20話
「大外れ……?」
それはカイトにとって無視できない事実だ。
ゾンビもののホラーゲームには基本的に難易度というものがある。
ノーマルやイージー、ハードからエキスパートまで色々あるが、総じて言えることは難易度が上がれば上がるほどクリアが難しくなるということだ。
敵の耐久が高くなったり、ゲームによってはセーブができなくなったりもする。
上級者でなければゲームオーバーの回数が上がっていくのは必須。
そしてこれはゲームではなく、セーブもコンテニューもないデスゲーム。
同じ条件を当てはめるとしたらもはや悲惨という言葉だけでは足らない。
絶望――。
場を盛り上げるための嘘。
可能性はあるが、素直に喜べるほどの材料ではない。
じゃあ聞き間違いだろうか。
いや、それはもっとありえない。
ハズレと言った後に、わざわざその意味までちゃんと説明していた。
それにカイトの耳にはしっかりとあの時の言葉が一言一句残っている。
これは紛れもない現実。
カイトの選んだ番号は他よりも生存率が低くなる高難度のルート――。
「ははっ……」
もはや笑うしかなかった。
「……と、とにかく行かないと」
覚束ない足取りながらも、カイトはそこでようやくステージに足を踏み入れる。
最悪が確定したとはいえ、まだ何かが起こったわけではない。
全てを判断するのは中に入ってからでも遅くない。
「これは……洋館?」
扉が開いてチラッと見えていたが、最初に飛び込んできたのは洋風の部屋だ。
重厚な額縁に収まった老人の肖像画がこちらを見下ろし、カチカチと音を鳴らす振り子時計が耳障りなほど室内に響き渡る。
これはただの演出――自分に言い聞かせる言葉とは裏腹に、心拍数は跳ね上がり、掌には汗が滲んでいた。
「テストプレイの時は病院だったけど、今回はそういうコンセプトなのか……」
テストプレイの舞台となったのは今は使われなくなった廃病院で、中はそのまま病院を再現されていた。
今回の舞台はネクサス社が所有する商業施設で、中は洋風の館。
楽屋からの移動中にすでに気づいていたが、明らかにこの日のために内装から構造まで全て作り替えられている。
廃病院の、部屋同士の壁をぶち抜いて一つの迷路にしていたのとは訳が違う。
まるでこの商業施設自体がハント・ザ・デッドのために用意されていたかのようだ。
「何考えてんだよ、まったく……」
規模の大きさに言葉を失うカイト。
ネクサス社がいくら大企業とは言え、ハント・ザ・デッドというライブイベントのためだけにバカにできない金と労力を動かすのは、会社にとってメリットがあるとは思えない。
極論を言えば、別にステージを用意したり、ライブ配信をしたりせずともゾンビと参加者を戦わせることはできる。
むしろ情報漏洩の観点から見れば、デメリットの方が大きいと捉えることもできるのだ。
ここまでして、ゾンビ化というゲームや映画でしか聞かないような現象を現実に再現し、ゾンビパニックを起こす目的は一体何なのか。
考えれば考えるほど謎は深まるばかりだ。
「入口は……流石にないか」
実は最初の扉が出口でしたというオチが万が一あった時のために一応、来た道を戻って扉を開けてみるが、固く閉ざされていた。
「仕方ない、そろそろ見てみるか」
そう言いながら、中央のライティングデスクに足を運ぶ。
他のオブジェクトよりも重厚で、置いてある場所が場所だけに存在感も大きい。
ここに来た時からずっと気になっていた場所だ。
その上に堂々と置かれているのは、場違いな長方形型の白い箱。
テストプレイの時とは若干見た目が違うが、アイテムの入った箱と同じ雰囲気を醸し出している。
「……でかいな。それにここまで分かりやすく置いてあるってことは……これがスターターアイテムってことでいいんだよな」
備え付けの引き出しを漁ってみるが、ペンや本、あとは「とある信徒の日誌」と書かれた紙があるだけで、アイテムらしきものは見当たらない。
