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それでも、生きていた  作者: sinnemina
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第4−3話

取り調べが終わり、僕は解放された。三日振りのシャバの空気だ。何故、僕が釈放されたかと言うと、収監中、盗み聞きした看守の話から察するに証拠不十分な上、ジオディさんの抗議もあり、体裁が悪いのが表向きの理由。本当の理由は複数犯の仕業だが共犯者が誰なのか見当がつかない、なので僕を泳がせればいずれ仲間と合流するはず、その時に一網打尽にすれば事件が解決する目論見だ。その為、一旦僕は自由の身にされたのだ。




…まあ、僕を張り込んだところで無意味なのだが。そういえば犯人達は一体何処に消えたのかな、特に探す気は無いけどさ。




これからどうしようか、もう帰る家もやる事も無くなったからな。こうしてると、自殺する前の気持ちを思い出すな。独りになったから尚の事だ。今はもう死ぬ度胸などないが、贖罪する訳でもなく惰性で生きてるこの現状にはウンザリする。逃げているだけなのは自分でもわかってはいるが。




とぼとぼと街を歩いているとファルザさん達の顔がよぎってしまう。並んで歩いて笑い合った横顔が浮かび上がり、そして同時にあの光景がフラッシュバックする。僕が一家を見捨て惨劇を生んだあの事件を。…………許してください。




いっそこの街から出て行くか! 見知らぬ土地に行こう、遠く離れた地へ。ファルザさん達を忘れられる、あの人達の面影を感じる事のない日常を過ごしたい。何も無かった事にしよう。またやり直そう。






ハハハ、やっぱり最低だな僕って。




忘れる、無かった事、やり直す、だって。仇を討つ事も弔いもせずに自分の事しか考えてないや。そうだよな、自分の事しか考えてないから助けなかったんだろうな。




まあ、いいか。とにかく旅に出るにせよ荷物は取りに行こう。




こうして、僕はファルザ家に置いてある荷物を取りに歩いた。もう誰もいないファルザ家へ向かって。



久しぶりに訪れたファルザ家は以前とは打って変わった外観となった。久しぶりといっても三日しか間を空けてないが、畑は害獣か泥棒にでもやられたのか実がついた作物は盗られていて、苗は茶ばみがかって少し枯れている。


牛小屋には牛がいなかったので、おそらくファルザ家の親族に引き取られたか、売られたかでもしたのだろう。




家の周囲には人っ子一人もおらず、憲兵すらもいなかった。捜査が終わったのだろうか、僕としては人目が無い方が、荷をまとめるのに動き易いので都合がいいが。




僕は物置小屋に入り荷物をまとめ始めた。といっても服が数着と歯ブラシや手ぬぐい等を風呂敷にしまうだけなので、すぐに終わった。


あとは以前、棚に隠していたお金の袋を取り出して身に着けると準備完了だ。




小屋から出て、外から家をチラリと見ると複雑な気持ちになった。あの事件以降、建物内はどうなったかも気にはなるが、それよりも寂しい気持ちが込み上げてくる。短い期間だったが思い出が詰まった場所だからな。


家に入りたい気持ちもあったが、見たくない物を見てしまったらと考えると断念した。多分、死体だけは火葬か土葬なりで弔ったのだろうが、現場は掃除されずに壁や家具に付着した血痕や衣服の切れ端等はそのままだろう。


特に必要な物は家の中には無いし、入ってる場面を誰かに目撃されたら泥棒扱いされるかもしれないしな、下手な誤解を産まない為に入らないでおこう。




そういえば、ジオディさんに庇ってもらったお礼を言わないとだ。ジオディさんのおかげで早めに釈放されたからな。いや、言わなくてもいいか。もう面倒になってきた部分もあるが、今は誰とも会話をしたくない気分だ。それに、旅に出たらどうせ二度と会う事は無いしな。そう考えると、とっととこの街から出て行きたいよ。




となると、もうやる事は無いな。出発しよう。行き先はどうしよう、南にでも行こうかな。温暖な気候や楽しそうなイメージがあるから全てを忘れられるかもな、でもこの異世界の環境を知らないから南下すれば暖かくなるとは限らないんだよな。まあ、それはどの方角に行っても同じか。どうせ行き先が決まってないのだから最初は南に向かってみるか、ダメだったらまた別の方に行けばいいだけだし。




よし、行き先は南に決まった。それじゃあ出発だ!


一旦、街へ戻り街道に出たら、南区へ向かい歩き出した。方角は中央山脈の位置と現在地が西区である事を考慮すると、おおよその方向がわかった。




街道から歩き始めて30分程で第一検問と書かれた看板の建物が見えた。検問所は周りは3m程の塀に囲まれ、塀の付近では憲兵がチラホラ見える。少し離れた櫓には弓を携えてる者もいた。




検問所に入ると中にも屈強な憲兵が数人いた。窓口らしき所へ向かうと40代ぐらいの男性がアンティーク調の机に腰掛けていた。一般の方は他にいないのでわからないが、おそらく受付の職員だと思うので話しかけてみる。




アキラ「すみません…。」




男職員「はい、南区に御用ですか? それとも配達の依頼ですか?」


僕が話しかけると、職員は笑顔で案内をしてくれた。




アキラ「はい、南区に行きたいのですが。」




男職員「かしこまりました、それでは身分証をお願いします。」


そう言われ、僕は身分証を職員に差し出す。




男職員「では、少々お待ち下さい。」


職員は手元の書類と僕の身分証を照らし合わせると笑顔が消えて、みるみる険しい顔になった。




男職員「お前、あの事件の容疑者たな。」


低い声で職員は言った。




男職員「他の区に逃げる気だな!? ふざけるな!」


職員が机の引き出しから小さい鐘を取り出すと、鳴らし始めた。すると鐘の音で呼び出された憲兵達が僕を囲み出した。僕が両手を挙げ、降伏の姿勢をとると、背後から憲兵に蹴飛ばされ倒された。そのまま後ろ手を取られ、肩甲骨まで上げてくる。肩の可動域ギリギリまで上げるので痛い上に身動きがとれない!




憲兵「残念だったな、お前みたいな奴を逃がさないように手配書が出回るんだよ!」




(そうか、手配書が配布する時間稼ぎの意味でも拘留されてたのか。)と、一人で納得していると、乱雑に腕を引っ張る形で起こされた。そして外まで連れられると、また背中から蹴られた。




憲兵「二度と来るな! クズが!」


そう言うと、今度は脇腹を蹴られた。





蹴られた痛みで起き上がる事が出来ない、汗が流れ、息も荒くなってきた。しばらく転がっているとようやく落ち着いてきた。なんとか立ち上がって、もう一度、検問所の方を見ると、櫓にいた憲兵が弓を僕に構えていた。


不審な動きをしたら今にも撃ってきそうだ。




それを見た僕は、足早に脇腹を押さえながら街の方へ戻っていった。

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