持ち続けている人間」もいれば、「何かがあるが、その何かはわからないので、正しく脅威を推し量れずに、未だに心の余裕が持てない人間」もいる。
ミヨの場合は後者だ。
カイトたち一般枠の参加者は本物のゾンビが出ることを知っている分、脅威も正しく認識出来ているが、場合によってはミヨのように脅威を認識していないからこそ脅威度が上がることもある。
ミヨは特にその傾向が強かった。
「――おいおい、それは俺が先に目をつけたアイテムだぞ? お?」
「――いつ目をつけていたのかは知らないが、先に手に取ったのは俺だ。それにお前が使っても宝の持ち腐れだ。俺のほうが上手く使える」
「――は? オメェ、何様だよ。あんま調子乗ってっと肩パンすっぞ」
最初のスポーン位置である部屋からさらに進むと、二人の参加者が何やら言い合っている場面に遭遇する。
どちらもミヨと同じ楽屋にいた人物だ。
冷静に諭すのは一般枠の“遊井”、もう一人のいかにも輩っぽい態度で接しているのは特別枠の“日住”。
【No.18 登録参加者名〈遊井〉】
【No.24 登録参加者名〈ショルダーパンチ日住〉】
同じ参加者に出会って一先ず安心感を得たミヨだったが、どちらも気難しそうだ。
「ふん、もういい……」
最後は遊井が折れる形で決着となる。
緊張状態が解けたところで、ミヨは話しかけるタイミングを失ったことに気づく。
暫く葛藤していると、先に日住がミヨに気づいて話しかけてきた。
「そこにいるのは……清水ミヨちゃんじゃん!」
あの一件を見た後だというのに、日住は尚も明るく振る舞う。
遊井は日住の声に反応しつつも、すぐ視線を元あった棚の方に戻す。
「ど、どうも……」
「なーに辛気臭い顔してんだよ。お前にはそんな顔、似合わねぇぞ?」
「は、はあ……。いや、はあじゃなくって……あなたも見ましたよね? 参加者の男の人が殺されたの。どうしてそんなに落ち着いていられるんですか」
当然、日住もあの惨状を目にしている。
一部ではなく、一部始終全てだ。
「あー、あれな」
まるで「そんなこともあったな」とでも言いたげな表情を浮かべる。
「めっちゃ面白かったよな! 人の顔面がロケットみたいに飛んでいくの。びっくりして思わず心の中で叫んだわ、打ち上げ成功! ってな」
「ふ、ふざけないでください。人が死んだんですよ? 全く面白がることじゃないでしょう」
「は? 人が死んだぁ?」
日住は一瞬、口を開けたままピタッと固まるが、それからすぐにミヨよりも一回り大きな体を揺らして大笑いしだした。
「あんな安っぽい演出を信じるって……ぴ、ピュア……! ピュアすぎだろ……!」
「演出……?」
「そう。運営側が用意したちょっとした遊び。わかりやすく言えばドッキリ的な? 配信で本当に人が死ぬわけないじゃん」
ミヨが戸惑ったのも無理はない。
さっきの日住はミヨからしたらただの他人の死を嘲笑う下品な男だ。
だが、ミヨと日住はハント・ザ・デッドに対する認識が根本から違う。
ミヨが後者なら日住は前者。
正しく脅威を認識できていないからこそ、余裕を持っている人間だ。
「なになに、あいつが殺されたから、もしかしたらここで自分も殺されるかもって思ってた? ないない。一体何に殺されるのよ、ここで」
「ゾンビ……とか」
「ゾンビ……ぶはっ。こりゃあ面白い。お化け屋敷で本物のお化けが出たーって騒ぐ子供と同じだ。なあ、あんたからも言ってやってよ。ゾンビは作り物だから映画みたいに殺される心配はないって」
もちろん日住の言っていることは一般的な観点から見たら正しい。
もし学校で二人が友達に同じ話をしたら、笑い者になるのはミヨの方だ。
そしてそれを自分でも理解しているからこそ、ミヨも強くは言い返せない。
実際に日住は本音で話しているが、ミヨの目から見ても彼が何かを隠そうと嘘をついているようには見えない。
何より、今のミヨはあれが演出だったということを否定する材料を持っていなかった。
「……ああ、心配ないぞ」
さらに日住の言葉に同意する遊井。
これで2対1。
返す言葉は頭からかき消え、でも周りとの温度差で焦燥感は益々募っていく。
「参加者はここにいる人たちだけですか」
「いや、もう一人自分をヒーローだとか言ってる変なおっさんがいるよ。今は周辺の探索に行かせ……行ってもらってる」
話題を変える。
他の参加者なら同じことを考えているかもしれないという、半分願望の籠った行動だった。
だがその話題は日住によってすぐに打ち切られる。
「つーかそれより見てよ、この銃。かっこいいっしょ。バン、バン!」
遊井と取り合っていたアイテム――ジェクターだ。
スターターアイテムと合わせて2つ。