ということはやはり目の前のこの白い箱がアイテムボックスであり、運営の男が言っていたスターターアイテムなのだろう。
ないとは思うが罠を警戒しつつ開けてみると、そこには複数のアイテムが詰め込むように入っていた。
「何だよ。びっくりさせんなよ。何も入ってないって状態も想像してたのに」
中身があったことに、カイトは一先ずホッとする。
高難度ということで頭の中には色んな想定が行き交っていた。
その中の一つがそもそもスターターアイテムすら持たせてもらえない状態だ。
最初に十分な武器がないことが如何にクリアを難しくするのかをカイトは身をもって知っている。
運営側の視点から見てもスターターアイテムで差をつけるのはわかりやすい難易度調整だ。
他にも開けた瞬間から箱にあった光の緑のラインが消えていたり、内蓋に謎のバーコードのようなマークがあったりと気になることはあるが、中身があることがわかった今重要なのはやはり何が入っているのか、だ。
「肝心の中身は……」
まず最初に手に取ったのは、箱の手前側に置いてあったアイテム。
スマホのような見た目で、ちょうど指を伸ばした時の手と同じくらいのサイズの薄型パネルだ。
側面のスイッチを押して起動すると、本当にスマホのように画面がついて、上から「読み取り」、「ライブ」、「ランキング」「共有」という項目が出てくる。
「たくさんあるな。時間がかかりそうだからこれは後回しに……いや、読み取りってことはもしかして……」
ピンときたカイトは試しに読み取りの項目を押して、ボックスの中身の中でも一番大きなアイテムにかざしてみる。
棍棒のような見た目で、太い部分には半分刺さった状態の釘がいくつかある、ホラーゲームでいうところの釘バットに近い武器だ。
名称「ネイルバット」
等級:ノーマル
備考:木製バットの亜種。釘がついている分、攻撃力が上がるが、耐久性は落ちる。
画面にそう表示される。
見覚えのあるものだ。
テストプレイの時にも見た、アイテムの詳細だ。
「なるほど、この端末はアイテムの情報を教えてくれるのか」
箱の中に説明書が同封されていたテストプレイの時とは違い、本戦からはこの端末を使ってアイテムを解析出来るようだ。
すぐに理解した。
他にもまだ機能があるようだが、とりあえず今はこの読み取りだけ使えればいい。
「近接武器はありがたいが、やっぱり今必要なのはあれだな」
あれと言うのはもちろんジェクター。
遠距離武器で威力も高い、このハント・ザ・デッドではほぼ必須とも言える武器。
釘バットは脇に置いて、次は底の方にあるアイテムを手に取る。
名称『ゾンビカラー』
等級:ノーマル
備考:鎖のリードがついた首輪。参加者がつけているものと同じで一度つけると取り外すことはできず、無理やり取ろうとしたり強い衝撃を受ければ爆発する。
「何だコレ……」
見た目だけでいうなら犬のつけている首輪と殆ど同じだ。
釘バットはすぐに用途を思いついたが、これに関してはどう使うのが正解なのか全くわからない。
単純に考えるなら爆発を利用することだが、そもそも首に取り付けるまでが困難だし、仮にとりつけられたとしてもゾンビがそれを自らの意思で取り外そうとしなければその時点でゴミだ。
「だ、大丈夫なのか……」
アイテムが減っていく度に不安が掠める。
いや、カイトはこの時点で気づいていた。
自分が置かれている状況がいかに最悪なのかを。
名称『黄金の硬貨』
等級:――
備考:純金で出来た硬貨。その輝きは荘厳さすら感じさせる。
名称『祝福の鍵』
等級:――
備考:困難を乗り越えた者にのみ送られる祝福、それを開けるための道具。
「えっと……これだけ?」
カイトは目をパチクリさせる。
中身は入っていたし、一つの箱にしては量もちゃんとあった。
