第4−2話
最低だ。
お世話になった人達を見捨てるばかりか、自分の保身の為に嘘までついた。その上、この嘘は犯人達を庇うものになっている。
憲兵「本当に何も気付かなかったのか?」
憲兵が疑いの目を僕に向ける。
マーザ母「犯人の姿とかは?」
マーザさんの面影があるお婆さんが聞いてきた。
アキラ「…すみません、わからなかったです。」
僕は顔を伏せながら、そう答えた。
ファルザ父「そんな訳無いだろ! お前が殺したんじゃないのか!?」
ファルザ母「あなた、落ち着いて。」
そう言ったファルザ母も僕を睨んでいる。内心、僕の事を疑っているのだろう。
ジオディ「みな、落ち着いてくれ。確かにアキラが疑わしいじゃろうが、この青年は誰よりもこの家族を慕っておったぞ。」
ジオディさんが皆を宥めながら、僕を庇ってくれた。庇う価値も無い僕を。
マーザ父「それも演技だったんじゃないのか?」
マーザ父が怒りながら叫ぶ。
ジオディ「演技なら、ここまで消沈せぬよ。」
ジオディさんが僕を指して言った。
その後も皆が話し合っていたが意見がまとまらず、折衷案で事件の概要を聞く為という名目で、僕は憲兵に連れて行かれた。
手を縄で縛られた状態で。
僕は憲兵に連行され、街に戻った。憲兵所に連れられた僕は簡単な身体検査を受けた後、取り調べ室に向かった。そこでは、あらゆる事を聞かれた。
憲兵「何で殺した?」「身分証を手に入れ、間も無いな。用済みになったのか?」「労働環境に耐えられなくなったか?」「どうやって殺した?」「お前とファルザでは体格が違う、正攻法では勝ち目が無いはずだ。」「凶器はどこだ?」「人質でもとったか?」「弱みでも握ったか?」「寝ていた?」「あんな惨状が起きた時に寝ていられたのか?」「なら、何で寝ていたお前は見逃してもらえたんだ?」「離れを調べられなかったから犯人に気付かれなかったというのか?」「あの犯行は複数人じゃないと実行出来ない。だが、お前が内通者となり犯人を手引きしたんじゃないのか?」
最早、僕は犯人扱いだ。いや、結果的に犯人を庇ってる意味では僕も共犯か…。かといって今更、「本当は賊が来たんです、僕はファルザさん達を見殺しにしました。」…なんて、供述を覆しても誰も信じてくれないしな。
もう、どうでもいいや。牢屋にでもブチ込んでくれよ。ファルザさん達は死んだ。異世界に来て、他人の僕を助けてくれた恩人だった。大切な人達、新しく出来た家族なんて言葉を並べたりもした。だけど僕は見捨てた。あれこれ言い訳してたが、我が身可愛さで何も行動しなかった。あんなに優しくしてもらったというのに、一度は捨てた命のくせに惜しんだんだ。自分の行いに自己嫌悪するよ。最初からするなって話だが、もう遅い。取り返しがつかないんだ。ああ、何も考えたく無いな。ファルザ家との思い出や昨夜の事件を思い出してしまう。胸が痛い。
そういえば記憶喪失なんて設定もあったな。今になって本当に記憶喪失にでもならないかな? 異世界に転移した後遺症とかでさ。こんな記憶持ってたって辛いや。もう何も感じたくない。何でこうなったんだろう? 僕はただ、あの家族と一緒に幸せに暮らしたかっただけなのに…。
事件の取り調べは三日続いた。