まるで映画のキャラクターのように色んなところに照準を合わせる強者の真似をし、最後に天井のシャンデリアに銃口を向けた日住はそのまま躊躇うことなく撃ち抜いた。
撃ち抜かれたシャンデリアは一部部品が欠けて、音を立てながら床に落ちる。
ガラスが弾けるような嫌な音だ。
本人は「まあ、こんなもんよ」と決まったつもりで一人悦に浸っているが、周りからしたらいい迷惑だ。
「俺ってこう見えて天才マンなんだよね。子供の頃から何やってもすぐ要領掴んじゃってさ。自慢じゃないけど、2回戦突破は確定だと思うよ」
「へ、へぇ……。そうなんですね……」
「おう。だからミヨちゃんも俺の技術を見て学びな? さっきは動かない的を狙ったけど、実戦のゾンビは動いてくるから狙うのが難しくなるし、状況によっては自分自身が動いていることもあるから。まあ、そうなっても俺は問題ないけど? むしろミヨちゃんを守りながら戦うことも出来るっちゃ出来る的な?」
そう言うと、再び銃口を振り回して出来る男を演出する日住。
「さあ、ミヨちゃんを不安がらせる悪い奴はどこかなー?」
シャンデリア、机、花瓶と照準を移動させて、最後に銃口は遊井を捉える――。
「ちょ、ちょっと流石にそれは冗談でも……」
「……お前、マジで殺すよ」
「おう、やってみろよ。肩パンで殺すぞ」
再び訪れた一触即発の空気。
「――うぁぁぁぁあ!」
その時、悲鳴が聞こえてくる。
「な、何!?」
「この声は……さっきのおっさんか?」
ミヨがここに来る前にいた自分をヒーローだと名乗るいかにもバカそうな男のことを思い出す。
悲鳴は一度きりで、その後は静寂が戻っている。
何かあったと考えるのが妥当。
「大方、ゾンビに奇襲されたんだろ。こっちもうかうかしてられない。さっさと最初の戦闘を始めようぜ」
意気揚々とジェクターを構える日住。
だが、途中で違和感に気づき「あれ?」と呟く。
「あいつはどこいった」
後ろを指差して日住はそう言った。
さっきまでそこにいた遊井がいない。
いつのまにかこの部屋には日住とミヨの二人だけになっていた。
「ど、どうなってるの……」
「逃げ出したか。まあいい。相手は所詮ゾンビ。このショルダーパンチ日住さま一人で十分だ」
「あ、待って……」
余裕を見せる日住に対し、明らかにさっきまでと空気が違うことを察するミヨ。
そしてその時はすぐにやってくる。
灰色に変色した肌、剥き出しになった骨、濁った眼球。
鼻をつく腐臭と、動くたびに響く関節が軋む音。
映像作品に出てくる生きる屍が悪夢となってそのまま這い出てきたかのようなそれは、このゲームの主要ギミック――ゾンビだった。
「……グゥ……ウゥ……」
ゾンビは覚束無い足取りで真っ直ぐミヨたちの方に向かい、今すぐにでも襲い掛かろうと口を開けている。
「出たな腐れポンチ。お前がここで死ぬ未来は変わらないが、今反省するって言うんなら天国行きは間に合うと思うぜ」
それにすかさずジェクターを構え、臨戦態勢を取ったのは日住。
初めてのゾンビにフリーズしてしまう人間も多い中で、ここまで順応できているのはさすが才能マンといった感じだ。
だが、残念ながら順応できることは必ずしも生存力を高めることには繋がらない。
「は?」
ジェクターから放たれた二つの弾丸は、それぞれゾンビの右肩と左腕に命中する。
問題があったのはその後。
ダメージを受けたはずのゾンビは平然としたまま、尚もミヨたちに向かって進み続ける。
「おい、なんで当たってのにまだ倒れねぇんだよ。センサーの故障か?」
センサーの誤作動を疑った日住は、自らの判断で戦闘を中断してゾンビに近寄る。
「おい、このポンコツ!」
そして喝を入れる肩パン。
ゾンビは一瞬揺らぐが、当然ダメージにはならないのですぐに体勢を立て直す。
何の幸運か、獲物はすぐ目の前だ。
「痛っ……!」
首元に噛み付いたゾンビ――瞬間、日住がのけぞる。
よく見ると、日住の首から血が溢れ出ていた。
同時にミヨから「きゃ!!」という悲鳴が上がる。
「痛ぇな。おい。何しやがる……待て、血? 血が、血が出てる……!? おい、やっぱりちゃんとロボットの制御ができてねぇじゃねーか。どうなってんだ、ここの運営は。終わったら絶対、訴えてやるからな」
徐々に覚束なくなっていく言葉と、相変わらず強気な態度。
可哀想なことにこんな悲惨な状況になってもまだ気づいていないのだ。
相手が本物のゾンビだということに。
「ってか、まじで……痛い。力も、強いし。ふざけんなよ、まじで。なんだこれ。俺、今どうなってんの。ミヨちゃん、俺、生きてる、よね」
二人の目が合う。
今までは無意識にミヨが目を合わせることを避けていたので、これが正真正銘、二人の初めての目合わせだ。