だが肝心のジェクターがない。
対ゾンビ戦のための必需品。
それがどこを探しても見当たらない。
箱を隅々まで見て回っても、一度出したアイテムたちを綺麗に並べても、どこにもジェクターはない。
「まさか……」
確かに運営の男は一言もジェクターがあるとは言っていなかった。
あくまでも武器。
冷静に考えたら、ジェクター以外の武器が支給される可能性があることにはそこで気づける。
そもそもジェクターがメイン武器で当たり前に支給されるということ自体がカイトの思い込み。
テストプレイの時はただああいうルールを試していただけに過ぎない。
「ははっ……」
全てを理解して、思わず笑みが溢れる。
「なんだよ畜生……」
正直、アイテムボックスを開ける前はまだ希望を何とか繋いでいた。
なんだかんだ言っても結局、テストプレイの時と同様に運と経験でどうにかなるのだろうという漠然とした自信があった。
だが現実は残酷だ。
ジェクターの代わりに用意された釘バット――これは消耗しにくい点を除けば威力も射程も全てジェクターに負けている劣化武器だ。
ピンチの時の奥の手としては心強いが、メインで使うにはあまりにも使い勝手が悪すぎる。
立ち位置としてはあくまでもサブ武器。
自らが率先してゾンビに向かって振り回すような代物ではない。
その他のアイテムもとても戦闘向きとは言えない。
つまり、今のカイトは抗おうとする行動自体を他の参加者よりも制限されている状態だ。
どんなに抗う意思を示したとしても、行動をさせてもらえなければ意味がない。
そしてこのハント・ザ・デッドでそれは死を意味する。
これが高難度たる所以。
最初であると同時に最後になるかもしれない関門。
最初からカイトの運命は決まっていた。
結局、ゲームとは名ばかりの参加者たちを弄んで楽しむ殺人ショーなのだ。
「……グゥ……ゴォ……」
呻き声が聞こえてきたのは、ちょうどその時だ。
もはや見て確認するまでもない。
ゾンビだ。
数は四体。
真っ直ぐこちらへ向かってきている。
「……もういいよ」
諦めの言葉を口にするカイト。
希望を失ったカイトにとってこの状況はもはや脅威という認識ですらないのだ。
しかし、それは行動の全てをやめるということではない。
「どうせ死ぬんだ。やれるところまでやってやるよ」
一旦、頭を空っぽにする。
アイリのことも、ミヨのことも、ハルたちのこともユウトのことも全部忘れる。
ハント・ザ・デッドが死の伴うデスゲームであることも今は隅に置いておく。
これはゲームだ。
絶望的な状況を打開していく、ハラハラドキドキのゾンビサバイバルゲーム。
死の恐怖なんて存在せず、ただ目の前の試練をクリアするために立ち向かう遊び。
そしてそこに参加するカイトは一挑戦者。
求められていることはただ落ち着いてプレイすることのみ――。
「それに……」
スターターアイテムを全て回収してから、唯一の武器であるネイルバットを構える。
「一回、思いっきり生き物の頭をフルスイングしてみたかったんだよなァ……!」
殴った。いや、殴りに行った。
のそのそと歩くゾンビたちが煩わしかったので、自分から襲いかかりに行った。
殴って殴って殴って、特に顔面を重点的に殴って殴って殴った。
ボールを打つ時とは違う、ズシリと重く、粘りつくような感触。
一瞬、手が止まりそうになるが、それでも振り抜く。
今はその不快感よりも、目の前のターゲットを排除する爽快感が頭の中を支配していたのだ。
一体目が動かなくなったら、すぐに次だ。
休むことなくネイルバットを振り回す。
時に空いた手で部屋に置いてあるオブジェクトを掴んで、それも振り回し、そして投げつけて徹底的に攻撃を加えた。
二体目、三体目に関して同時に反撃してきたので、片方からの攻撃を防ぐために、両方にダメージを与えて牽制しながら戦った。
