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それでも、生きていた  作者: sinnemina
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side ファルザ

初めまして、俺の名はファルザだ。突然だが今回は俺の話を語らせてもらおう。




俺はこの西区で生まれ育ってきた。3才の頃に未来の嫁さんのマーザと出会った。同年代という事もあって、いつも一緒に遊んで、すぐに仲良くなった。5才になると教会に連れてってもらい、教会に引き取られたタシスとも遊ぶようになった。思春期が始まったのは10才ぐらいだな。ある日、転んで足に擦り傷を作ったんだが、それをマーザに手当てしてもらってから女性として意識し始めたんだ。それから何やかんやで結婚したんだ。




結婚当初は両家の親に借金して、郊外だがマイホームを建てたんだ。畑も最初の頃は親父に手伝ってもらったりしたし。そんな脛かじりな息子だったが、ドータが産まれた時から変わったな。(俺が二人を食わしていかないと)って決意してさ。色々な人に頭下げて畑作りのコツを教わったり、畑の収入で生活費が足りない時は日雇いの土方をやったりもした。サイとは土方やってる時に知り合ったな、あいつは計画的に貯金して自分の店をもったからな、大したもんだ。


生活基盤が安定したのは、2年前からだな。ドータがあまり手がかからなくなってきたんでマーザにも手伝ってもらい、畑の収入だけでも食っていけるようになった。




ドータもどんどん大きくなり、日々の生活に充実していた時にアキラは来た。




アキラは中央山脈から遭難して来たと言う。中央山脈を渡るヤツは夜逃げか、お尋ね者ぐらいだが、見たところガタイも小さいし、武器も持って無いな。下手に断ると刺激してしまうかもしれないし。まあ、いざって時は家族を守れるようにしよう。




アキラの身体検査を兼ねて先に風呂に入れた。危険な物は見つから無かったが、何だこの大金は? 遭難した人間が持ち歩く金額じゃないぞ!? とりあえず、そのままにして話を聞いてみるとするか。




話を聞くと、アキラは記憶喪失で今までの記憶が無いとのこと。山に不釣り合いな装備もその為だったのか、それは可哀想だな。事件に巻き込まれでもしたのか? だが、悪人の可能性もあるので念の為、離れの物置小屋に泊めさせよう。就寝していても扉が開く音や物音で気付くだろうし。


夜中、アキラが物置小屋に行ってからマーザに相談してみた。マーザは「我が家には泥棒が来る程のお金は無いんだから考えすぎじゃない? それに、悪い人には見えなかったわよ。」と言われた。それもそうだな、俺が泥棒でも、もっと金持ちの家を狙うな。そう考えたらアキラへの警戒心が一気に薄れてきた。明日は出荷の日だから、疑った詫びに神父様へ顔通しと街の案内をしてあげよう。もしかしたらアキラを知ってる人がいるかもしれないしな。




翌日、タシスと神父様とサイを紹介した後に医者に向かった。アキラの記憶喪失が治るかもな。アキラが診察を終えると、医者のおっちゃんに呼び出された。おっちゃんが言うには「あいつは正常で、記憶喪失が嘘である可能性が高い。何でそんな嘘をついてるかわからんが気を付けろよファルザ。」と忠告された。




嘘をついてたのか、少しショックだったが腑に落ちたな。これからどうしようか考えながら待合室に戻るとドータがアキラの膝に座って楽しそうに話していた。そんな光景を見ると先程言われた言葉が嘘じゃないのか? と逆に疑ってしまう。……とりあえず街の案内だけ終えたら別れることにしよう。




宿屋に着き、最後の挨拶をさせるとドータが泣き出した、滅多に泣かない子だから少し心が痛む。そこまでアキラと離れるのを嫌がるとは思ってなかったので動揺してると今度はアキラまで泣き出した。二人が泣いてるのを見ると、悪い事をしてるのは自分の方じゃないか? といった錯覚まで覚える。あまりにも二人が泣き止まないので、もう一日だけ泊める事にした。




だが、家に行く前に考え事をしたかったので、ルーガのとこでメシを食おう、と思い寄り道する。ルーガと雑談していると彼氏の話は地雷だった様でルーガが怒った。隣のアキラを見ると、アキラまでルーガの迫力にビビってる。この反応や、今までのアキラの行動を見てると悪い奴じゃなさそうだな。嘘をついてたのも訳あってかもしれないと、考える。