「血が、意識が……誰か枕、低反発のやつ……いや、その前に包帯を……。おい、ぼさっとするな、早く動け……」
その間もゾンビは容赦なく襲いかかる。
首の肉を引きちぎり、飽きたら顔の方へ。
収まりのいいサイズの耳を一噛みで平らげ、次は柔らかそうな目玉に食い付く。
「こんなの聞いてな……」
そこでようやく意識を手放した日住。
殆ど無意識だった。
次は自分の番。
今の光景を見て理解できたのはただそれだけ。
だが唯一のそれが体を勝手にゾンビのいない方向に動かした。
「嫌だ……」
不安、恐怖、焦燥。
清水ミヨの中でそれらはもはや消えることなく、すぐ近くにあるものだった。
ハント・ザ・デッドが始まって数分。
参加者の中には全てが順調に進んでいく者もいるだろう。
挫折を経験せず、豊富なアイテムと運で次々と困難を突破していく。
だがミヨは違う。
最悪のスタートを切ってしまった。
それも人生の最後の方まで引きずってしまうほどの最悪のスタートだ。
もうすでにさっきのゾンビは撒いている。
でもミヨは走る。
理由はただ怖かったからというのもあるが、1番の要因は走り続ければ誰かが助けてくれるかもしれないと思ったからだ。
そう考えたら、どこに向かっているかもわからない足を止めようにも止められなかった。
いつかはこの恐怖を乗り越えなければならない。
それがこのハント・ザ・デッドで生き残る絶対条件。
待っていても何も始まらない。
誰かが救い出してくれるなんてそんな都合のいいことが起きる可能性は少ない。
目の前で死んだ日住なんかがまさにそうだ。
ここでは簡単に人が死ぬ。
そしてその上でもし本当に救い出してくれる人間が現れるとしたら――。
それはミヨにとって神様と呼んでも差し支えない存在になるだろう。
「――清水ミヨさん」
足を止める。
その瞬間、我慢していた涙がどっと溢れ出す。
「セトラッシュ、さん……」
セトラッシュは優しい笑みを浮かべてミヨを安心させる。
「助けに来たよ」
「助けに?」
「ゾンビだけじゃない。脅威は同じ参加者もだ。オカモトカンパニーの連中、悪い噂の絶えない鬼塚、そしてその中でも特に……坂井カイトという男なんかはね」
◇――――◇――――◇――――◇――――◇
その男は恐れられていた。
目元を覆い隠すサングラス、鬼のツノを彷彿とさせる逆立った髪、色黒の肌、そして常人離れした巨体。
楽屋にいた人間は誰一人として彼に絡んだ者はおらず、あのミヨでさえ挨拶するのも少し躊躇ったほどだ。
「いやー、危ないところをほんと助かったよ!」
返り血のついた服を身に纏った道元が馴れ馴れしく肩を叩く。
男は何か言いたそうにしつつも、僅かに顎を引いて会釈する。
「でもまさかこんなところであの有名な柔道家、重岡クニヒロさんに会えるなんてな。人生何があるか分からないなー、がっはっは!」
解説する道元が高笑いする。
男は一瞬体をピクッとさせつつも、視線を前に固定して歩みを進める。
「あのロサンゼルスオリンピック、すごかったなー。鬼気迫る表情。当時は本当に相手の選手を殺すんじゃないかって心配してたんだ。そして結果は当然のように金メダル、ついた異名は死神。くぅ〜懐かしい!」
過去を噛み締める道元が嬉しさに両の拳を握りしめる。
男は前を見つつも、気に障ったように一度チラッと道元の方を見る。
「というか、さっきから何で無視するんだよ」
一方通行の会話をしていた道元が遂に不満を示し始める。
男は考えるように視線を巡らせつつも、そこでも無言を貫く。
「あ、もしかして触れてほしくない過去だったとか? それならそう言ってくれよなー」
閃いた道元が肩にそっと手を置く。
男は無言を貫きつつも、無遠慮に置かれた手を気にし始める。
「なあ、聞いてんのか。安藤さん。あの決め台詞言ってくれよ。『私は勝利と血の匂いが好きだ』ってな。なあ、おい」
痺れを切らした道元が腕を掴む。
男は前を気にしつつも、そこでようやく足を止める。
「……ああ」
道元が固唾を飲んで見守る。
ようやく声を出した男は迷いつつも、それを奥にしまいこむ。
「多分……」
期待に満ちた道元が相槌を打つ。
男は目を伏せながらも、決心して口を動かし始める。
「……違いです」
「え?」
「多分、人違いです。僕、柔道やったことないです……。というか、スポーツもやったことない……」
道元が言葉を失う。
言い切った男はようやく真実を伝えられたことに安堵しつつも、気まずさに頬を掻く。
「え?」
道元が素っ頓狂な声をあげる。
男は言ってしまったと思いつつも、後戻りできない状況にとりあえず笑顔を浮かべる。
【No.5 登録参加者名〈鬼塚〉】