一体目の時よりも手こずったが、要領を掴んでいたおかげで精神的には遥かに余裕があった。
心なしかゾンビの勢いも始より小さかったように思う。
そして四体目のゾンビはもはや作業だった。
「……ボケが、見たか」
全てのゾンビが地に伏す。
「あんまり舐めんじゃねーぞ。こちとらテストプレイ生き残り組なんだよ」
そうは言ったものの、正直自分でも驚きだ。
待ち構えるのではなく、自分から攻撃を仕掛けたのが功を奏した。
ただでさえ逃げ場のないこの空間で、端に追い詰められるのはそれだけで命取りだった。
そしてカイトはそれを前に出ることで意図せず克服していた。
もちろん途中で挟まれそうになった時もあった。
だが、ライティングディスクといったオブジェクトを使ってうまくゾンビの行動を調整することで、ギリギリ戦えた。
特に最初の部屋にあった金の兜のような置き物は武器としても大いに役に立ってくれた。
あれがなければ状況は悪くなっていただろう。
カイトはこの理不尽を自分の力だけで見事に乗り越えた。
ゲームクリア。
今ならそう胸を張って言える。
「待ってろ、アイリ。俺がすぐにそっちへ向か……」
言いかけて、途中で止めた。
「――ヤベェ、ヤベェよ……!」
突然、響いたカイト以外の人間の声。
しかも聞き覚えのある声だ。
「何なんだよ。何で俺がこんな目に遭わなくちゃならなんいんだよ……!」
そこにいたのはなんと楽屋にてカイトと一悶着あった男。
視認した瞬間、あの時のことを思い出して思わず悪態をつきそうになるが、すぐに我に返って臨戦体制に入る。
今もっとも注目すべき点はその男ではなく、背後に迫る影――。
「「……ウゥ……フゥ……」」
ゾンビが立っていた。
もちろんただのゾンビではない。
腐った体を包んだ金色の厳かな鎧、右手に握られた太い金色の剣。
洋風の館ではむしろ様になる見た目をしたそれは、明らかに通常のゾンビにはない異質な雰囲気を漂わせている。
カイトは目を閉じてゆっくりと深呼吸し、そしてまた目を開ける。
「このクソゲーがッ!」
◇――――◇――――◇――――◇――――◇
選手紹介もとい、参加者紹介。
一般枠、特別枠関係なくNo.1からNo.28まで総勢28名の人物が順番に紹介されるそのコーナーは、それぞれ自分の番が来たら一言コメントをしたり、ポーズを取ったりしてアピールすることができ、チャット欄は今までで一番の盛り上がりを見せる。
『エントリーNo.26、スポンサーの息子――登録参加者名“スラッシュ”!』
〈コネか〉
〈コネじゃねぇか!〉
〈スラッシュのお父さん、どうして僕を出させてくれなかったんですか〉
〈お母さんかもしれないだろ〉
〈お母さん僕も出たかったです〉
『エントリーNo.27、とある宗教の教祖――登録参加者名“教祖ディエゴ”!』
〈カルト出していいのか〉
〈これなんのポーズ?〉
〈信者だから祈ってるんだろ〉
〈祈り方草。チューリップやん〉
〈初めて見た〉
『……そして最後はこの人』
一拍置き、勢いを蓄えてから再び口を開ける。
『エントリーNo.28、どこにでもいる普通の高校生――登録参加者名“カイト”!』
〈誰だよ〉
〈また知らんやつ〉
〈他の2人とは違って冴えないな〉
〈いや、まて。こいつあれじゃね〉
〈ほんとだ。例のやつだ〉
一般枠の参加者には必ずと言っていいほどある「誰?」というコメント。
これに関してはそもそも一般枠という制度自体が特殊で仕方ないことなのだが、カイトの場合は特別枠の参加者だけではなく他の一般枠の参加者とも反応が違った。
〈カイトってこいつじゃん〉
〈おい、来た。こいつだ〉
〈まじで許せん〉
〈何があったの?〉
〈わからないやつはセトラッシュの投稿見てみろ〉
チャット欄に漂い始めた不穏な空気は不穏なままでは止まらず、よくない形で加速していく。
〈ミヨちゃん逃げて! そいつミヨちゃんのストーカーだよ!〉