そしてアキラが嘘をついてた理由を自分なりに考えてみた。多分アキラは、他の区域で貴族や金持ちの隠し子だったんじゃないか? 他の区で生活してたから顔を知ってる人間がいないのも頷ける。それがある日、お家騒動などで命を狙われる様になり亡命する為、中央山脈を抜けて西区に来たんだ。それなら金を持ってる訳や身元を隠す理由もわかる。それにアキラは、所々で庶民の文化を知らなすぎる、買い物や飲食店のルールを知らなかったりな。かと思いきや、礼儀があったり、聞いた事が無い知識を話してくる場面もあった。まあ、憶測でしかないから実際のとこは本人の口からじゃないとわからんが。そう考えたら途端にアキラに同情してきた。




帰宅した後、マーザに相談してみた。話し合った結果、寝る場所は物置小屋のままで、その条件でも了承してくれたら家で雇ってあげよう。最近、畑を拡充させたい、と思ってたので丁度いい。明日、アキラに聞いてみよう。




アキラが家で働くようになってから、しばらくして、アキラの身分証を作ってあげようと思った。身分証の保証人はハイリスクだが、もうアキラは我が家の一員で、俺の中では実の弟みたいに思ってる。それ程、信頼してるヤツだから、身分証を悪用したりしないだろう。それに、アキラもいつかは、ここを離れる時が来るかもしれないしな、身分証を持ってたら今後の生活に融通が利く。これは俺なりのプレゼントだ! 


まあ、本音を言えば寂しくなっちまうから出て行って欲しくは無いんだけどな。本人に伝えるのは照れ臭くて言えないけどよ。






ある夜、我が家に賊が襲ってきた。


賊は四人組で武装している。ここは一旦、奴等の言う事を大人しく聞き、家族を守ろう。金はまた稼げばいいし、家族の命が一番大事だ! 金目の物を全て奴等に差し出すと、




賊「まだ、何処に隠してるな?」


と疑われた。確かに差し出した金が少ないが、正真正銘これで全てだ! もう出せる物が無いのだが…。




すると、賊の一人が「外の小屋を探してないな。」と言いだした。あそこにはアキラがいる。今になってアキラの存在を、こいつ等が知ったら激昂するだろう。(何で隠していた!?)等と言うに決まってる。なのでアキラが外の状況に気付く様に大声を出し、ゆっくり歩いて時間を稼いだ。物置に着くとアキラは上手く隠れていて見つからずに済んだ。アキラと目が合ったが、今は奴等を刺激しない事とアキラを危険な目に合わせる訳にはいかないので何もせずに、その場を去った。




家に戻るとドータとマーザが人質に取られ、剣を首に当てられてる。




賊「腕をテーブルに置け。」




腕でも縛るつもりか? 指示された様に、テーブルに腕を置くと横から、賊が斧を振り落とした。俺の指が切断されてしまい、痛みで転がると、賊の一人が竈門から持って来た炭で俺の指を焼いて止血する。あまりの苦痛で泡を吹いてしまうと、とうとうドータが泣き出した。賊が、うるさそうに耳を塞いでいる。泣き止ませようとするが面倒になったのか、ドータを押し倒し、床に押さえつけると首を切り落とした。俺とマーザが悲鳴を上げる。




何でなんだ! こんな理不尽があるのか! 俺達の娘が! お前達の言う事だって聞いたじゃないか! 




俺とマーザが泣き崩れていると、賊達が今度はマーザの服を破り出した。俺は指の痛みに耐え、賊を止めようとするが、すぐにやられて椅子に縛り付けられた。


俺とマーザが悲痛な叫びを上げ懇願しても、奴等はニタニタと笑い、その様子を楽しんでいた。賊の一人は面白がって、ドータの首をテーブルに置き、




賊「妻と娘を特等席で眺めさせてやるよ。」


と言ってきた。




あまりにも惨い光景なので目を閉じると、今度は俺の上着を切り裂き、体に絵を書くと、フォークやナイフを投げつけてきた。痛みで目を開けると、また地獄の惨状が目に広がる。




こんな地獄が朝まで続いていると、賊が会話をしだした。。


賊A「そういえば、黒髪の男がいなかったな。」




賊B「ああ、そうだったな。確か、そいつには手を出すなって言われてたよな。」




どういう事だ? 黒髪の男とはアキラの事だろう。だが、手を出すな? まさか、俺達はアキラの事情に巻き込まれたのか? どおりで我が家を襲撃しに来た訳か。あいつを引き取ってしまったせいで、こんな事に…。マーザ、ドータ、すまない。一人後悔してると、意識が遠くなってきた。クソっ! あんな厄病神なんか拾うんじゃなかった。





これで、俺の話は終わりだ。



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