◇――――◇――――◇――――◇――――◇
全ての参加者は最初、マップに載っている名前で「客間」と呼ばれる、いわゆるチュートリアル部屋に転送される。
「言った通りだ……」
フロアの数は全部で7つ。
これは7つそれぞれで難易度が変わるというわけではなく、1を大当たり、7を大外れとするなら、それ以外のルートはそれなりの難易度といったところだ。
だからこのルート選びで損をするのは7でスタートした参加者、そして得をするのは1でスタートした参加者だ。
「これが大当たりのルート……」
目の前で力無く倒れるゾンビを見ながら伊崎アイリはそう呟く。
片方の手にはジェクター、もう片方の手にはジェクターのパーツをさらに増やしたような銃型の武器が握られている。
名称『リ・ジェクター』
等級:エピック
備考:ジェクターの強化版武器。威力、射程ともに強くなっているが、通常弾を2発消費しなければならない。
エピック――テストプレイには存在しなかったレア度だ。
参加者数、ステージの大きさ、それ以外にもアイテムの種類もテストプレイの時と比べて規模が大きくなっている。
当然、アイテムはレア度が上がるほど入手するのが困難になるが、これが大当たりのルートである所以。
ジェクターと共にスターターアイテムとしてボックスに封入されていた。
「これがあれば私だって……」
ユウトを励まし、カイトを奮い立たせるという大人の対応をしてきたアイリだったが、実はハント・ザ・デッドに向けて一番緊張していたのは彼女だ。
テストプレイでは碌に動くことができず、生きていたのは本当に周りのおかげだ。
仮にあの時の状態を本戦でも続ければ、生き残る確率はガクッと下がる。
ユウトやカイトと協力するにしても、合流するまでは一人だ。
アイリは自分の立場をよく理解していた。
「――おお、主よ……」
ふと横から男の声が割り込んでくる。
「どうして……どうしてなのですか……」
今にも泣き叫びそうな勢いで喋るのは、特別枠の参加者の1人――教祖ディエゴだ。
「これも、試練なのですね……」
法衣のような衣装を身に纏い、両手で花を作るようなあまり見かけない独特な所作の祈りを虚空に向かって捧げている。
この場にいるということはもちろん彼も大当たりのルートを選んだ幸運な参加者だが、彼は喜ぶよりも悲しみに暮れている。
目を潤ませ、名前に入る教祖を体現するように神に助けを求めている。
「わかりました、ええ、わかりましたとも……」
アイリはそっと目を逸らす。
正直、途中まではディエゴと協力できないかと考えていたが、それは叶わぬ夢だった。
理由は言うまでもない。
「おお、主よ……目の前に立ち塞がる全てを破壊して必ず会いに行きます」
その言葉に思いがけず、心臓が高鳴る。
「…………」
会いに行く。
その一言には共感できた。
早く会いたい。会って抱きしめたい。
それが今のアイリの目標だ。
生き残る術は身につけた。
あとは自分自身と運次第。
ディエゴが言っているように、ここでいくら悩んでいても始まらない。
再会を果たすためにはまず自分が生きていなくてはならない。
「私も早く行かなかきゃ、だね……ユウト」
その名前を口ずさんだ後、アイリは次の部屋へと向けて足を動かした。
「――待ちなさい」
その時、不意に呼び止める声が聞こえてくる。
ディエゴではない。
芯の通った女性の声だ。
「……どういうつもりですか」
振り返ってようやく理解する。
サラサラと流れる金髪、宝石を思わせる青色の瞳。
そこには楽屋でアイリを助けたエリザの姿があった。
「それはあなたが一番わかっているはずよ」
獲物を見定めるような冷徹な瞳。
そしてそれよりも目を引くのはエリザがアイリに向かって差し出す右手だ。
「知っていることを教えなさい」
そこにはゾンビの対抗手段であるジェクターが握られていた。




